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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第一節 無くしても残る物

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第四十話 時は既に

 帝歴403年8月7日

 

 この日を境に長期休暇を迎えた。

 大半の生徒が学院からの授業から解放され喜んでいるだろうと思われる。

 昨日の教室内の雰囲気はいつもの3割増しで騒がしく、皆が休暇の期間どうする?みたいな楽しげな会話が多かったのだ。

 

 実際、私達の方もそんな感じで盛り上がっていた。

 私も毎日のように座学を受け続けるのは少し辛いが耐え難いという訳では無かった。

 むしろ最近は楽しいと感じ始めていた、それは隣の編入生の存在が大きいだろう。


 だからむしろ、長期休暇で学院で顔を合わせる機会が減る方が少し寂しいとさえ感じる。

 別に、予定が合えばすぐにでも会えるからそこまで恋しいとかそういうのではない、はず………。

  

 今の時刻は午前9時、私は屋敷の侍女と共にお父様の書斎に訪れていた。

 例の彼の手掛かりとして私は昔のアルバムを探しているた。

 彼との何らかの接点があったならば、何枚かの写真が残っているはずと踏んでいたからだ。


 「お嬢様、何故昔のアルバムをご所望なのです?」


 「うん、ちょっと色々あって。

 とにかく早く見つけてちょうだい」


 「承知しました」


 侍女と共にアルバムを探し始めて30分程が過ぎた頃……。


 「お嬢様!

 例のアルバムと思われるモノが見つかりましたよ!」


 「本当!ってうわぁぁぁ!」


 脚立に立っていた私は、喜びの余りバランスを崩し落ちてしまった。

 ドンっと大きい音が鳴り響き、床に打ち付けた体が痛い。

 幸いなのは、床にカーペットが敷いてあり衝撃が幾らかやわらいだ事だ。

 石床なら大怪我をしていただろう。


 「痛っぁぁぁ。

 うう……、でもアルバム見つかったんだね」


 「はい、その………大丈夫ですかお嬢様?

 お体に障ったりでもしたら、旦那様に合わせる顔が」


 「大丈夫……、大丈夫だよこのくらい。

 それで、えっとアルバムを見せて貰える?」


 「はい、こちらです………」


 侍女から渡されたアルバムを手に取り、私は中身の写真に目を軽く通していく。

 アルバムには小さい頃の私や、今よりもかなり若々しいお父様とお母様が写っていた。

 写真一つ一つについ見入ってしまうが、今は我慢。

 昔別れてしまった幼なじみの手掛かりを探す為に……。

 そう肝に念じながら、私はアルバムのページをめくり続ける。


 すると……。


 「あれ、これって…………」 


 その見開き2ページには小さい頃の私と一人の男の子が写っている写真があった。

 その写真には色がついており、背景の自然が鮮明に写っていた。

  

 大きな木の下で、隣り合って座る幼い私ともう一人。


 「クレシア様、その男の子は?」


 「……多分、私の探していた人だと思う。

 やっぱり、夢の男の子は本当にいたんだね……」


 私の目からは自然と涙が溢れていた。

 彼が実在していた、たったそれだけで嬉しさでいっぱいだった。

 しかし、この子の存在を確かめる為だけにに探していたのではない。

 彼が一体何処の誰なのか、私はその真相を知る為に探していたのだから……。


 最終的な目標は彼との再開を果たす事……。

 それが本来の目的……。

 私は再びアルバムに目を向けた、彼が何処の誰なのかを確かめる為に……。

 

