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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第一節 無くしても残る物

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第七十七話 今度は私が

 クレシアが俺に用があるとの事で、俺は彼女に彼女の屋敷にある庭園へと案内されていた。

 手入れの行き届いた綺麗な場所、暗がりながらも繊細な花達の姿が視界に入り込み、息を呑む程の綺麗な花達に俺は魅了されていた。


 「隅々まで手入れが行き届いている。

 本当に綺麗な庭園だな……」


 「うん、屋敷の中でもこの場所は結構自慢なんだよ。

 色んな国の、色んな季節のお花が沢山咲いているの」


 そんな会話を交えつつ、俺達は歩き続ける

 ゆっくりと二人で歩き、そして………。

 とある開けた場所でようやく彼女は立ち止まった。

 夜の闇に静寂がはしり、街の中でも高台にこの大きなお屋敷が建っているので町の夜景を眺められていた。


 「綺麗な夜景だな……」


 「うん……、そうだね……」


 「そろそろ、要件を話して貰えるか?」


 再び彼女に問う。

 ゆっくりと隣の彼女は静かに頷き、暗がりの中で表情のよく見えない。

 しかし、小さくも確かな声で俺に話し掛けてきた。


 「シラフはさ……。

 いつからシファさんの屋敷に住んでいるの……?」


 「姉さんと一緒に暮らし始めた時期か?

 ああ……。

 確か10年くらい前だが……それがどうかしたのか?」


 「……そっか……。

 前の、本当の家族の事は覚えているの?」


 「いや、あまり覚えてない。

 ずっと昔の事だからな………」


 それで何かを察したのか、

 クレシアは「うん、そっか」と何かが腑に落ち納得したようで、その反応を不思議に感じた。


 「クレシア?」

 

 俺はその意味が気になり、彼女を呼び掛ける。

 すると彼女は、俺の顔をまっすぐ見つめ淡々と俺にこう告げた。

 

 「あなたに見せたい物があるの……、シラフ」


 そう言い、クレシアは自身の服の下から赤い石の首飾りを取り出した。


 アレは確か、ずっと昔に……


 「それは……一体?

 いや……あり得ない……。

 なんで、クレシアがソレを持って……?」


 「これは……。

 私が小さい頃ある男の子に貰った物なの」


 「君が……貰った…………?」


 「うん……。

 あなたから貰ったのシラフ。

 10年前に、あなたが私にくれた大切な贈り物」


 「いや………でも…俺は……?」


 「やっと会えた……ハイ……ド…?」


 「っ……っ……!」


 突如として、強烈な目眩に襲われる。

 昔の記憶がフラッシュバックし、立っていられない程の気持ち悪さを覚え猛烈な吐き気に悶絶する。


 身体が熱い……、苦しい……。

 

 意識が薄れる中で俺は何かを開幕見ていた。


 赤い石を手に持った幼い少女の姿……。


 昔住んでいた、本当の家族と共に過ごしたあの我が家で……


 「シラフ!?

 返事をして!、シラフ!!」


 クレシアの声が聞こえる。

 俺を抱えて必死なって、名前を呼び続ける彼女の声。

 

 記憶が混濁する中、彼女の姿が何かと重なる。


 「…イっ………ドっ!!」


 何かが聞こえた気がした、とても懐かしい何か……。

 その正体が何なのか分からないまま、俺の意識は闇へと落ちていった

   


帝歴403年9月16日

 

 「彼の意識はまだ戻らないんですか?」


 学院にある病院の一室において、私は倒れた彼を診ていた医師に彼の容態を問い詰めた。


 「我々も全力を尽くしているよ……。

 しかし、これは………。

 過去に何があったらここまで深い心理的な傷を負うんだろうな……。

 ここまで心身に異常をきたす程だと並の出来事があった訳ではない事は確かだが……」


 「あの……助かるんですか……彼は?」


 「今の状態では何も言えない。

 いずれは目を覚ましてくれるだろうが……

 では、私は一度失礼させてもらうよ……」


 そう言って、医師は私の前から去って行った。

 しばらくすると、部屋に誰かが駆け込んで入って来る。


 「……クレシア……。

 あなた、もう来てたの……」


 部屋に着たのは彼の仕えている人であり、私の親友でもあるルーシャであった。


 「うん……私は実際にあの場にいたからさ。

 だから、えっと、少しでも力になりたくて……」


 「そっか、ありがとうね……」


 「ねえルーシャ……シラフはどうして倒れたの?

 何が、彼に起こったの?」


 「それは、こっちが聞きたいよ。

 クレシア、シラフと何があったの?

 てっきり私は……その……、ほら?

 彼に告白か何かをすると思って、私がわざわざ気を利かせてあげたのに」


 「あの、えっと……それは……」


 ルーシャに色々問い詰められた挙げ句、私は彼女に先日の事を話した。

 シラフが、あの幼なじみであったハイドであったと確信した事を。

 そしてそれを彼に問い詰めた途端、彼の容態が突如としておかしくなった事を伝えた。


 「嘘……それって……」


 「ねえ……シラフは……。

 ハイドは過去に何があったのかな……。

 何か知っているのなら教えてよ……ルーシャ。

 彼は一体何者なの……、

 ハイドは、シラフは一体どうしてこんな事になってしまったの………」


 「クレシア……」


 「私は知りたい!

 もう何も知らずに、生きていくのは嫌なの!

 今、目の前にあの時の彼がいるのに、彼がこうして苦しんでいるのに何もしてあげられないなんて。

 見ているだけなのは嫌なの………

 だから、何か知ってるなら教えてよ、ルーシャ!

 私は、私に出来る事をしたいの!

 私の大切な人を、私は助けたいの!」


 私は思わず親友である彼女を問い詰める。

 泣きながら、あまりにみっともない姿を晒しながら言葉を続ける。

 

 それでも、今目の前で苦しんでいる彼に比べたら些細な事だ。

 どんな醜態を晒しても、私は彼を助けたいり


 すると、ルーシャは小さな声で告げた。


 「……シファ様に聞けば全て分かる。

 私からはそれしか言えない」


 「ルーシャはそれを知っているの……」


 「うん……、私からはそれしか………」


 「分かった………。

 シファさんに聞いてみる。

 今度は私が彼を救って見せるから!」


 「クレシア…、でも……」


 「シラフは……ハイドは約束を守ってくれた。

 例え記憶を無くして私を忘れてしまったとしても、こうして再び会いに来てくれたの。

 そして私の事を覚えていた……。

 あの時異常をきたしてしまったけど、でもそれは私の事を覚えていた証なんだよ……。

 その形はどうあれ、記憶に残らなくてもその大切な想い出は彼の何処かに必ず残っている……。

 だから………」


 「クレシア…………」


 「だから……今度は私が約束を守るんだよ……。

 今度は私がハイドとの再開を果たす番だから!!」

 

 私は本当の意味での彼との再開を果たす為に、彼を知らないといけない。

 今は眠り続ける彼の姿を目に焼き付け、私は彼の現在の家族であるシファさんの元へと急いだ

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