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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第二章 炎の覚醒編 序節
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第三十四話 稽古裏での会話

 それから色々あって、ルーシャから話を聞いたのか間もなくしてクレシアも知る事になる。

 経路としてはルーシャが呼んだらしいが。


 そして今日、俺や皆を交えての鍛錬をすることになった流れである。

 しかし、鍛錬を始めて本日4日の彼女にはかなり辛そうな様子。

 まぁ当然だろう。

 自分も始めた当初は今の彼女に言えた口では無いほどに早々に倒れた程である。

 そして現在、当のご本人はルーシャから渡された水筒を飲んでゆっくりと休んでいた。

 息が上がり、ルーシャに肩を寄せて今にも倒れそうなほどに疲れている模様だ。


 まぁ、始めて間もない時期だから疲れるのは当然。

 素振りはともかくとして、簡単な走り込みから取り組むのが良さそうかもしれないと思う。


 「シラフも大変だね?

 今度は後輩に指導をしないといけないなんてさ」


 俺は離れて一人で休憩していたが、クレシアが俺の方に来て隣に腰掛けていた。

 まあ、一人で休むよりは話し相手がいる分有り難いまだろう。


 「まぁ仕方ないよ。

 シルビア様も、そう遠くない内に恐らく十剣になるかもしれないんだからさ。

 神器に選ばれれば身分は関係ない、それが十剣という者の定めみたいなものだよ」


 「ふーん。

 シラフは十剣以前の身分はどうだったの?」


 「身分的には、姉さんと同じ区分だよ。

 騎士なのか貴族なのか、正直未だに姉さんの立場がよくわからないから、俺もよくわかってない」


 「そうなんだ」


 「クレシアはどうして俺達の鍛錬に来たんだ?

 こんなの、普通に見てても暇しかないだろう?」


 「うーん、別にそうでも無いかな………。

 シラフが剣を振っているのを見てるとやっぱり騎士なんだって思ったよ。

 そこまでして貰えるルーシャが少し羨ましいなぁ」


 「それは光栄だが、まだまだ俺は未熟だよ……。

 他の十剣達は俺なんか比にならないからな」


 「そんなに強いの?」


 「当たり前だ。

 十剣一人で国の軍隊とほぼ等しいと言われているんだからな。

 とは言っても全員が戦う人達じゃない、何人かは公務やらの専門で神器の力を振るう機会の方が珍しいくらいだが。

 ただ、サリア王国含め、四国が平和協定を結んでいる理由は神器使い一人の戦力があまりに大きい。

 現在サリアにいる十剣は俺を含めて三人。

 そして今回新たな契約者となったシルビア様、そして例外的な姉さんを除いて四人にいる事になるのかな」 


 「十剣の内の四人が一つの国に、そして例外的にシラフのお姉さんがいるんだ……。

 そう言われると確かに不思議な国だね。

 サリア王国はさ」


 「そうかもしれないな……」


 身体を少し休めたところで俺はゆっくりと立ち上がり、椅子に立て掛けたおいた練習用の木剣を軽く手に取る。 


 「俺はもう少し、鍛錬を続けるよ。

 例の祭りに出なきゃいけなくなりそうだからさ」


 「そっか、シラフもシルビアさんも頑張ってね」


 そして俺はいくらか離れて距離を取り、軽く一呼吸置くと黙々と素振りの鍛錬を再開した。

 


 シラフが鍛錬を再開し始めた頃、私はシファ様と妹のシルビアと会話をしていた。


 「シラフは相変わらずだね……。

 もう少し休めばいいのに」


 「確かに、そうかもしれないですよね……」


 私とシファ様はシラフの鍛錬に見入っている。


 「シルちゃんはどう?

 少しは体力ついてきたかな?」


 シファ様が話し掛けると、シルビアは少し残念そうに弱気な返事を返す。


 「始めたばかりなので実感はありません。」 


 と、自信なさげだった。

 まあ、始めてすぐだから仕方ない。


 「まあ、そうだよね……。

 続ける事が大事だから、怠らずに頑張ってね」


 「はい、付き添ってくれたシラフさんの為にも。

 私、もっと頑張ります」


 「その意気だよ。

 あ、そういえばさ?

 思ったんだけどルーシャはシラフとどうなの?」


 「どうなの、とは?」


 「いや、ほら?

 シラフと何か新しい進展とかはあったのかなって?

 確か二人は同じ部屋でしょ?

