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ボクだけ"超ハードモード"な世界の終末  作者: めぇりぃう
寝ている間に世界は終末してました
14/47

14.プリンとヨーグルト

次で1章ラストです

 山内さんの火葬が終わり、そっと静かに埋葬しました。


 その後デイヤマの店内に入ったボクは、何時もの冷蔵スペースに向かいます。


 そこにはボクが何時も食べている、お気に入りの「カスタードプリン」が一つ。ボクのために置いてありました。たまに置き忘れている事があって、ボクが言うと冷蔵庫から取ってきてくれて、申し訳なかったとタダにしてくれるんです。


 とても高いものではありません。けれども、ボクにとっては何より価値のあるプリン。このデイヤマで、山内さんから買うプリンが、ボクにとっての至高のプリンでした。



 これが、最後の1個となるのですね。



 意を決してプリンを手に取ります。電気は通っていませんからね。やはり温くなっていました。


 そのままレジに持っていき、設置してある椅子にどっかりと座ります。ボクが、山内さんと話す定位置です。


 財布から100玉を取り出し、パチンと置きます。


 その後、勝手にプラスチックのスプーンを取り、買いたてのプリンのテープをビリビリと破り剥がします。


 側にはゴミ箱が置いてあり、中を見ると同じプリンのゴミが2個入っていました。そこに蓋部分を放り込み、プラスチックスプーンの袋も入れます。


「いただきます」


 あー、そう言えば。今日起きてから何も口してませんでしたね。世界終末の日の、最初のご飯ですよ。


 スプーンをプリンに突き立てると、簡単に掬い取れます。トロトロ過ぎない、しっかりとプルンプルンがあるプリンなのです。


 口に運び、咀嚼。慣れ親しんだ、甘く優しいカスタードの風味が、口の中に広がります。



 ──あぁ、美味しい。温くなっても、これは最高だよね。



 1度だけ、売り場のスペースにも、保存しておく冷蔵庫にもプリンが無かった時がありました。単純にラス1だったプリンを、山内さんがレジの所に置き忘れてしまっていたのです。その時に、翌日のプリン無償を約束してもらったのですが、温いプリンも美味しかったです。山内さんに他愛ない話をうだうだしながら食べるプリンは。格別なんです。



 ポロポロと涙が零れ落ちます。抑えようと思っても、これが中々、止まりそうにありません。



 もう、あの時のように、学校であった愚痴を受け止めてくれる人も。交友関係に難を持った時に相談に乗ってくれる人も。将来について悩みに悩んでいるボクを、励ましてくれる人も。もう、居ないんです。



 優しく甘く温まった。仄かにしょっぱいプリンをボクは、また一口飲み込みました。




「隣、いいか」


 木山さんが、椅子を持ってやって来ました。フクさんと松田さんは既に夕食を摂り終え、眠ってしまったようです。気づけば、外は夕暮れから暗闇に変わっていまして。ボクは何時間、プリン1個を食べていたのでしょうか。


 木山さんに泣き顔を晒している手前、今更遅いとは思いますが、目元を擦って涙を拭き取りました。


「えぇ、良いですよ」


「それじゃ失礼」


 木山さんはボクの隣に椅子を置き、その上にどっかりと座り込みました。手には何かのヨーグルトと、お茶のペットボトルが2本がありました。ペットボトルを1本、ボクの前に置き、残りの2品は木山さんの前に置きます。


 それから財布を取り出し、千円札をボクが置いた100円玉の横に置きます。もう既に、これらお金の価値なんて無いに等しいものとなっているかもしれません。しかし、ボク達は山内さんへ、今は最低限の敬意を払いたいのです。


「それは?」


「ん、これは俺の好物だな...あの人が毎日用意していてくれてな。今日も、置いてあったよ」


 そう言いながら、木山さんはヨーグルトを開封しました。ボクと同じように、据え置きのプラスチックスプーンを一つ取っていきます。


「...ボクと、一緒ですね」


 そう言えば、木山さんが持ってきたヨーグルトは、ボクも何度か見た事ありますね。無かったり、1個だけあったりしたもので、ボクは手に取る勇気はありませんでした。


「そうか。確かにそのプリン、何度か見かけた事あったな。稲井ちゃんのお気に入りだったか」


「えぇ、そうです。温くても美味しい、最高のプリンです」


 ボクは残り半分となったプリンを、もう一口分掬うと、口へと運びます。


 それに倣うように、木山さんもヨーグルトを一口口へと運びました。同じスプーンだというのに、ボクより大きく取れているのは何故でしょう。あれか、レベルの差か。なわけないですよね。


「あー、うめぇなぁ」


 木山さんはヨーグルトを味わうように、ゆっくりゆっくりと食べていきます。


 

ある日の出来事


「や〜まう〜ちさ〜ん!プリ〜ンないよ〜!」


「あぁ、ごめんよごめん」


「あはは、3ヶ月ぶりの忘れだね」


「...あっれ。冷蔵庫にも無いな...」


「えー!うっそぉ!?」


「補充は明日だったから、今日の分は出したような......あ、こんな所に」


「レジ横に置きっぱ!温くなってるよー」


「いやぁ、ごめんよ。明日2個食べるかい?」


「んーん。ボク、今日はこれでいいよ。でさでさ、聞いてよ山内さん。今日ね、学校でねー───」

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