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ボクだけ"超ハードモード"な世界の終末  作者: めぇりぃう
寝ている間に世界は終末してました
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7.北高

「いやぁ...凄いですね」


 と、フクさんが口を抑えながら木山さんに声を掛けます。確かに気持ち悪いものですよね。ゾンビって、居るだけで臭いし気分を害するというのに、人間の見た目をしていますから、討伐する事への忌避感がある。その役を買って出た木山さんには感謝の言葉しかありません。


「はぁはぁ...余裕ではなかったが...なんとか勝てて良かった...。ふぅ...これでコイツら2体くらいなら、なんとか行けることが分かったな...。よし、今はとにかく進むぞ」


 そう言って木山さんは先へと進みます。かなり疲弊しているように見えますが、やはり殴るという行為は気持ちよくありませんもんね。スカッとする、とか言う人も居ますけど、この状況下で言える人はかなりの上位人、もしくは余程の異常者だけだと思います。


「休みを取らなくて大丈夫ですか?」


「馬鹿言っちゃいけない。ここらで休息何て取れる場所なんてないでしょう?休みは本当に休めるところで取ろう」


 フクさんの心配を断り、我々の先頭を立って進む木山さん。マジでリーダーしています。とても頼りになりますね。


 それに、木山さんが懸念していることは、こんな所で時間を潰して夜になってしまうこと、ではないでしょうか?多少のゲーム、アニメ、マンガ知識があれば、ゾンビを始めとするモンスターの多くは、夜中に活発的になるものが多いです。今はまだお昼ですし、時間は余裕だとは思いますが、なるべく早くに安全圏へと行きたい気持ちは分かります。ボクも先へ進むに一票。


「分かりました...ですが、無理をしてはいけませんよ?」


「あぁ、分かってる」


 ボク達『ボロアパート2F組』一行は、ゾンビの死骸(?)を抜けて北高目指して進みます。その横を通る時、「ドロップアイテム」という単語が浮かんだボクは、かなり気が抜けているハッピーな奴なんだな、と自覚しました。



 その後、北高に辿り着くまでに2回だけモンスターと遭遇しました。


 1度目はまたしてもゾンビ。今回は一体だけでしたが、直ぐにコチラに気づいたらしく、奇襲は出来ませんでした。しかし、何故か目の前の木山さんをスルーして、フクさんをスルーして、ボクをスルー...せずにボクへと向かってくるんです。え、こわ。と後ずさりしてしまいましたが、ボクに集中していたゾンビは隙だらけだったようでして、木山さんがしっかりと成敗してくれました。流石のバールのようなもの捌きです。3体目となれば手馴れたものでしょうか。動きのキレと言いますか、攻撃の鋭さが増しているように見えます。息も落ち着いているようですし、経験値を得たのでしょうか。


 2度目はゴミ捨て場に潜んでいたスライムです。ゴミに夢中でコチラには気付かずスルーしました。見た目は可愛いプルンプルンなスライム──な訳がなく、アメーバみたいなドロッドロのグロテスクなスライムでした。色は...色だけは綺麗なエメラルドでしたね。特性に『人の服だけ溶かす』とかありそうなスライムでしたね。触りたくありません。



 と、そんなこんなで北高に到着しました。愛すべき(笑)我が高校です。今日は休日ですから門は閉まっていますね...いや、違うな。休日でも先生は来ているため、門は空いているはずなんですが。これはモンスター対策に閉めた、ということでしょう。安全圏を作る為には必要ですもんね。


「おーい!誰かいるなら開けてくれー!」


 と、木山さんが声を上げて呼び掛けます。ボク達はその間、周囲の警戒です。戦闘力はクソザコナメクジちゃんなボクですが、警戒するくらいは出来る...筈です。


「開けることは出来ない」


「頼む、開けてくれ!俺らもモンスターから逃げてきたんだ!」


「この学校には既に多くの人が逃げてきていてね。これ以上は無理なんだ。他を当たってくれ」


「そこを頼む!俺たちゃたったの4人なんだ」


 どうやら避難場所、使えなそう...?木山さんが必死に説得していますが、相手は絶対に開ける気は無い、という心意気が見受けられます。...最悪。漸く安全圏だと思ったら門前払いですか。文字通りに。世界の終末迎えそうなんですから、手を取り合いましょって。相手の言い分も分かりますけどさぁ。