 「ねえ、これって私の両親だよね」


 「はい、ですがその隣のご夫妻と男の子は一体?」


 更に少し捲った先のページにあったとある写真には私の家族と、男の子の家族と思われる人物等が同時に写っている写真があった。


 その写真には説明書きある…… 


 ノワール家とカルフ家両夫妻の記念写真


 そう説明には書かれていた。

 日付は392年8月20日、そう記されている。

 その写真には1つ特徴的な物があった。

 男の子の父親と思われる人物が首から下げている銀色の懐中時計である。

 何かの模様が刻まれてる、何かの手掛かりになるかもしれないと思ったが………。


 「カルフ家、それがこの子の家系……」 


 何かの違和感を感じた………、お互いの両親の中に加えて私と男の子が居る。

 でも、何か不自然な余白………。

 まるでそこに誰かが居たような……。


 私は更に詳細を確かめるべくページをめくった。 

 例の写真の次のページ、そこには……。


 「…………これ、私の持ってる首飾り……?」


 その写真には男の子と私の二人が写っている写真だった。

 男の子は茶髪、私はそれよりも少し薄い色の髪色なので

 一見すると、仲の良い兄妹のようにも見える。

 小さい私は、あの赤い石の首飾りを身に付けて彼の隣で笑顔をふりまいていた。

 隣の男の子には頬を寄せる程にくっついておりお互いの親睦の深さも伺える。


 その写真の説明書きには、


 愛娘ルーシャとカルフ家の長男、ハイドとの一枚。


 日付は392年9月14日。

 それは、私の誕生日の時と同じ日の写真だった。


 「これ……やっぱり彼が……」


 息を吸い込み、彼の名前をゆっくりと呟く。 


 「ハイド、………ハイド・カルフ。

 やっと見付けたよ……あなたの名前……」


 涙が再び溢れた。

 忘れてしまった彼の名前を……。

 私はようやく見つけられたのだ。

 カルフ家、その家系が私の家と以前関係があった事が分かった。

 あとは時間の合う時にでもお母様とお父様に彼が今どこにいるのか聞いてみればいい……。


 「やっと、会えるんだね……ハイド……。」


 私が感動で泣いている間、侍女は無言で私を優しく抱きしめてくれた。


 ある程度気持ちが落ち着き、私はダメ元ですぐにお父様に電話を掛けてみようと思った。

 彼の家系、そして名前も分かったのだ。

 そして私が小さい頃に交流があった事も。

 たがらこそ、一早く知りたかった。

 例え、どれだけ遠くにいても多少の無理をすれば長期休暇を利用し彼に会い行けるはず。

 高鳴る鼓動に、電話越しからでも伝わりそうな程。     

 私は、自分こ端末を手に取りお父様に電話を掛けてみることにする。


 「どうしたのかね、クレシア?

 お前から電話をよこすなど珍しいな?

 しかし済まないが、私は今仕事でな……。

 近い内に休暇は取る、だから……」

 

 「ごめん、その忙しいのは分かってる。

 ねえ、お父様……?」


 「何だ?」

 

 「一つ、聞きたい事があるんです。

 私達の家と昔親交のあったカルフ家について」


 「っ……、ほう…?

 それがどうかしたのかね?」


 「その………、お屋敷にあったアルバムの中にその家の長男だったハイド・カルフって男の子。

 その人と私が写っている写真があったの……」


 「そうか……」


 「お父様、彼は……、ハイドは……。

 カルフ家は何処のお方なの?」


 「…………」


 返答はない。

 僅かな吐息、何か伝えにくいことでもあるのか?

 しばらくしても、お父様は無言で何も返さない。


 「お父様?」 


 私はお父様に再び問う。

 それから少しの間が空くと………。


 「………カルフ家。

 いや、ハイド君は今から十年程前に一家共々火災に巻き込まれてしまってね、とっくの昔に亡くなってしまったんだよ」


 「えっ……亡くなった?」


 「そうだ……。

 今まで黙って悪かった……。

 その、お前が悲しむと思ってこれまで私達はお前に隠してずっと黙っていたんだ……。

 交流のあった際の記録も処分したはずだったのだが

 本当に済まない……」


 「嘘……そんなの……」


 「私はまだ仕事がある。

 本当に済まないクレシア、後でちゃんと母さんと共に君に説明する機会を設ける。

 だから、本当にすまなかったな………」


 そして、お父様への通話が途切れた。


 何も言葉が出ない……。


 彼が既に亡くなっている……、それも十年前に?


 夢の中で私と約束を交わした男の子。

 あの人は、とっくの昔に死んでいた?


 全身の力が抜け、その場に座り込む。

 思考が、事実を理解する事を拒んでいる……。

 

 突然突き付けられた、死……。


 それは、ようやく掴んだ手掛かりを、夢を、願いを、その全てが瞬く間に崩れ去っていく……。


 『僕も必ず会いに行くから……』


 あの時の言葉は決して現実になることは無い……。


 彼は既に死んでいるのだから。


 「私……、何の為に……?」


 膝から体が崩れ力が抜けると、涙が止まらなかった。

 泣いたところで、戻ることはない。

 

 この首飾りをくれたあの人は、もう二度と私の前には現れないのだから………。

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