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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第一節 無くしても残る物

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第五十三話 家族に憧れて

 俺は今、クレシアの部屋にお邪魔していた。

 勉強を教える為とはいえ、やはり女性の部屋というのはどうも落ち着かない。

 対して物が多くある訳でもないが、女性の部屋という事もあって綺麗な小物や装飾品の類いが見える。

 しかし、彼女の性格に現れているのか色調は何処か青や黒、緑を基調とした少し大人びたような、落ち着いた印象を感じる部屋といった具合だ。


 ルーシャや姉さんの部屋には何度か赴いた事があるが、思えばそれ以外の人ははじめてだろう。

 いやそれが本来当たり前なのか……。


 そして目的であったクレシアの勉強はというと、思いのほか順調に進んでいる様子。

 自ら計画的に進めていたと言うだけあり、課題は既にほとんど終わっていた様子。

 何か手伝うと豪語したオレではあったが、真面目な彼女を見ているのが退屈になり暇だった俺はクレシアから許可を貰って部屋の本棚から何冊かの本を適当に借りて読んでいた。


 「クレシア、あとどれくらい掛かりそうだ?」


 「えっと……多分5ページくらいかな?

 だからそんなに掛からないと思うよ」


 「てことは、もう終わりが見えているな。」


 「そうだね。

 シラフのおかげで早く終わりそうだよ。」 


 「いや、俺はほとんど何もしてないよ。

 今だってこうして本を借りて読んでいたしさ」


 「そう、今は何を読んでいるの?」


 「古の英雄達って本だよ」


 「確か世界各国に実在していた英雄の逸話をまとめたのだったよね。

 興味本位で読んで見たんだけど、途中で飽きたんだよね……。」


 「まぁ女性には思考が合わないんだろうよ。

 でもさ、初代皇帝の逸話とかは結構有名で面白いと思うんだが、どう思う?」


 「確か、弱小国から巨大な帝国へと一代で築いた人だよね。

 確かにすごく有名な人の話だけど本当なのかな?」


 「俺は本当だと思ってるよ、俺の腕にある神器がその証拠ともいえる。

 恐らく初代皇帝は神器使いだったんだ…。

 そうであればほとんどの事に説明がつくんだが……いまいち変なんだよな」


 「何がおかしいの?」


 「いや、神器使い道なら何の力が使えるのかは決まっているんだけどさ、初代皇帝の逸話だとそれは当てはまらないんだ。

 どうも、色々な力を使っていた記録が残っているから、どんな能力なのか正直わからないんだよ」


 「そうなんだ。

 でも昔に死んだ人なんだからそこら辺は作り話とかじゃないの?」


 「まあその線もあるよ。

 でも、四百年程度だからある程度正確な記録は残っている可能がある

 そんことを色々と考えてみると面白いものだよ」


 「そうだね。

 そういえば、リンちゃんは寝かせていてもいいの?」


 リンは俺の頭の上で上手い具合に昼寝をしているようだった。

 まあ寝ているだろうとは思っていたが………


 「放っておけばいいさ」


 「そうなんだ。

 ねえ、シラフ明日の予定は何かある?」


 「明日は特に無いよ、まず今日はクレシアの屋敷に泊まらせて貰う話になっているはずだけど……」


 「そうだったね……。

 それじゃあさ、シラフが良かったら明日は一緒に出掛けられないかな?」


 「構わないが、どこに行くんだ?」


 「明日は統一記念日でしょ?

