01 プロローグ
「父上、私、聖魔法師になります」
10歳のサラはきっぱりと言った。
ラークス騎士家では言ってはならない言葉だ。父は聖魔法師を毛嫌いしており、言葉さえ言ってはならない事をサラは言ってのけた。
「ならん」
サラは5歳の頃、剣の指導を父と兄1人、姉3人から学んでいたが、使い物にならないと父からはっきりと言われた。活路を見い出すために、魔法の勉強に力を入れて来たのだ……聖魔法師になる為に。
父がなぜ、聖魔法師が嫌いなのかは教えてくれない。兄が言うには、聖魔法師は適当に戦って、魔力が切れると撤退するからだと言う。
聖騎士は撤退出来ない。撤退は死を意味する、役立たずな聖魔法師を聖騎士はバカにしているのだとか。
そして、聖魔法師の方はと言うと、聖騎士の事を脳筋だと言い、頭が悪い奴らと嫌っていた。お互いが嫌い合っているのだ。
サラは10歳になり、方針を決めかねていた。12歳になれば、聖魔法の学院に行くか、聖騎士の学院に行かなければならない。
サラでも聖騎士になれる事はなれるのだ。ラークス騎士家は3位に該当する名家でありコネで入れるのだが、サラは魔法の方が好きなのだ。
3位とは聖騎士には位があり、10位~5位が歩兵、6位~1位が騎士と言った役割があり、順位により下の者を束ねる指揮権が与えられる。3位は侯爵の爵位にあたる。
サラは銀髪、目は薄緑で天使のような容姿は、ラークス騎士家の中でも1番可愛がられていた。
父はそんなサラを役立たずな群れに、投げ込む事は避けたかった。だが、母に諭される。
「サラは聖魔法師になる方が延命できるわ」
今のサラでは第一線に出ても、死が真っ先に訪れるだろう事は父がよく知っている。父は悩んだ末に聖魔法師になる事をサラに許した。
サラはアストロ帝国にある、アストロ聖魔法学院に入学する事になった。そしてサラには秘密があった、前世が大聖女だったと言う事を……。
サラが前世を思い出したのは、ベビーベッドから床に落ちた時だった。前世の記憶が走馬灯のように頭の中に入り込み……覚醒した。
幼女の頃から、大聖女の時に使った魔法とスキルが、今も使えるのか確認をしていった。サラが使える前世最大級の魔法、『リザレクト』。死者を蘇らせる事が出来る、大聖女だけが使える魔法。虫を蘇らせ、魔物を蘇らせ、人を蘇らせて魔力量を増やしていった。
そして、自分が大聖女だった時代はいつだったのかを調べた。図書館に通いつめ500年前頃だった事が分かった。そして、それ以降、大戦らしい戦がなく魔法は衰退していった事も……。