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操られるのは苦手




 ここまでグッとこないアドバイスって存在していいんだ。


『め、メイリア……』


『それでは、また会いましょ』


 クルリと去っていくメイリア。


 俺が準備することはもうない。一つだけあった、弁当箱に食べ物を詰めてもらうこと。


 それでも夜まで動かないのは助けを求められるからだ。


『ウィズ様!』


 このように。


『応援してます!』


「そ、そうか」


 本腰を上げたのに座り直す。


 途中で火の手が上がってもそれはすぐに消える。


 不思議に思った俺は歩きながら小風で小話を引き寄せてみた。



『虹が見たいですなあ、ウィズ様を呼んで頂けないだろうか』


『それはだめだよじいさん! 洞窟に居るキングオークをこれから倒すっていうのに武器を取るようなことしないでやって欲しい、魔力は命ですぜ』


『本当か! それはいかん、祈ってみるか』


『……ってじいさん! 空から虹が!』



 夜まで静かに過ごした俺は弁当箱を片手に酒場までやってきた。


 入ろうとして立ち止まる。


 押しが強いニーナにもし引き止められたら怖い。勇者が馬に乗って行くような距離を歩いていくのに弁当も取らないのも怖い。


 どっちも怖いと考えた俺は弁当の確保を優先することにした。


 中に入って近い席に座る。食うつもりがないからどこでもよかった。


「注文はー?」


 ニーナの質問に質問で返す。


「持ち帰りはできるか」


「……」


「持ち帰りはできないのか」


「お弁当、美味しくなかったんだね」


 ニーナが横に置いていた空の弁当箱を持ち上げる。



『……美味しかったんだね!』



 嬉しそうにむふふと笑うニーナ。食べるだけで喜んでくれるなら、これほど幸せなことはないな!


「おひたしが良かった」


「ふむふむ! すぐに準備する!」


「遅れて構わないから、仕事を優先してくれ」


「ダンジョンに行くって聞いてたから用意してたんだよー」


 ニーナは頭に弁当箱を乗せて店の中を駆け足で抜けていった。完全に仕事を忘れている感じだ。


 しばらくすると肩をトントンと叩かれ、ニーナに外まで手を引かれる。


「はいこれ」


 胸元に寄せて持っていた弁当箱をちょこんと前に倒す。


 これでは届かない。取りに来て、ということらしい。


「助かる」



 二歩近づいて弁当箱に手を伸ばすとニーナの姿が下へ暗む。


 視界に入れたくて後ずさると頬の柔らかい熱に気づいた。


『……帰ってきてね』



 起きたことをようやく理解した頃にはもうニーナは酒場に戻っていて。



 頬に触れるとついさっき起きたことがフラッシュバックする。



 モヤモヤする姿を見られたくなくて振り返ると出発式の門が見えた。



 なんとなく、飛び越えてみたい!




 そう思った頃には風を切っていた。




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