 だから街でお祭りがあるんだ。

 良かったら、その一緒にどうかなって……

 私とじゃ嫌かな?」


 「俺で良ければ行かせてもらうよ。

 ルーシャも誘ってるんだろう?」


 「えっと、ルーシャは……。

 明日は生徒会の仕事だったと思うよ。

 闘武祭が近いからその打ち合わせがそろそろ始まるみたいで忙しいって言ってた」


 「あー、確かにそうだよな。

 そういえば、確かにこの前そんな事を言っていた気がするよ」


 「うん。

 私、去年は人混みの中で体調を崩したら大変だって両親にきつく言われて行け無かったんだ。

 でもシラフが私の護衛って事で付いて来てくれれば問題ないと思うんだ?」


 「そうか……なら仕方ないか。

 明日一日限り、俺がクレシア専属の騎士として御身を護衛する。

 その祭りに、クレシアは行きたいんだろ?」


 「うん、ありがとうシラフ。

 明日のお祭りが楽しみだね」



 その日の夕食はクレシアの母親も交えての一家総出のものとなった。

 出された夕食はとても豪華なものばかりで、少々緊張したがとても楽しいと感じた。


 家族がいる……。

 当たり前の生活が正直うらやましいとも感じた。

 俺には姉さんやリンもいた。

 だから、そこまで寂しいとはあまり感じた事が無かったが……。

 ただ、両親が今も生きていたらクレシアのように両親と他愛ない日常会話をする事が出来たのかもしれない……。


 「ふう、ご馳走さまでした。

 本日はお招きありがとうございます」


 「それは良かった、それだけ言ってくれるのならこちらも嬉しい限りだよ。

 そうだろう、母さん」


 「そうね、いつもクレシアからあなたの話は聞いているわ。

 シラフ君は、確かサリアの姫様に仕えているそうね?」 


 クレシアの母親、一見優しそうに見える彼女に話し掛けられ質問に答える。


 「ええ、一応第二王女であるルーシャ王女の専属として仕えています」  


 「そう、ねえ騎士って主にどんなお仕事をされているの?」


 「そうですね……。

 大半は主の護衛や雑務の手伝いとかでしょうか。

 分かりやすくいうと、武に長けた召使いという立ち位置ですね」


 「そう……。

 それじゃあ、あなたには既に決められた婚約者とかはいるのかしら?

 シファ様の家はかなりの家柄なのだから、多分それなりの方とかいらっしゃるのでしょう?」


 「いや、俺にはまだいませんよ

 俺は国であまり良く思われていませんからね。

 自国では無能の騎士で名が通っていますから」 


 「でも、シラフ君は立派な御方だと思いますよ。

 お相手がいないのでしたら是非うちの娘はどうです?

 彼女もまんざらではないはずですよ」


 突然の言葉に思わず俺はむせた。


 「げほっ……突然何っ……を言って……」


 「御免なさいね、でも私は娘にはあなたが良さそうだと思っていますよ」


 クレシアの母親は、人の心理の揺さぶりに長けている……。

 先程から笑顔で俺の様子をうかがっており、あの言葉が冗談なのか本気なのかが全く分からない……。

 俺は思わず視線がクレシアに自然と動く。

 彼女も同じく動揺しているのか頭を俯けており、食事の手が止まっていた。

 こちらから見るだけでも、顔が見たこと無い程赤く染まるのが分かる。

 母親がそんな彼女の様子に気付くと


 「あら、どうしたのクレシア?

 さっきから手が止まっているけど?」


 「……お母様!!

 突然シラフに何を言っているんですか!!」


 「私はただ彼の嫁候補にあなたを勧めただけよ?」


 「嫁って、えっ!!?」 


 「シファ様はどうですか?

 彼の姉として、私共の娘とはどうお考えで?」


 現在、二回目のおかわりをして黙々と食べていた姉さんは、


 「そうだなぁ。

 あの子次第、かな?」


 そんな事を言った。

 姉さんの言葉を聞いて、クレシアの母親は頷くと……


 「そうですか、ならシラフさん。

 是非ともうちの娘をよろしくお願いしますね」


 「えっ……いや……えっと……」


 「シラフ、良かったね」  


 俺の横でリンがそんな事を言った。

 変にニヤニヤとしているのが余計に腹が立つ。


 「お前、この状況楽しんでるだろ?」


 「別に……。

 ほら……向こうはもまんざらでもなさそうだよ?」


 クレシアは一瞬こちらを見たがすぐに視線を逸らす。

 さらっとクレシアの方に視線を向けていた。

 クレシア本人は、先程と同じくかなり強張っている。


 「おい……なんかあの様子だと本気にされてるよ……。

 クレシア……多分これはお前の両親の冗談だからな………?」


 「……うん……分かってるから……。 

 その……あんまりこっちを見ないで!

 色々と恥ずかしいでしょう……」


 「分かってるならいいが……。

 なんか凄い気まずいんだよ……。

 なんか新しい話題を頼むよ……頼むからさ……」


 俺達の会話とも言えない様子を楽しげにクレシアの両親は眺めている。


 「仲が良くていい事ですね、あなた?」


 「そうだな。

 シラフ君が娘を貰ってくれれば我が家も安心だよ」


 親達の笑い声が絶えない。

 目の前の様子に無関心な姉さん……。

 そして両親達と同じく横目で面白そうに眺めているリン。

 変に意識し始めたクレシア。 


 色々な人達と過ごすこの時間に少し疲れてる………。

 しかし、こういうのも悪く無いと俺は何処かで思っていた。

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