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ボクだけ"超ハードモード"な世界の終末  作者: めぇりぃう
寝ている間に世界は終末してました
11/47

11.対ゴブリン

「待て...デイヤマの中に、何か居る」


 まだ中を覗いてすらいないといのに、木山さんはそう言い切ります。ボクには分かりますよ。"探知系"のスキルを獲得しているのですよね。今この世界で生き残るためには、かなり必須なスキルだと思います。ナイスセレクション。


「数は?」


「...恐らく5。ただ、ゾンビとは違う、もう少し小さい気配だ」


 なるほど...考えられるモンスターは、ゴブリンでしょうか。ボロアパートの2階から目撃していましたから、ゴブリンが存在していることは確認済みです。ゲームの中でもゴブリンは群れで行動しますからね。そして、体躯は人より小さい。情報にビンゴしてます。


「俺が少し覗く。俺が合図するまで動かないでくれ。...特に稲井ちゃん」


 何故か、ボクが戦闘大好きみたいな感じに思われ始めたようです。木山さんから釘を刺されました。


「...了解したつもりです...が、デイヤマの外に誘き出すならボクが出た方が...」


「稲井ちゃん」


「...分かっています」


 ちょっと提案してみただけじゃないですか。皆の避難所、デイヤマを救うためなら、ボクはこの身をかけるつもりなんです。ですから、そんな、語気を強めて言わないでくださいよ。ぐすん。


「...っ!これはゴブリンか?」


 デイヤマを覗いた木山さんが呟きます。どうやら木山さんはゴブリンを知っていたらしいです。そしてむふん。どうです。ボクの予想通りでしょう。ほんの少しの情報から敵を暴く。我ながら天晴れとしか言えませんねぇ。さすぼく。


「どうするか...武器は棍棒みたいなもんを持ってるな。流石に一人じゃ厳しい...か」


 おぉ!ならなら、ほらほら。ボクを見てください。ボクを指名しましょう?ボクに頼ってください!


 と、木山さんに期待の眼差しを向けるのですが、どうもコチラを見てくれません。


「...木山さん、何故ボクから目線を外すのですか。やりましょう。やりましょうよ。ここまで来たんです。やらないでどうするんですか」


 久しぶりに長文喋りました。ボクの人生でそう無い長文ですよ?このレア度に応えて、ボクを使ってくださいって。1体でいいんです。とにかく、〈身体能力上昇〉の程を知りたいんです。


「...はぁ、分かった。だが、危険な真似はしないでくれよ」


「了解しましたっ」


 やったね。木山さんが折れました〜。



「んじゃ、俺が先に入って1体殴ってくる。その後俺が外に出て、追いかけてきたゴブリンを2人で相手しよう」


「分かりました」


 作戦は至ってシンプル。ほぼ真正面からぶっ倒す、ということです。


 因みに、フクさんと松田さんに荷物を預けて、ボクらは身軽です。2人には、戦闘が終わるまで隠れてもらっています。


「無理しないようにな」


「善処します」


 口には出しませんが、ボクより危険な役回りは木山さんです。まぁ、木山さんの方がレベルは高いですし、大人の男性ですから性能は段違いではあるのですけど。それでも、ボクより木山さん自身の心配をもっとしてほしいですね。


「ふぅ...行ってくる」


「直ぐ、帰ってきてくださいよ」


 木山さんが自動ドアを開けます。電気は通っていないので、手動です。少し違和感がありますね。


 ゆっくりと押し開け、静かに入店していきました。


 ボクは店内からは見えない位置でスタンバっています。


 恐らく、いえ確実に、外に出たあとターゲットは全てボクに集中します。ですから、木山さんを追いかけて着たゴブリンを、木山さんが攻撃して、木山さんに集りかけた直後にボクも攻撃を開始します。そうすることで、狙いをボクへと変える間が出来るはず。その隙に木山さんが仕留めれば、数の利を瞬く間に消せると思います。まぁ、万事上手く行けば、ですけどね。


 ガンッ


 という鈍い音がデイヤマ店内から聞こえます。その後に


『ゲギャッゲギャギャッ!?』


 という喚き声が聞こえてきました。取り乱したような声音です。木山さんの奇襲は成功したようですね。


 さーて、さて。早く出て来い木山さん〜。その後追いでよゴ〜ブリン。


 ボクはボクの出番が来ることを、木刀握り締めて今か今かと待ちます。


 ガンッ!ガンッ!


 続けて2回の打擊音。あらあら、木山さんったら、一撃で仕留められなかったのでしょうか?でも、作戦何ですから出てきましょうよ。


『ゲギャーッ!?ゲギャーッ!』


 ガンッ!ガンッ!


『ゲギャッギャァ...』


 更に2回の打撃音と、ゴブリンの断末魔が──


 そして辺りは静まり返った。これが嵐の前の静けさなのか。生物の存在を認識出来ない程の静穏の前に、誰もが息を呑むのであった。



 ごくりんこ



 じゃ、無くてですね、ナレーションしなくてですね!違いますよね!?作戦と、違いますよね!?


 ボクは慌てて店内に入ります。そこには血の匂いが充満していました。


「うげぇ、店内でやるんじゃなかったなぁ」


 と、ほざくのは、ゴブリンの死体に囲まれた我らがリーダー、木山さんです。たった1人で5体ものゴブリンを討伐してみせましたよ。殴り倒した時に浴びたであろう返り血が、中々歴戦の強者感を漂わせて...。


 って、違う違う。まったく危ない。流されるところでした。


「き、や、ま、さん?」


 ボクはなるべく低音を意識して木山さんの名を呼びます。アレほどボクに注意していたというのに、まさか木山さんが無理するなんて。これはボクに物言う権利があります。


「おう、丁度いい所に。コイツらの死体片付けるのを手伝ってくれ」


「なにか、言うこと。ありません?」


 ボクがそう訪ねれば、木山さんは顎に手を添えて考え始めました。


「言うこと...言う事ね...。膨れっ面も可愛いぞ」


 違いますよ!作戦ですよ!さ、く、せ、ん!作戦どうしたんですかー!?まったく木山さん!?お茶目は3体目までじゃないんですか!?それ以上はもう、故意でしか有り得ませんよね!?襲ってくるから仕方なく、という言い訳も通じませんよ!逃げりゃいいじゃないですか!何故に全員屠ってるんですかーっ!?


 と、いう言葉が思うように口から出ず、少しパンクしかけた頭を無理やり動かし


「...せ、世辞は要らないです」


 と、そっぽを向いて呟いた。

「い、今起こったことをありのまま話すぜ!作戦では外に誘き出して挟み撃ちする予定だったのに、1人で勝手に店内殲滅しやがった...!」


「誰に何言ってんだ?」


「...ちぇっ」

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