 少しは進展があったりしないのかなぁってね」


 シファ様は私が彼に片思いをしている事を知っている。

 いや、この場にいる当の本人以外は既に知られているのが事実である……。


 「いえ……その、特に何もありません。

 現状維持という感じです……。

 私も学院での生徒会やらの仕事で立て込んでて、帰宅してもお互いが話せる間もそこまでなくて……。

 シラフが用意してくれた夕飯を食べたら、そのまま入浴を済ませて寝るだけって生活なので………。

 進展も何もないですね」


 「姉様は相変わらずですね………」


 「まあ、そんなに焦らなくていいと思うけどね……。

 でも、何もしないままだと後で苦労するよ?

 シラフの周りは結構狙ってる人が多いと聞くしさ。

 向こうの屋敷にも既に何回か縁談の話は来てたくらいだし、お屋敷で働いてる侍女もシラフ目的みたいだからね。

 ルーシャもルーシャでサリア王国の第2王女って立場だけど一応シラフだって、十剣って立場だからね。

 立場や地位としては王族の方が上かもしれないけど、十剣の立場も相応にあるというのは頭に入れた方がいいよ?」


 「そうですか……。

 シラフ、やっぱり私の思った以上に凄いんですね」

   

 「私としては、彼の将来は彼自身が決めるって立場だから中立の立場を通すけど………。

 遅からず遠からず、何かしらの動きはしないと今のおままごとに近い関係が壊れてもおかしくないとは思うかな?

 両親の特例の元、一応正式に専属として置いてるけど十剣としての役割を重視するならルーシャの専属から彼を外す事だってあり得るからね。

 その判断は、十剣団長のアストか両陛下の判断になるとは思うけど」


 シファ様の言葉が胸に深く刺さった。

 一番近くだからこそわかる現実。

 自分の地位や立場もあるが、目の前の彼も私と同じかそれ以上の重圧を背負っているのだ。

 幼い頃に交わした関係がこの先も続くとは限らない。

 私はサリアの王族として

 彼は十剣の一人として、この国を今後の世界を担う一翼としての役割があるのだから。


 「そうですよね。

 私、このまま今の関係が続けばって思ってました。

 でもやっぱり、難しいんですよね。

 分かってはいるんですけど、でも学院で一緒に過ごしてると忘れたくなるんです。

 お互いの地位とか立場を忘れて、今だけしか過ごせない関係の時間に甘えたくなって……」


 「ルーシャ姉様……」


 「…………」


 「シラフがどう思ってるのかを直接聞くのはやっぱり怖いです。

 それでもやっぱり気になるんだよね………。

 ちゃんと彼に相応しい主として振る舞えているのかどうか、彼に振り向いてくれるくらい魅力的になれたのかどうかなって……。

 でも、いざ聞くのはやっぱり怖いですね……。

 拒絶はしないだろうけど、私の立場が立場だろうから私の言葉を受け入れてくれるとは思うけど、多分私の望んだモノにはならないと思うから」


 「うーん、まあ……確かにね……。

 当の本人であるシラフの気持ちはどうなのか知らないけど、ルーシャの言葉をそのまま受け取るだけ受け取って自分の意思とかはあまり考えなさそうかなぁ。

 それに、あの子の好みもイマイチ知らないんだよね?

 あの子はどんな人が好みなのかなぁ……」


 「シファ様も知らないんですか?」 


 「まあね。

 私もあの子の事全部把握してる訳では無いからさ」


 「そうなんですか?」


 「うん。

 あ、でも……リンちゃんなら?

 私より近くでシラフを見てたから知っているかもしれないよ。

 聞けば何かしら分かるかもね」


 そういうとシファ様はリンを指でつつき起こす。

 眠そうなリンの様子は昔から可愛らしくまるで精巧なお人形のように見えた。


 「ねえ、リンちゃんはシラフの好み知ってる?」


 リンは自分の目蓋をこすりながら私達の方を見る。


 「……好み?……何の事?

 食べ物とか?」


 「ううん、そうじゃなくて……、

 シラフの好きな女性についてだよ」


 リンはシファ様の言葉に対し腕を組んで考える


 「あー、シラフの好みってそっちの方かぁ。

 うーん……私もあんまり知らないかな」


 「そう、まあ仕方ないか……」


 「でも、けっこう前にシラフがそれなりに気にかけてた子が居たんだよ……」


 「気にかけてた子?」


 「ルーシャより前にもう一人だけ幼馴染がいたんだ」


 リンのそんな言葉に私は驚いていた。

 そんな人の存在を、私は彼から聞いた事がない。

 いや、聞く機会が無かったというかそもそもしなかったからだ。


 そして、目の前の小さな妖精はかつて彼が気にかけていたという人物について語り始めた。

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