第三十八話 賑やかな昼食
帝歴403年 8月6日
午前の授業を終えると、いつものように俺達は一同が食堂に集まって昼食を共にしていた。
俺の目の前にはシルビアとルーシャが仲良く隣合って座り、俺から見てルーシャの右側にはいつの間にか姉さんまでもがいたりする。
そして、俺の右隣にはクレシアが座っており、その間にリンがテーブル上の俺の昼食を今まさにつまみ食いしようとしていた。
昼食の時間は楽しく流れていき、俺達の話題は遂に明日へと控えている長期休暇についての話題である。
この長期休暇というものは本来、学院に在籍する生徒等が遠く離れた故郷へ一度帰省し家族や友人達と会う為の物であるが………。
今となっては帰省よりも休暇の意味合いが強くなっているようである。
生徒同士で海外へ旅行とか、学内での催事に向けて生徒同士で合宿だったりと楽しみ方は様々だ。
まぁ、学院からは結構な量の課題を課させるらしい。
「ねえ、シラフ達は帰省とかしないんでしょ?」
ルーシャが俺と姉さんに帰省をするか否かに対し話し掛ける。
まあ学院に編入してまだ半月程。
だから帰省はしばらく先の話になるはず。
早くても、年始の教会関連の催事の来賓辺りか?
「まあ、そうなるよな……。
まだ編入して半月くらいだし」
「そう、私も帰省はしないからいいけど。
でもこれから長期休暇に入るからね………。
シラフは何か予定あるの?」
「闘武祭に向けて特訓だよ。
姉さんは出ないらしいけどさ」
「だね、あの祭りにはそこまで興味無いかな。
強い人達が居るって聞くけどね」
「よく言うよ、八席を倒しておいて」
「そうですよ、シファ様なら優勝間違いなしなんですから出たほうが良いに決まってます!」
ルーシャが姉さんに向かって出場を催促するも、姉さんは苦笑いを浮かべる。
まぁ、この前の試合で現八席であるラノワとの試合であれだけの大惨事を引き起こしたのだ。
確か、あの後学院側から直々に祭への出禁が言い渡されちゃったとかこの前言っていたくらいである……。
「まあそうだけど。
私はまぁ、今回は静観してるつもりだよ。
騎士団の指南役というか、一応大人の部類に居る私が現役の学生に混じって戦うのは大人気ないからね。
でも、シルちゃんは今回闘武祭に出るんでしょ?」
「はい、色々あったとはいえ仮にも神器に選ばれた限り、ちゃんとその使命を果たしたいと考えていますから。
ですから……その、可能な限りは私頑張りたいと思います!」
と、彼女は意気込み腕を軽く振り始める。
やる気はかなりありそうだ。
「シルビアは真面目だね、流石私の妹。
そこがとても可愛いんだけど」
「で、そういうルーシャはどうなんだ?」
俺はルーシャに質問をしてみる。
妹が鍛錬を積む間に彼女は何をする予定でいるのだろう。
まぁ、彼女な学院内において生徒会という国の内政を取り仕切る組織の一角を担っている。
故にそちら方面の用事で多忙なのだろうと思っているのだが……。
実際、祭りが近づくに連れて彼女の帰りは少しばかり遅くなる事が増え夜の送り迎えが増えてきたくらいではある。
「私?私は……特に無いかな。
学院の仕事は多少あるだろうけどね………。
それじゃあ、クレシアは何か予定あるの?
私と違って、何処かに所属してる訳じゃないしさ?」
ルーシャは話をすぐに逸らし、クレシアに話題を変えた。
まぁ仕事の話が立て込んでるから、考えたくもなかったのか、実は特に予定がないから逸らしたのか……。
詮索を控え、俺はクレシアの返答を待っていると少しあたふたとしながらも彼女は小さな声で答える。
「私は……帰省って言っても家はここにあるから……。
でも一応やることは考えてはあるよ、うん」
「へぇ、一体何の予定があるのクレシア?」
「あの、その例の幼なじみを探したいと思ってる。
屋敷内でと何か手掛かりが無いかなって思って、お父さん忙しいから直接聞けないから自力で頑張ってみようかなって……」
「そっかー、なるほどね。
ねえ、クレシア?
私もその人を探すの手伝ってもいい?」
「いいけど、必ず何か分かるとは限らないよ?
お父様から直接聞けたらそれで終わりだし……」
「いいの、別に予定無いから」
なるほど、ルーシャの予定は特に無いらしい。
しかし、クレシアの言葉を聞いて俺は少し驚いた。
「クレシアに幼なじみがいたんだな。
どういう人なんだ?」
俺はクレシアにその人の事を尋ねると、少し考えながら返事を返す。
「その人とは、ルーシャとシラフみたいに小さい頃からずっとって関係じゃないの。
両親の仕事の関係で少し交流があったくらいで、小さい頃に少し関係があってからそれきりで……。
多分、前に会った時から十年くらいは経ってるからさ、お互い会ったところであんまり覚えないかもしれないけど、いつかもう一度会いたいってそう思ってたんだ」
十年、それだけ前に別れた人物と彼女は再開しようとするのか……。
彼女かその人物に必ず会えるかは分からない、
しかし、会おうとする彼女の意志は応援したいと思った。
「そうか、その人に会えるといいな」
「うん、必ず会えるかは分からないけどね」
「だそうだ、リン。
それで、お前は特に予定は無いんだろ?」
そして俺はリンに唐突話題を振る。
近頃余り会話をしていなく、その存在を忘れそうになっていたが。
「そうだよ、何か文句ある?
みんなが長期休暇の間も可愛い妖精リンはぐうたらですよ……?」
リンは少し拗ねている様子だ。
機嫌はすこぶる悪いと見える。
流石に仕方ないと思い、俺は1つ提案をした。
「そうかい。
じゃあ、暇なら特訓手伝って欲しい。
時間を計るくらいなら出来るだろ?」
「別にそれくらいなら構わないけど……」
「素直じゃないよな、相変わらずさ……」
リンは少しご機嫌斜めの様子。
後で機嫌を直させないといけないなと思いながら会話は進み気付けば昼食の時間は過ぎていった……。