「無理なもんは無理だ...だが、アンタらの中に"プレイヤー"は居るか?」


「"プレイヤー"、だと?それがどうした」


「戦闘可能な"プレイヤー"だけなら受け入れてやるよ。俺達も出来るだけモンスターに抵抗する力を集めたいところだからな」


 なるほど、そう来ましたか。場所を守るための力。それはいくらあっても多すぎることはないでしょうから。条件としては納得出来ますが、ボクは対象外ですね。闘えませんもんね...。


 と、そう言えば、やはりと言いますか。"プレイヤー"の数はそこまで多くなさそうですね。どう言った条件で"プレイヤー"になれるのやら。2人に1人、とかではなさそうですよね。10人に1人とか?ま、ボクは『超ハード』な"プレイヤー"なんで、数に入れなくていいですよ。


「木山くん、"プレイヤー"とは一体...?」


 フクさんは"プレイヤー"という単語の意味が分からず、木山さんに訊ねます。演技でもなさそうですし、フクさんは"プレイヤー"ではない、と。


「...知らないね。ふぅ、まぁ仕方ねぇ。他の場所を探すしかなさそうだ」


 木山さんは説得を、我が愛しの母校たる北高に避難する事を諦めたようです。まぁ、門番っぽい人の対応からして、この中で生活したいとは思いませんでしたし、ボクもそれでいいと思います。...人の多い所が嫌なわけじゃないんだからねっ。(ツンデレテイスト)


「ですがこの辺には...」


「相手が折れるのを待つか?日が沈むのといい勝負になると思うぞ?それに、こんな所で待つのは、稲井ちゃんや松田さんの精神的に辛いだろ」


「...分かりました。他の場所を探しましょう」


 フクさんも渋々同意しました。恐らく、何時かは入れてもらえるのでは、という望みを捨てた訳では無いでしょうが、唯一戦闘出来る木山さんが行くと言うのです。相手側の要件である、"プレイヤー"の意味を理解出来ずとも、モンスターとの戦闘を出来る、という実績を持っている木山さんが、です、このことをを売りにして、木山さんだけなら北高へと入れてもらえる筈です。にも関わらず、ボク達を見捨てずに他を当たる、という木山さんの態度を理解して、フクさんも項垂れるしかありませんでした。


「待ってください!たったここまで来るのに、既に化物たちと3回も遭遇しているんですよ!?次は避難場所を探しながら歩くですって?無謀だ!化物に襲われて食われるに決まってる!」


 と、反論するのは、無口な方だった松田さん。フクさんも諦めたというのに、この人は直ぐにでも安全圏へと逃げたいようです。因みに稲井ちゃんはずっと警戒中なんで、口論には混ざりませんよー。


「松田さん、すまねぇが納得してくれ。大丈夫、戦闘なら俺が1人で受け持とう。俺がヤバイとなった時は、俺を見捨てて逃げてくれても構わない。...それとも、入れてもらえるか分からない門前で、松田さん、1人で待っているか?」


「それは...しかし...!」


「ここが1番安全だと言う保証もない。彼も言っていたが、ここには既に多くの人が居る。彼らも彼らで必死なんだ。俺らが無理言っちゃいけねぇ。それに、彼らは恐らく学生だ。子供たちが頑張っているってのに、俺達大人が頑張らないでどうするよ」


「うぅむ...」


 木山さん、説得上手ですね。流石リーダー。戦闘だけでなく人の扱いも上手いとは。選ばれしリーダー格ですね。尊敬します。


 木山さんの説得により松田さんも陥落。これで異論を唱える人はいなくなりました。


「稲井ちゃんも、それでいいかい?」


「はい。ボクも大丈夫です」


 最後にボクの確認が終わり、『ボロアパート2F組』は新たなる避難場所を求めて動くことが決まりました。

「皆さん避難速すぎませんかねぇ...。えっ、あの時間まで寝ている奴は居ない...?そんな馬鹿な...」

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