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ボクだけ"超ハードモード"な世界の終末  作者: めぇりぃう
寝ている間に世界は終末してました
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15.決意

 木山さんのヨーグルトが、ボクのプリンと同じ量になった頃合で、ボクはそのヨーグルトが気になりました。


「...1口、くれませんか?」


「ん?...別にいいが...」


「折角の、最後のヨーグルトです。ボクも食べたいじゃないですか」


 同じプリンも、同じヨーグルトも、まだまだ沢山存在しているでしょう。しかし、山内さんがボクのために用意してくれたプリンも、木山さんのために用意してくれたヨーグルトも、この世界にはもう存在し得ないんです。


「そうか。なら...ほれ」


 木山さんが差し出してくれたスプーンに、ボクは口を開けて咥え込みます。今まで甘かった口に広がる、ヨーグルト独自の酸味。これがまた甘味と調和してとても美味しいヨーグルトです。


「んむ......美味しいです」


「だろ?俺はこの程よい酸味に気に入っていてね」


 自慢のヨーグルトが褒められて、木山さんも嬉しそうです。


「お返しに、です。どうぞ」


「おう、ありがとな」


 ボクがプリンを掬い、木山さんに差し出します。それを木山さんがゆっくりと咀嚼しました。 


「ほう、これも中々美味いな。確かに、温くても美味い」


「でしょう?でしょう?やはり最高はこのプリンです」


 木山さんからの賛成を受け取り、ボクは自信を持ってこのプリンを推します。


「いいや、こっちのヨーグルトも負けちゃいないね」


「いいえ、このプリンが持つ甘さとか、まさに最強じゃないですか」


 すると、張り合うように木山さんがヨーグルトを推すではないですか。これに負けじとボクも反論します。プリンとヨーグルト。どちらが上かの全面戦争ですっ。


「確かに一理あるが...少ししょっぱかったぞ」


「それは...今日はそういうテイストなんです」


「何じゃそりゃ。それなら常に変わらない美味しさ、ヨーグルトこそが一番だね」


「むむぅ」


「ははは、睨んできても怖くないぞ〜」


 最大限の力を込めて睨んだというのに、軽く流され笑われてしまいました。くそぅ、恥ずかしい。


「...どちらも最高。それで決まりですね」


「まぁ、そうだな」


 和平交渉は成立しました。プリン派とヨーグルト派。これからは手を取り合って歩みましょう。平和が一番。争いは何も生みませんから。何時かプリンヨーグルト的な、共存できる食べ物が出来てくれたら良いのですが。


 それからボク達はそれぞれの思いを胸に、山内さんからの最後の贈り物を戴きました。このプリンのお陰で、ボクに活力が湧いてきました。流石はデイヤマのカスタードプリンです。どこぞの回復薬より効果は見込めます。


 少しの躊躇いの後、ボクはプリンの空き容器をゴミ箱の中に落としました。


「木山さん。ボク、闘いますから」


「......」


「もう、失いたくありませんし、後悔したくないですから。ボクは、大切なもののために闘います」


「...そうか」


 ボクの決意を、木山さんは黙って聞いてくれました。その表情は、不安と苦悩が入り交じり、どこか諦めたかのようなものがあります。


 そして一言呟いて、大きな手でボクの頭をわしゃわしゃと撫で回してきました。


「わうっ」


「なら、俺も精一杯闘うとしよう。俺も、失いたくないからな」


 誰かに頭を撫でてもらうなんて、凡そ何年ぶりでしょうか。とても気恥ずかしながら、それでいて心地よく、とても安心します。


 木山さんがボクの方を見て、木山さんの決意を語ります。木山さんなら、きっとフクさんや松田さん、そしてボクが危機に陥った時、どんな状況でも助けに来そうです。


「あっ...ふふっ、木山さん、口元にヨーグルトが付いていますよ。しっかりしていると思っていたのですが、こういうところもあるんですね」


 木山さんの口元には、先程食べていたヨーグルトが。気づいていなかったようなので、それを指で取ってあげます。


 それを付けたまま話していたのか、と思うとボクはくすくすと笑ってしまいました。


 案外、お茶目なところがあるものですねぇ。あ、それはゴブリン戦の時にも思いましたね。いやはや、少し子供っぽいところ、と言うのでしょうか。木山さんにもあって、可愛いと思ってしまいます。


「うっ、おう...ありがとう」


「えへへ、どういたしましてです」


 少し慌てたような木山さんを見て、ボクはまたけらけらと笑うのでした。




 このデイヤマは、未だ安全圏と呼ぶには危険と隣り合わせ過ぎます。近くに山がありますし、何よりどこもかしこもゾンビが溢れている訳ですから。本当に安全圏と呼ぶなら、バリケードや柵を作って、モンスター対策をする必要があります。


 何時、ゾンビやゴブリン、その他のモンスターが襲ってくるか。ボク達には予想も付きません。


 食糧も、デイヤマにある少しの分のみ。これでいつまで持つか、両手で数えられるくらいでしょう。



 そんな、決して落ち着ける場所ではないと言うのに、警戒し続けなければいけないというのに。



 どうしてこんなにも温かく、安心して居られるのでしょうか。



 まったく、ボクにはさっぱり分かりませんね。


これにて1章終わりです。ここまで読んでいただきまして誠にありがとうございます。

短かくてすみませんでした。

次章「デイヤマ戦線」でお会いしましょう

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