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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第一節 無くしても残る物

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第五十五話 襲撃者

黒い仮面を身に付けた者が画面に映された。


 「こんにちは、学院の諸君。

 我々は君達の敵だ」


 声は加工されているのか、映像から肉声は判別出来ない。


 「恐らくこれを見ているのは八席諸君達と、学院理事長を含めた学院上層部であろう。

 我々の要求は、ある者の公開処刑を指定の場所日時にて執り行う事だ。

 要求に応じなければ、世界同時に無差別の殺戮行為を行う。

 殺して貰う者の名はサリア王国の現十剣の一人である、シラフ・ラーニル。

 期日は403年の10月20日、闘武祭の最終日であるその日にラーク中央闘技場にて行うこと」


 その者は淡々と告げる。


 「だが、我々の言葉を信じていない者が多数であろう。

 故に我々はその証拠をお見せする。

 8月30日に我々の言葉が嘘では無いその証拠をお見せする。

 それを見て直接君達に判断をしてもらいたい」 


 そしてその者は最期に


 「君達の正しい選択を待っている」


 と、告げると映像が途切れた。



 「あの……今のは……。」

 「昨日私の元にこの映像が送られた。

 差出人不明、我が国の技術に長けた者なのは確かだ。

 そして敵の狙いはあなたの弟。

 故に、今回特別にあなたを呼んだ次第です」


 「なるほどねぇ、そうゆう事か……」 


 「一つ質問言いかね?」


 「何かな、シトラ君」


 「彼が狙われている理由は?

 それが分からない以上手の内ようが無い。

 心辺りが答えてもらいたい、シファさん」


 「色々、あるにはあるけど……。

 色々と複雑だからね……あの子のプライバシーとか色々あるからね」


 「この状況にて我々に言えない事でも?」


 「まあ……あるにはあるかな。

 それに、何かあるなら私1人で解決出来るよ。

 今この場に居る全員くらいなら、私1人で容易いくらいだからさ」

 

 「…………あるなら答えて頂く。

 敵の実力が分からない。

 手掛かりとしては、あなたと本人くらいのものだからだ」


 「そうだね……一つあるとしたら彼は神器の適正が他の神器使いよりも高い事。

 多分敵は、彼の素性をある程度は把握してるのかもしれないね」


 「……犯人の目星は付いているのかね?」


 「……それが、多くて検討が付かないな。

 今のところ最年少の十剣だから反感は多いからね。

 それで、理事長の判断としてはどうしたいの?」


 「ああ……事と次第によっては彼を殺さなければならない可能性がある。

 敵は翌日に何かをする事は分かっているから、それを君達に未然に防いで欲しい。

 相手の所在地と時間が不明だが、私がこうして頼れるのは君達くらいだからね。

 教員には既に伝えているが、君達生徒達の方がなにぶん動きやすいだろうよ」


 理事長の言葉を聞くと、シトラは


 「なるほど、了解した。

 場所は私が索敵を図り的を絞る、学院内は私の索敵内だからな。

 私が敵を索敵する。

 他の者は怪しい人物を見つけた場合、最低二人で対処するように心掛けて欲しい。」


 それに対しシグレが話し掛ける


 「二人で張る理由は?」


 「敵の実力が未知数だからだ、我々より必ずしも弱いとは限らないだろう。

 学院に対してこうして喧嘩を売れるだけの根拠や実力、自身が向こうにある。

 つまり、勝算が取れたから行ったんだ。

 こうして犯行予告を悠長にご用意出来る程に。

 まあ、あなたの弟さんが直接狙われる可能性は無くは無いが敵もそこまで弱くは無い事は確かだろう」


 「まぁ、それはそうだね」


 「それで、我々をどのように打ち分ける?」


 「私に考えがある、ではこれから組分けを行う。

 異論は認め無い」



 シトラの采配によって最終的な私達の組分けはこのように決定した。


 シトラ、シファ組。

 アレク、メルサ組。

 ローゼン、ラノワ組。

 カイル、ヒサメ組。 

 リノエラ、シグレ組。


 他四組が発表された。


 「ちょっと待ちなさい、シトラ!!

 なんで私がこんな奴と……」


 「シグレ、異論は認めないと言ったはずだ」


 「そうです、それにどうしてシファ様があなたと組むんですか?」


 「索敵の絞り込みの為だ。

 彼に最も詳しい彼女で無ければ索敵の範囲も決まらないだろう?

 位置が判明次第、各地に散った君達へ連絡を渡し近い者から現場に向かう。

 正直、これが手っ取り早いだろう?」


 「それは……確かに……」


 「他に、異論を放つ奴等はいないな。

 それでは各自、それぞれで動いてくれ。

 さっき言った通りこちらで目星が付き次第端末へ連絡する」


 シトラがそんな事を彼女に言うと。


 「珍しく、お前がまとめるとは以外だな。

 何か心境の変化でも?」

  

 当の本人は軽くため息をして言葉を返した


 「あのな、別にそうでもない……。

 休みに呼び出し受けたんだ、さっさと終わらせて帰りたいんだよ?

 まあ影響されたって理由は、例の同居人に影響されたのかもしれないが」


 「……影響か……、お前がそいつに何を影響されたんだ?」


 「一種の恐怖に近い物、焦りかな……。

 今の自分のままでは必ず後悔すると思い知らされたんだよ。

 とにかくだ、私が珍しく最適な指示をしたんだ?

