23. 〈剣術:起〉はあくまで...
国立入試お疲れ様でしたぁーっ!
私も一応受けたんですよ?入学する大学は決めてるんですけどね!
いやぁ、これでようやく何の柵も無く遊べますわ。...いや、遊んでましたけど。
「〈剣術〉を取得」
《〈剣術:起〉を獲得しました》
ふぅー、取ってしまいました...。まぁ、〈身体能力上昇〉にはかなり驚かされましたし、〈剣術〉も中々の効果を齎してくれると信じていますよ。
ゾンビの処理は木山さんがやってくれますので、ボクは〈剣術:起〉の動作チェックでもしてましょう。
もしもの事があったら困るため、空いたスペースへと移動します。木山さんの頭をガツンとか殴っても、びくともしないかも知れませんが、殴られて良い気にはならないでしょう。
では、手始めに木刀を構えてみましょう。
おや、おやおや?なんと言いましょうか、しっくりくる構え方握り方ですね。長年使ってきたかのような、とても手に馴染む感覚なんですよ。ここをこう握り、こう構え、こう足の位置やら腰の落とし具合まで、全てが噛み合わさるポジションが分かります。
傍から見たらどう映っているのでしょうか?木山さんに聞きましょう。
「木山さーん!ボクの構え方、どうですかー!」
「んー?...へぇ、なかなか様になる構え方じゃねーか。今までの構え方はなんと言おうか、子供感満載だったが、今の構え方は剣道やってた人みてーだ」
との感想が。ふむ、ふむ。つまる話...
「...さらっと馬鹿にしませんでした?」
「してないしてない。本当に良い構え方してると思うよ。なんつーか、隙が無くなった感じかな」
「なるほど。それは嬉しいコメントです」
まぁ、本当はボクも自分の構え方がお子ちゃまなモノだとは理解してたんですよ。だってズブの素人なわけですから。その構え方に隙がありまくるのも無理ない話。〈剣術〉スキルのおかげで大分改善されたということですね。
構え方は良し、ということで、次は素振りです。〈身体能力上昇〉は元々の10%にしてますので、今のボクの通常モードということです。これなら無駄に疲労せずに済みます。素振りくらないなら屁の河童です。
「えいやっ!...あれ?」
なんでしょうか。凄く納得のいかない振りなんですよね。振った瞬間噛み合わなくなるんです。不思議な事もありますね。
「ぷっ」
と、考えていたら、前方から吹き出す音が。あの素振りを見られたんです。
「あーっ!木山さん笑いましたね!?」
「くくっ。いや、だって、構えはプロのそれなのに、くくっ。振りは素人丸出しじゃん。ギャップがなぁ、くくっ」
「わ、笑い過ぎです!」
ボクの抗議なんて何のその。堪えながらも笑いを漏れ出し続ける木山さん。ボクは睨みながら訴えることしかできません。
だって、自分でも不格好なものだと理解してますから!
何故でしょう!?構えまでは自然に行えるんですよねぇ。あと、その次の振りかぶりまで。その先なんですよ、問題は。今までは構えから何まで素人のそれでしたから、あまり気にしなかったのですが、どうも構えがしっかりしますと、全体の甘さがハッキリと理解できちゃうんですよね。こう、気に食わない、と思うようになっちゃったんです。贅沢なんですかねー?
試しにもっかいやりましょうか。
さっきは縦に振ったので、次は横に振り抜いてみましょう。
体の横に置いて構えてみても、しっくりくるんですよね。その位置やら角度やら、握る強さやらが完璧に体に染み込んでいるようです。
これは期待できますよ...!
「せいっ!......うーん?」
「ぶふっ!」
これも違いますねぇ。なーんか、気持ち悪いですねぇ。〈剣術:起〉が中途半端に発動しているのでしようか?いっちょ奥底を見てみますか。
奥底ってのはあれです。〈身体能力上昇〉の時にやってたやつです。更に起動して、出力を変えるんですよ。無理やりね!
感覚は既に知っています。やり方も同じなら直ぐにでもできるはず...。
まず、己の中にある異能、つまりは〈剣術:起〉について深く考えるんです。そうすると、そのスキルが自分にどんな影響を及ぼしているか、把握できるようになるんです。そのまま追求。更なる要求をするために...ん!よし、いけました。メーターみたいなものを感知しましたよ。
ふむ、現在90%ですね......えっ、嘘でしょ?
殆ど発動してるじゃないですか。どういうことでしょう?それなのに上手く素振りすらできないのですが?もしかして、それほどボクに才能が無いとか...!?有り得るので嫌ですね。
とりあえず100%を出してみますか。
ふーむ、あまり疲れませんねぇ。これならあと3分はもちそうです。構えが変わった感じはありませんね。つまりは振りの方に影響があるのでしょう!ふふふ、これはこれは...。行っきますよーっ!
「ふぅ......せいっ!」
「ぶふっ、ふっ!」
ぐっ、駄目ですか...!と言うか、さっきより酷くなってますね、落差が!本気に天と地の差があるんですよ!辛い、我が身の事ですから、非常に嘆かわしい!
「りゃぁっ!せいっ!」
ボクは諦めずに振ります。まだ体に慣れていないだけなのかも?という淡い期待を胸に抱いて。
「やぁっ!たぁっ!」
「ぶふっ!はーはっはっは!!」
「...あの...木山さん?どっか行ってくれます?」
さっきから煩いんですよ。別に素人目ではそこまでわからないと思うんですけど?凄く失礼に笑ってますよ。むかつきます。人が苦労しているというのに...。
「いや、俺のことは気にするな」
ジト目で睨むのですが、その視線を浴びる彼は何処吹く風。
「気にしますって...」
ボクの懇願が叶うことはありませんでした。
結局ボクの華麗なる素振りが披露されることは無く。昼ご飯休憩のためにボクはデイヤマへと逃げ込むのでした。
「ネタをバラすと、〈剣術:起〉はあくまで武器の持ち方構え方のみを熟練のものにするスキルです。相手から見て隙が無くなり、こちらの攻撃防御に繋げ易くする、という訳ですね。稲井ちゃんは次の〈剣術:承〉を早く取りましょう!」
「ぶふっ!」
「なぜここで笑うのですかーっ!?」




