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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第一章 理想の生き方
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第七話 襲撃者

 口を塞がれ、手足も縛られ身動きが取れない。

 船内の倉庫で何かの物音が聞こえ見に行けば、背後から何者かに頭を殴られ、今に至る。


 視界が遮られる中、男達の声が聞こえてきた。


 「俺は操縦室を狙いに行く。

 お前達は可能な限り、二人一組で行動すること。

 そして、通路の脇道からエントランスへと向かい乗客達に向けて威嚇射撃、可能な限り注目を集めろ。

 捕らえた乗客達は必ず手足を縛り、エントランスに乗組員含めて時間内に一カ所へと集めろ。

 計画が進み次第、手の空いた者は金目になる物を回収し、依頼主からの次の命令が来次第改めて俺から方から命令をする」


 こちらは何も出来る事がなく、謎の男達の言葉に耳を傾けていた。

 そして彼等の長と思われる人物からは恐ろしい言葉が聞こえた。


 「乗客は我々の安全を確保出来た後に、乗組員を含めて全員射殺だ。

 途中、軍の奴らに目を付けられたら時間稼ぎの人質として上手く使う、特に今回の依頼の標的であるラーニル家の者は絶対に逃がすなよ。

 依頼主はアレの死体を証拠として所望している。

 ラーニル家の者は生け捕りにし、依頼主の元で殺す。

 他の者はどうなってもいい。

 全員、配置につけ……」


 男から命令が下されると、それぞれの持ち場へとは向かったのか激しい足音のみが聞こえてくる。

 縛られている自分に対し何者かが掴み掛かると途中、別の人物が自分の頭を鷲掴みにされ、思い切り壁へと叩き付けられる。


 「そこで何も出来ぬまま、ただ藻掻いていろ」


 何も逆らう事が出来なかった。

 鈍い痛みが残り続ける中、固唾を飲んで祈るしかない


 誰か奴等を止めてくれ……と。



 俺はシンとの会話をした後、一人自室へと戻り時間が来るまで休んでいた。

 すると部屋に船内放送が鳴り響く。

 恐らく夕食の受付が始まる事のお知らせだろう、後で姉さん達を呼びに行かないとなぁなどと聞き流そうとしていると、


 「お客様にお知らせいたします。

 船内におります乗客乗組員は至急エントランスホールにお集まり下さい。

 繰り返します、船内におります乗客及び乗組員は至急エントランスホールへとお集まり下さい」


 放送でのアナウンスの口調は少し焦りが見えているように感じた。

 まさか、船が何者かに襲撃でもされたのか?

 いや、まさかそんな事は滅多に起こるはずはない。

 

 変な妄想だと、頭に過ぎった思考を振り払う。


 そんな事が早々に起こるはずが無い。


 しかし、何かがおかしい事は感じた。

 違和感を感じた俺は、例の腕輪を身に付け部屋を後にする。

 腕輪であれば万が一の為に敵に見られた際にも武装しているとは思われ無いだろう。

 つまり、もしもの時に対応出来る。

 一応、炎さえ出なければ普通の剣と同じく扱えるので便利な代物だとつくづく思うが………。

 この時の俺は腕輪の安心感からか、炎に対する恐怖心も幾らかは薄れていると感じた。


 多分気のせいかもしれないが………。



 廊下に出ると、俺は周りを見渡して人影を探る。

 全体を見渡し確認したが何処にも見当たらない。

 放送の通りに全員が既に向かった後なのか、船内は異様な程に静かであった。

 姉さん達が戻って来ない事が気掛かりだがとにかく今は冷静に対処しよう。


 一般の客を装う為に、俺は普通に廊下を歩きエントランスを目指す。

 現在俺がいるのは4階、エントラスホールは1階なので階段を通ってもかなりの距離がある。


 そのまましばらく歩き、俺は三階に着いた。

 人影は依然として見当たらない。

 俺は、この時嫌な予感が的中したと確信し周囲の警戒を強める。

 そして、二階へつながる階段に向かう為に角を曲がろうとすると、不意に誰かにぶつかった。


 「っ!?

 済みません、怪我は……」


 ぶつかった相手に、謝ろうとした矢先。

 相手は軽く舌打ちし、そして銃を構えてこちらへと威嚇しながら話しかけてきた。


 「まだ残っていたか、ほらさっさと行け。

 これが何なのか分からないのか?

 死にたく無ければ俺に従え小僧!!」


 覆面の者は、威圧的な態度で俺に銃を突き付ける。

 その形から恐らく帝国時代の旧式であろうか。

 模型とは思えない程の重厚感から、恐らく本物で間違い無いだろう。


 そして俺は、現在この船が海賊に襲われている事を確信した。


 「ほら、どうした?!

 さっさと立って歩け!!

 殺されたいのか!!」


 あまり威圧的な態度、だが恐らく素人だろうかと思う程に銃を持つ腕が僅かに震えているのだ。

 恐らく、下っ端だと推測。

 この程度なら恐らく俺でも対応出来る。

 故にやるべき事は決まっていた。


 「分かりました」


 とりあえず俺は素直に従う素振りをしてゆっくりと立ち上がると。

 相手の隙を突き相手の腹部に拳を振り上げた。


 「っ……?!」


 相手は一瞬怯み、腹を抱えると頭の位置が下がった。

 銃を落とした事を確認すると、追撃として頭部を両手で掴み追撃の膝蹴りを加えると相手は完全に気絶し意識を失う。

 あまりに、手際良く行き過ぎたことに俺は多少を驚く。

 以前から姉さんに教わっていた護身術には感謝せざるを得ないだろう。


 「ふう……。

 姉さんに護身術を教わってて良かった。

 さてと………」


 ひと息つき、相手の武装から使えそうな物を剥ぎ取る。

 拳銃の一つがいい感じに扱いやすそうなので賊から拝借し服の中に仕舞う。

 そして、賊の腰に巻かれたベルトで手足をきつく固結びで縛り口も縛り近くのトイレに放り込む。

 とりあえずこれでしばらくは問題ないだろう。

  

 が、今は相当まずい状況に変わりない。


 「さて、反撃したいのは山々だが。

 しかし今は他の仲間を探した方がいいか……。

 敵もこいつがのびている事に関してはその内気付くだろうし。

 早めに済ました方が良さそうだ」


 最悪、俺一人で何とかしなければと思いながら二階へと向かった。

 今も見つからない姉さん達。

 同じように動向が掴めないラウとシン。


 彼等がどうしているか、俺はそれが気がかりだった。

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