交わった平行線。
春は嫌いだ。春と聞いてほとんどの人間は新しい出会いや、生活のリスタートなどの事を思い浮かべ、今にも消えてしまいそうなほど爽やかな風の余韻に浸りながら〈よし、今年も頑張るか。〉と新生活に期待を抱くだろう。しかし、忘れてはいけない。春は、出会いの季節であるとともに、別れの季節でもあるということを。このように、聞くだけでポジィティブなイメ-ジを抱かせる言葉には、大抵ネガティブな意味もどこかに含まれている。要するに、いい話やいい言葉には、大概裏がある。ということだ。俺からいえることは、少年、少女よ。当たり前を疑え、と、昨日妹の結花と喧嘩して学んだことを朝の通学路の途中で難しそうに考えていると、背後から「おっはよ--翼!今日もいい天気だね-難しそうな顔して何考えてるのよ!」
と女子高生らしい気品のある匂いとともに、可愛らしい能天気な声が聞こえてきた。「お-葵か、今日はずいぶんとはやいんだな。」さっきの声の主は、小学校からの幼なじみの、真田葵だ。温厚な性格で、誰にでもなつっこく、クラスメイトからの人望も厚い人物だ。「今日は部活の朝練だからだよ。それで、さっきから一人で何考えてたの?」ええい、ねちっこいやつめ。きっと話すと笑われるにちがいない。ここは適当にごまかすか。「うむ、よくぞ聞いてくれた。実は俺、さっきから今日の葵のブラジャーの色は何色か考えてたんだ。確か昨日はき……」「ってコラ--!!!黙って聞いてたらセクハラとかマジであり得ない!翼さいて--大体翼は思いのままにできない女の子がいないからって調子に乗ったらだめだよ!わかった?」なんて言ってきたが、、褒めてるよね?これ。とまあ他愛もない会話をしていると、気がつけばもう学校の近くに来ていた。あとすぐそこの角を曲がれば、学校だ。葵と会話をしながら角を曲がると、なにやら校門から「結花、君しか僕に見合う女性はいないよ。だから僕と付き合ってほしい。どうかな?」と告白のような言葉が聞こえてきた。見るからに、上から目線で、最低な告白だが、顔は整っていて、ルックスもいい模範解答のような見た目の男子がそこにはいた。対して女子高生は、まるで砂漠に咲くバラのように気高く美しい。まさに立てば芍薬座れば牡丹
という言葉が似合うほど丁寧なたたずまいだった。そして彼女はまるで自分にとりついた悪霊を取り払うかのような声で、「お断りします。私、あなたのような自分のことを過度に優れていると勘違いしている人は、嫌いなの。さようなら。私の人生のモブキャラさん。」と冷徹にあっさり断った。周りがどよめいている。そりゃあ、当たり前だろう。あんな断られ方をしたんだ。俺だったらいきていけない。ふと顔を上げると、一人の生徒がこんなことを言っているのが聞こえた。【またか。どいつもこいつも懲りないな-結花は今まで誰の告白も首を縦に振ったことがないのに…。】…と。