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ボクだけ"超ハードモード"な世界の終末  作者: めぇりぃう
寝ている間に世界は終末してました
13/47

13.後悔

ちょいシリアスです。

 ボクが感動したまま木山さんの炎を見ていると、デイヤマから誰かが出てきました。口元を抑え、慌てている彼は──松田さんですね。松田さんは生い茂る植木に近づくと、そこに顔を突っ込みます。


「うおぉぉえぇぇぇっ!!」


 吐きました。


 その瞬間に木山さんがボクの目を覆ったので、光景は見ていません。が、音は丸聞こえ。吐いていますね。吐いてます。今日2度目の嘔吐。お腹には何も無いとは思うのですが、胃液が逆流してくる感じですかね。あれ、とても辛いですよね。ほんと、大丈夫ですかね...。


 どうやら松田さん、ゴブリンの死体にやられたみたいです。もしくは臭いですかね?まぁ、確かにあの臭いはお腹にくるものを感じますもん。ゾンビと同じくらいのインパクトがあります。それは全て木山さんのせいですね。怒るなら、木山さんにどうぞ。


 ボクが松田さんの心配をしていると、フクさんも出てきたようです。ボクは見えませんが、足音は聞こえました。


「...木山さん...宜しいですか。稲井ちゃんは、来ないでください」


「ん?分かった」


 と、ようやく視界を解放されたかと思ったら、今度は置き去りですよ。


 木山さんはフクさんの後についてデイヤマに入っていきます。ボクは外で待機。松田さんの看病をしていましょう。


 誰かからの荷物からタオルとお水の入ったペットボトルを持って来て、松田さんの傍に座りました。あ、吐瀉物が付いた所は避けてますよ。


「...すまない」


「いえいえ」


 松田さんにタオルを手渡し、キャップを開けたペットボトルを渡します。松田さんは口元を拭い、水で口内をゆすいで吐き出しました。少しは楽になってくれると良いのですが。


「...キミは、見ていなかったみたいだな」


「え?ゴブリン──あの緑色の化物の死体ですか?」


 それなら、松田さんもボクが外に運んでいるのを見ていたはずですが。


 ボクが疑問符を浮かべていると、松田さんは少しだけ安心した表情になりました。


「...いや、いいんだ」


 それ以上、なにも喋ってはくれませんでした。ボクは木山さんとフクさんが戻ってくるのを待つばかりです。



 待つこと数分。苦悶の表情を浮かべた2人が外に出てきました。木山さんは軍手を再着装している事が伺えます。どうしたのでしょうか。


「稲井ちゃん。少し、覚悟してくれ」


「え、何がですか?」


 覚悟って、それほど重大な何かがあったということ、でしょうか。


「大丈夫です。お願いします」


「......山内さんが、亡くなっていた」


 と、木山さんがボクに告げます。



 山内さんが──



 山内さんは、このデイヤマを経営している、70代のおじいちゃんです。身寄りのないボクにとって、本物のおじいちゃんのように感じていました。何時も、ボクの大好物である「カスタードプリン」を取っておいてくれて。デイヤマの中でその日にあった出来事を、愚痴のように話しながら食べる事が、ボクにとって数少ない人と接する時間でした。誰に対しても優しく、常に朗らかな山内さん。最近腰が痛くなって、デイヤマの側にある家からデイヤマまでの距離でも大変だ、とボヤいていた山内さん。つい一週間前にも、そろそろ年かな、という呟きに、ボクは笑って元気にやってよ、と返しました。その時ボクは、まだあと何年も続けられる会話だと思っていた...のに。



 ──亡くなった?



 この世界に、化物共が出現した時、デイヤマ内に山内さんは居たのだろうか。それならば、あのゴブリン共がデイヤマに押し入って来て、山内さんを...山内さんを...。


 ボクはその時何をしていた?呑気に寝ていたんじゃないか?そして世界が終末をという状況の中、どこか楽観視していたんじゃないか?


 モードだ。ステータスだ。レベルだ。そして魔法だ、と。浮かれに浮かれてたではないか。


 どうして、大切な人だと言うのに、頭を過ぎらなかった?彼の安否を確認するべきだったろう。


 ボクは浮かれていたのだ。この世界が変わったことに。


 人が。ボクの大切な人が、モンスターに殺されたというのに。



 頭が、真っ白になる。


 目の前が、ぼやけて見える。


 足元が、不安定になる。


「うっううっ...!」


「稲井ちゃん!」


「ううぅぅぅぅっっ......!!」


 ボクはその場に崩れ落ち、暫く感情のまま泣き続けた。





 ボクが泣き止み、落ち着いた頃には、ゴブリンの片付けは完了していました。そして、山内さんの遺体も外へと運び出されていました。


「稲井ちゃん。無理して見ない方が...」


「いいえ。ボクにとって、祖父のような方でしたから。ちゃんと、見ていてあげたいです」


 山内さんの遺体は酷く傷つけられていました。数十箇所に及ぶ打撲痕は痛々しく、山内さんの顔にまでありました。闘うことも、逃げることも出来ない人を、平気でいたぶり殺す。残虐で、無慈悲。モンスターとはそういうものなのだと改めて認識しました。


「じゃあ、火葬するぞ」


「お願いします」


 デイヤマの裏手にある、庭のような空き地に穴を掘り、そこに山内さんを安置しました。彼の好物であったみたらし団子とお茶を側に置きます。


 人の遺体を放置しておけば、ゾンビと化す可能性があります。ボク達が彼に出来ることは、火葬して冥福を祈ることだけです。


 木山さんが力を込めて魔法を発動させると、山内さんを包み込むようにゆっくりとゆっくりと炎が広がっていきます。


 暫くして、遂に山内さんを炎は完全に覆いこみました。夕暮れとなり、暗くなり始めていた辺りを明るく照らします。


 ボクはその光景を目に焼き付けて、そっと両手を合わせます。



 どうか、彼の来世に幸多からんことを。

「貴方のデイヤマは、ボク達が護りますから...どうか安らかにお眠りください」

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