18.ソロ戦闘デビュー
カクンッ...カクンッ...ハッ!寝ていませんよ。寝てなんか、いません。見張り中に寝る愚か者、居るわけないじゃないですか。辞めてくださいよ、そういう疑いの目を向けるのは。
ボクは誰かに対しての言い訳をしながら、椅子から立ち上がり体を解します。そして、パンッ、と両頬を叩き、無理矢理眠気を吹き飛ばします。
ボクだけ、何もなしえてないですから、サボるなんて御法度です。
木山さんは言うまでもなく、戦闘面において多大な貢献を。
フクさんと松田さんは、現在デイヤマの電気や水道周りについていじっているようです。上手く行けば、電気が使えるようになるやも知れません。
お荷物は嫌だ、そう言ったのは自分です。有言実行しなくてどうするんですか。
と、少し反省していたボクへ、挽回のチャンスかのやうに、ゾンビがふらふらと近づいてきました。
「ふぅ、よし...集中...」
数は一体。何時も木山さんが余裕を持って相手しているゾンビですが、ボクにとっては危険も危険。初戦闘時は木山さんが殆どやってくれたようなものですから、これが本当の意味での初戦闘。緊張してきました。
ゾンビはこちらに気付いている訳ではなさそうです。単純に、ふらふらとぶらついて来ただけなのでしょう。
「〈身体能力上昇〉を起動」
ボクは小声で呟きます。
元々、〈身体能力上昇〉は受動スキルなのですが、どうにも奥があるようで。更に意識を〈身体能力上昇〉に向け、起動させるとあら不思議。出力の調整が出来るのです。
最大出力で発動させると、数回の呼吸で力尽きます。ボクが。これは、何かSPやMPみたいなものを消費しているみたいなのです。ボクにはそれらが多くないので、直ぐにバテてしまう、と。
ですから今の出力は20%ほど。何も意識しないと10%程ですから、単純に2倍の効果で発動させています。
木刀を構えていざ、参る。
「やっ!」
横、ゾンビの死界から木刀を叩き込んでやりました。手応えは鉄を殴ったみたいな感じです。凄く、硬い。弾かれはしたものの、ゾンビもよろけていますから、まぁ上場といったところですね。
「ハァッ!」
足をしっかりと固定して、腰から捻るようにフルスイングしてやります。ボクの武器である木刀は打撃系の武器ですから、これが一番効果的、だと思います。
よろけていたゾンビの顔面に追撃を加え、ゾンビを後ろへと下げさせます。痛みは感じていないようですが、衝撃は伝わっていますよね。ダメージも、それなりに入ったと思いますよ。
「りゃっ!」
隙を見逃す程、ボクも甘くはありません。そも、反撃されたらお終いですから、その間を与えない、というだけですけどね。
腹と顔に一撃ずつ突きを入れ、まだ倒れないことに内心で舌打ちをします。木山さんなら、多くて2 回で殴り倒していたというのに。
「ふーっ、出力30%」
出し惜しみをしているつもりはありませんでした。この〈身体能力上昇〉の出力増加は、中々燃費がよくありませんから、長期戦闘に向かないのです。ですから、様子見は20%が妥当なのです。
燃費が悪い、ということについて、まだ慣れていないことも要因の一つですが、何よりボクの素の身体能力が雑魚ですから。それを底上げするために必要な対価は、多大な疲労。
20%でも、10分そこらが活動限界です。30%の場合、5分と言ったところでしょうか。それ以上にすると、1分、10秒と減っていきます。100%はまだほんの数瞬。ここから10秒、1分、ゆくゆくは1時間と時を止め...ではなく、身体強化していきたいですね。
さて、冗談はそこらで早く決着を付けなければ。
「うりゃぁっ!」
体勢を立て直し、こちらに近づいてきたゾンビの頭に、会心の一撃を打ち込みます。先の攻撃よりも力強い一撃をくれてやりました。手がすごく痺れます。痛い、痛いです。ボクの木刀は特別製なんかじゃ、ありませんからね。衝撃吸収とか、してくれたら有難いのですが。
と、打ち付けたゾンビを見ますが──まだ駄目ですか。仕方ない。ボクは2、3歩ゾンビから離れ、息を整えて木刀を構えます。
「くらいなさい...50%!!」
一瞬だけ50%まで解放して、ゾンビの顔面目掛けて突きを放ちます。今までとは比べ物にならないくらいに、速く、鋭く、力強い一撃。ゾンビは反応することすら出来ず、吸い込まれるように顔面へと木刀を突き立てます。今度は、あの鉄のような硬度を貫き、脳漿を炸裂させることに成功──
「うぉぇぇぇ」
──させてしまい、間近で気持ち悪いものを見てしまいました。うげぇ。
「けっほけっほ......ふぅっ、勝ちました」
誰に、ということではありませんが、とにかく勝利宣言をします。残念ながらレベルは上がりませんでしたが、これは予想の内です。『超ハードモード』ですから、必要経験値は多いに決まってます。5倍と明記されてましたからね。あと2、3体は必要になってくるでしょう。あぁ、早くレベル上げたいですねぇ。
ゾンビの死骸をどうするか迷い、結局放置することに決めました。あとで木山さんに燃やしてもらいましょう。
最後の50%が効いたのか、結構疲れが出ています。たかがゾンビ一体にここまで疲弊するのですから、頼りないと判断されることに反論出来ませんね。これは、鍛錬が必要そうです。
「さて、暫く休憩...ですかね」
今はとにかく休息、と定位置へとふらふら歩いて行きました。
監視席となっている椅子に座り、カロリーメイクをもぐもぐしながら、お茶で喉を潤します。食事を摂る事でこの疲労感は回復するんですよね。不思議なものです。と言っても、このカロリーメイク一本くらいでは、体力全体の10%くらいしか回復出来ません。お茶は精神的な回復のみですね。
まぁ、休めば治るので、このまま警戒を続けておきましょう。
「閉じろ10%!」




