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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第二節 約束の騎士

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第八十二話 集いし強者達

 シファの弟達の会話が盛り上がっている様子が視界に入り、遠目から彼等の様子を伺っていると私は後ろの誰かから肩を叩かれた。


 「ようやく見つけた、ラウ・クローリア」 


 「………、何の用だ?」


 「ただの挨拶……。

 まぁ、宣戦布告だよ」


 「………」


 話し掛けてきた人物は黒と白の髪の毛が混ざった体つきが逞しい男。

 私より多少身長は低いが、身体全体の筋肉量は向こうの方が遥かに上。


 知り合いに、こんな奴が居たか?

 いや、違う………確かこの男は……

 

 「噂通り、あまり話してくれそうにないな。

 俺達は同族、似たもの同士お互いに仲良くしようじゃないか?」


 「お前は、確か……昨年の優勝者だったか………」


 「御名答。

 俺の名はローゼン、姓は無い。

 俺はお前と同じ存在、ホムンクルスの一人だ」


 「ホムンクルスか……」


 「ああ、お互い帝国とは因縁があるみたいでね。

 俺も、創造主こそ別だが同じような製法で造られた存在なんだよ」


 「それで、似たもの同士だから挨拶のつもりか?」


 「そんなところだ。

 だが、お前は俺と違ってどうも堅苦しい。

 全く、もう少し気安い感じなら良かったんだが、俺とあんたはあまり仲良くは慣れそうにないみたいだな」


 「仲良くなど、我々には必要ないことだ」


 「ほう、そうかい……。

 まあ、いずれ戦う時はよろしく頼むよ。

 ノエルのガラクタさん」


 そう奴は私に吐き捨てると、何事も無かったかのように去って行った。

 そして入れ違うように、シファに絡まれていたはずのシンが戻ってきた。


 「ラウ様、先程のお方は?」


 「ローゼン、例の学院最強らしい。

 そして、我々と同じホムンクルスだと名乗っていた」


 「そうですか……。

 しかし、ノエルからそのような者が居るとは聞いた事がありません」


 「…………そうか。

 シン、奴は強い……。

 試合で当たる事になった場合、最大の警戒をしろ」


 「あ、はい……了解しました。

 その時は最大限の警戒を持って対処します」

  


 ラウ達やシラフ達が各々新しい人間関係を築いている様子を、私はラノワと共に会場の食事を食べながら適当に眺めていた


 「私には、あの時の彼が先の者と同一人物とは未だに信じられませんね……」


 「そう?

 私はそこまで違ったとかは感じなかったなぁ」


 「身内だから分かる感覚でしょう。

 私からは、そうですね。

 例えるなら、あの男の雰囲気は数多の戦場で生き抜いて来た戦士そのもの、とでも言いましょうか?

 アレの佇まいからは、そんな人をあまり近寄らせない雰囲気がありましたからね」


 「あーなるほど……それは確かにね。

 でも私は一目見ただけで彼だって分かったけど」


 「私はあの挨拶以来でしたから。

 だからこそ、なおさら私は信じられないんですよ。

 初対面のあの時は、十剣とは聞いては居りましたが普通の青年程度の印象でしたからね……。

 しかし、あの男と対峙した時は思わず死を悟った程ですよ……」


 「へぇ、そうなんだ……。

 ねえ、私と彼だったらどっちが怖かったの?」


 「正直に言いますと、あの男ですね。

 あなたの力は確かに凄まじいが畏怖という感情の方が正しいでしょう。

 絶対的な力から敬意すら感じる物として……。

 勿論、二度と剣を交えるのは御免被りますが………」


 「あはは、それはある意味嬉しい言葉だね」


 「対して、あの男からは正に死を悟った程です。

 畏怖とは全くの異質。

 あの場に長く留まれば死ぬという類いの物でした」


 「そっか……」


 「しかし、今の彼からそれを全く感じ無い……。

 不思議な物ですよ……。

 先日、自分が殺されかけた存在が目の前で楽しく語らっている光景を眺めているんですから……」


 「確かに不思議な物なのかもね」


 「シファさん。

 これから、あなたはどうするおつもりで?

 例の彼との決着はどのように?」


 「正直迷ってるよ……。

 私は彼をどうしたいのか……。

 助けたいのか……。

 止めるべきなのか……。

 もしくはそれ以外なのか……」


 「…………。」


 「やっぱり、アレでも大切な家族だからね。

 どんな過程を辿ったとしても。

 殺したりとかは絶対にしたく無いよ……。

 でもさ、あの彼を止めないと今のあの子が危険な目に遭うかもしれない。

 それにさ、向こうも何も考えずに来ている訳では無いみたいだし……。

 ここに来た以上、相応の覚悟はしていると思うよ。

 最低でも、私に殺される覚悟くらいはね」


 「…………、覚悟ですか。

 確かに、あれ程真っ直ぐとこちらと向かい合う敵を見たことがありません……」


 「真っ直ぐ、こちらを見据えてか……」


 「私は止めるべきだと思いますよ……。

 例え未来がどんな形であろうとも過去の我々を否定する理由にはなりません。

 過去の我々がそれを望んで進んだ……。

 いや、ソレを望まなかったにしろ運命だったと」


 「…………。」


 「私は許せませんよ。

 過去を簡単にねじ曲げるなど……。

 それこそ、これまで世界の歴史で失った犠牲が全て無意味だという事になりますから」


 「ラノワは、過去に誰かを失った事があったの?」


 「自分は幼い頃に両親を失っています。

 原因は、あなたも分かる通り。

 私の持つこの力のせいですがね」


 「そっか」


 「ええ、私の生まれはかなりの田舎でして。

 あそこは、古い習慣が未だに深く根付いているんですよ。

 私の生まれたその集落では、悪魔という存在はとても忌み嫌われていました。

 家には連日のように石や火を投げられました……。

 両親は、私のせいで酷い嫌がらせを毎日のように受けました。

 そして、ある日私の母が村の人間に殺されました。

 母が殺された事で、父は私を連れて別の土地への移住を決意し大きな街へと引っ越しをしました。

 しかし、これまでの嫌がらせの影響からか父は心を病んでしまい、ある日彼は私を置いて首を吊りました。

 それから居場所を失った私は、とある孤児院に引き取られから色々といざこざを経て今に至ります」


 「……」


 「私が今こうして立っていられるのは、両親がつないでくれた過去があるからなんです。

 私だけじゃない……。

 他にも沢山いるそのような人々を踏みにじるような行為を私は到底受け入れられませんから」

 

 「そっか……。

 でも、変えたい過去はあるんじゃない?

 だってさ、あなただって本当は、死んでしまった両親と暮らせるなら一緒に暮らしたいってそう思うでしょう?」


 「それはそうですけど………」


 「人間、誰しも強い訳じゃないからね。

 あなたのような、芯の強い人間も居る。

 でも、みんながみんな強い訳じゃない。

 弱いけど、寄り添えるから強く生きていける。

 私が見てきたのは、そういう人達だったから……。

 だから、向こうの気持ちは少なからず分かるんだ。

 過去を変えたいって、あのときの辛い出来事が無かった世界にしたいって思うくらいはさ……。

 誰しも、一度は望んでしまうと思うんだよ。

 人は、弱い生き物だからね」

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