仲間は仲間じゃなくなっていた
今日は別行動だと勇者グレイに言われ、踏み荒らされた花壇を相手に魔法の練習していると女戦士のマオに声をかけられた。
『グレイが呼んでる』
『……』
『ウィズってば』
名前を呼ばれて立ち上がる。
急いで来てくれたのか、マオは息を切らしていた。
「なんだ? 練習くらいさせて欲しい」
「魔法使いが水やりの練習?」
そうだぞってしゃがむ。少し遅れて上を何かが過ぎ去り、ガンッと大きな音を立てる。
近くの壁には剣が刺さっていてマオの腰には鞘しかない。
『そんなこと、どうでもいいから』
「……そうか」
俺は早足のマオを追いかけて酒場までやってきた。
貸切の酒場にはテーブルに足を乗せたグレイと治療担当のメサイアが居た。
マオは何も言わずにグレイの隣に座っていく。
『なあウィズ、俺達が世界を救って何年になる?』
「魔王を倒して半年かな」
「ああ、そうだ」
「……ところで、また貸切?」
「当然、勇者が他人の隣で食うわけがない」
「勇者だからって食べてもないチキンを落とすのは」
グレイは骨付きチキンの骨をパキンと踏み込む。
『なにもしてない愚者が俺達に指図するな』
クチクチと油がねちっこく音を立てる。
「してないじゃなくて、できなかった」
「ただただサボってただけじゃないか?」
「何度も言ったように、威力の調整ができなくて、みんなを巻き込みたくないから使えなかった」
例えば。俺は一歩踏み込んで昔の話をする。
『魔王城を消し飛ばしたあの光は俺の魔法だ』
「そんなわけ、仮にそうだとして証拠は? してくれなくても、自力で潰せてる、マジで」
ガツンと踵がテーブルを叩く。
「証拠はもうない」
「ほらな、一歩譲って認めてやったとしても今まで何してたんだとしか」
メサイアがウンウンと。マオがその通りと。グレイはヤレヤレと。
「そ、そう思って範囲を狭める修行をしてきた! そろそろ戦える!」
「じゃあ戦ってきてくれ、一人でな」
「えっ?」
「女だったらせめて隣に置いてやるが、男は要らねえ」
シッシと手を払うグレイ。
『ど、どういうことだよ』
俺だって何もしてこなかったわけじゃない!
アイテムは俺が全部揃えてきた。
雨を降らしたいなら雨を。暑いなら涼しく、寒いなら暖かく。
できることはやってきたのに!
『もう要らんから出ていけってこった』
そう言って俺を居ないように扱う。取り付く島はもうなかった。
「……分かった、抜ける」
「おいマスター、酒持ってこい! 記念日だ!」
俺はその場から逃げるように外へ出た。
仲間だと思っていた仲間は、仲間じゃなくなっていた。
見上げた空が俺のために悲しんでくれるように曇っていく。
手を伸ばすとパラパラ濡れ始め、手を引くと瞬く間に晴れる。
『暑い』
追い風と歩くことで寂しさを誤魔化した。