 しっかりと働いて貰うからな、お前ら?」


 「話はまとまったようだね。

 それでは生徒の代表者諸君の健闘を祈っているよ」


 会議は終了し、彼等はそれぞれに散って行った。



 部屋には、私とシトラだけが残っており静寂が訪れている。


 「さて、これから私達も動くかな」


 「それで、こっちは何をするの?」


 「索敵魔術を使う。

 街全体に使う以上魔力が足りないと思うから、控えの魔力も使わないといけないがな」


 「なら私の魔力を分けようか?」


 「やめておく、私は自分以外の魔力を使うのは苦手なんだよ。

 かえって精度が落ち兼ねない。

 それで敵の実力はどれくらいと見ているんだい?」


 「結構あるとは思うよ、私を見据えて喧嘩売ってる訳だからね?

 あの感じだと、多分私を動かせる為なのかな……」


 「まぁ、いいさ。

 それより、私に掴まれ」


 シファは彼女の肩を掴むと。

 突然床に魔法陣が形成され、光を放つ。


 「少々、荒れるが我慢してくれ」


 そして二人は魔法陣の光に消えた。

 二人が現れたのは、先程いた建物の頂上付近の上空。

 私は少し驚いたが、状況を把握すると自分の力で宙に浮いた。


 「へぇ驚いた……、浮遊魔法を無詠唱とは……。

 中々やるね?」


 「初歩の初歩だろう?

 それでこれからどうすればいい?」


 「これから、君の過去に深く関わった人間を洗い出す。

 ある程度関係があれば私の索敵に引っかかる。

 数と位置は私だけが把握出来るが……。

 後はその中から君に縁の深い人物を絞り込むだけだ……」


 「名前と顔も分かるの?」


 「名前と位置だけは解る……。

 シファさんは、とりあえず心を落ち着かせて出来るだけ何も考え無いでもらいたい。

 記憶を辿るのに無駄なノイズがあってはやりずらいからな………」


 「了解。

 頼んだよ、シトラさん」 


 私は目を閉じ、そしてシトラは手を振る動作をしどこからか杖を出現させた。 


 「さて、久しぶりの大仕事を始めようか……」


 シトラは杖を天にかざした。

 すると学院上空に、一つの巨大な魔法陣が展開される。

 青い光を放つ巨大な魔法陣は学院一帯を包み込んだ。

 数分に及び魔法陣を出現させたのち、シトラは杖を降ろすと魔法陣は忽然と消滅した。


 「シファさん、もういいよ」


 シファが目を開けると、シトラは必死に手帳に何かを書き込んでいる様子。

 10分ほど書き込み終えるとそれをシファに渡した。


 「この中に気になる人物はいるかい?」


 私は手帳に書かれた名前を一通り見通す……。

 そして、幾つか気になる名前があった。


 「ねえ……どうして、この名前が?」


 「何か心当たりのある名前てをも?」


 「いや……でもおかしい……。

 彼女なら確認したから……いいはず……。

 でも……あの子がどうして……?」


 「シファさん、確認したいから一度見せて欲しい」


 私は動揺で僅かに手が震えながらもその手帳を彼女に返した。


 シトラがその一覧を再び確認する。

 先程は目に付いた者を書きなぐったのみだったのか、書いた詳細は特に知らなかった模様である。

 自分の書いた物を確認していくとある人物の名前に気付き違和感を覚える。

 不可解な点として同じ女性の名前が二回書かれている事、もう一つは私と同じ家系と思われる人物が二人いる事だ。

 

 「シファさん、一人は心辺りがあるんですよね。

 それは彼女の事で間違いありませんか?」


 「うん……事情があって説明出来ないけど……。

 彼女は敵では無いはずだよ」


 「それじゃあ、彼に付いては?」 


 「分からない……。

 だってあり得ないよ、私の家系はもうほとんど残っていないんだから。

 私とあの子を、除いて存在していない……。

 だからその名前が存在している事は絶対にあり得ない」


 「それでは一体、その彼は一体何者なんだ?」 


 「分からない……。

 シトラ、彼は何処に?」


 「二人ともオキデンスの方向に居る。

 一人は商店街の中に、もう一人もその近くだ……」


 「っ……」


 するとシファは血相を変えて、突然と姿を消した。

 あまりの速度にシトラは見失う。 


 「見失なったか……。くそっ…!」


 シトラは端末を取り出し、ラノワの組へと連絡をする。 


 「お前達、今何処にいる!」


 「今オキデンスに向かう列車内だ。

 シトラ、そっちで何か分かったのか?」 


 電話に出たのはラノワであった。


 「至急、オキデンスに急行しろ。

 シファ・ラーニルを見失った!」  


 「見失ったって?!

 一体何があったんだ、シトラ!」


 「容疑者に検討が付いたんだよ……。

 場所はオキデンス二十番通りにいる。

 彼女も恐らくそこに向かったはずだ」


 「二十番通りって商店街、確かか?

 今そこは祭りの真っ最中のはずだが……?

 まさか犯人が呑気に祭りを楽しんでいるとでも?」


 「目的は分からないが……。

 その辺にいるのは確かだ……。

 ついでに犯人に狙われている彼も近くにいる」


 「何?

 そいつが犯人なのは確かなのか?」 


 「まだ確信には遠いが……その可能性は非常に高い」


 「容疑者の名前は?」


 「名前は……、ハイド・ラーニル。

 これから他の組にも伝達する、現在一番近いお前達はそのまま現場に向かえ。

 可能な限り奴との交戦を控えろ」


 「了解した」


 そして彼等との通話は途切れた。

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