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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第二節 予言の歌姫と十の剣
290/324

騎士として、人として

帝暦404年1月10日

 

 「諦めろ、お前は勝てない」


 既に満身創痍の身体、これ以上無理をすれば死ぬかもしれない程に追い詰められているにも関わらず、目の前の彼はその闘志が消えていなかった。


 「何だよ、舐めてるのかよ……。

 その顔、その目……そんなにオレは弱いかよ!!」


 自分の弱さを理解してるからこそ、敗北が分かっているにも関わらず戦いを続けようとする。

 諦めたなくない何かが彼の中に存在し、ソレはかつて俺自身が学院での日々で何度も痛感していたモノと似通っている。


 「これ以上の醜態を晒してもまだやるのか?」

 

 「醜態?

 ふざけるなよ!!

 オレはまだ負けてない、まだ戦える!!」


 そう言って、彼は震える身体を動かそうと抗う。

 まるで鏡を見ているかのようだ。


 「ある意味、似た者同士か」


 終わらせよう、これ以上やったところで無駄だ。

 しかし、相手はこの場を引かない。


 諦めさせる為に、己が何をするべきか。

 そんな事は既にわかり切っていたが……。


 躊躇えば、余計に長引くのもまた事実。

 これ以上力の差を見せつけても、彼にとっては何の意味もない。


 俺が姉さんに無謀に戦いを挑み続けたように、目の前の彼もまた同じなのだろう。


 この戦いを終わらせる為に、俺は剣を振り降ろす。

 片腕一つでもへし折れば、流石にこの場は収まるだろう。


 その瞬間、激しい閃光と共に振り降ろした剣が止められる。


 「もう十分でしょう、シラフさん。

 勝負はもうついてるでしょう?」


 「シルビア様、何故ここに?」


 白銀の輝きを放つ長い髪、天人族を彷彿とさせる神々しさすら感じる白き衣に身を包んだ彼女がそこには居た。


 「あれだけの騒ぎを起こせば、流石に目立ちますよ。

 さっきの炎の柱で、王都全体が揺らいだと言ってもいいくらいですよ。

 加減ってモノが無いんですか?」


 「こうでもしないと引かない相手だった。

 まぁ、それでも無意味だったからこうしてケジメを付けようとしているんです。

 腕の一本でも折れば流石に諦めるでしょう」


 「そこまでする必要はありません。

 それに、レティア姉様の婚儀が近い中大きな騒動を起こされると色々と大変なんです」


 「ごもっともな、お言葉で」


 「教皇様も居られる辺り、何か訳ありなのは理解しますがこの場は私に免じてお控えしてください。

 お願いします、彼の処罰に関してもサリア王国第三王女であるこの私が責任を以て対応致しますので」


 「彼と、何処かで面識が?」


 「そういう訳ではありませんけど……。

 その、なんというか色々と面倒事が絡んでいるみたいなんです。

 そこに、あなたも無関係って訳ではありませんが……。

 とにかくです!、この場は私の顔を立てて剣を収めて下さい、お願いしますシラフさん!」


 「王女様にそこまで言われるなら、構いませんよ。

 それに、こうしてる間に向こうは気絶してますが」


 「………彼、アルフレッド様のお連れさん方もこの近くに?」


 「ええ、観客達に紛れて見物しているかと」


 「わかりました」


 その言葉を合図にお互いが深層解放を解き、武装を手放す。

 肩の荷が降りたのか、慣れない行動故にシルビア様の力が抜け俺の方へともたれかかってくる。


 「おっと………」


 「すみません、私まだあの姿には慣れなくて……。

 その、シラフさんみたいにそこまで魔力は多くないみたいなので数分維持するだけで手一杯です」


 「…………」


 彼女のその言葉に、俺は返答に悩んだ。

 彼女はこの国の王族の1人。


 学院では彼女の意向を組んで、神器を使用出来るように訓練を許したがこのまま続けるのはやはり問題が多い気がする。


 年齢は俺自身と大差ない。

 俺は昔から武術の指南を受けてきた、しかし目の前の彼女はここ半年程度のモノ。

 神器の影響を受けたモノとはいえ、彼女自身にもその才覚が元々備わっていたのだろう。


 そして、俺と同じ領域に至っていている。


 深層解放、世界の行方を左右する力を。


 「シラフさん……?」


 「やはり、間違いだったのかもしれませんね」


 「え?」


 「あなたに神器を扱えるようにしたこと。

 それがあなたの意思であろうと、俺があなたの意思を汲んだ事は今にして思えばやはり間違いだったんでしょうね」


 「………」

 

 「あなたに神器を使わせるべきでは無かった」


 「何を言って………」


 「シラフ先輩!!」


 「アルフ!!」


 シルビアの返答を遮るように、向こうで試合を見物していたアクリ達が駆け寄ってくる。

 気絶した彼の方には、彼の仲間が駆け寄り容態を心配していた。


 「シルビア様まで急にどうしたんですか?」


 「あ……えーと、騒ぎが少し気になったので。

 行ってみれば、このような事態だったので……」


 「あー、本当にすみません。

 本来はかなりお忙しいところですよね、お姉様の結婚式で色々と仕事が立て込んでるでしょう?」


 「いえいえ、別にそこまで多くはないですよ。

 私やルーシャ姉様は、少し場に顔を出してればいいって感じなので………。

 私達なんかよりも、本人達の方が色々と大変ですから……」


 そう言うと、俺達の方から離れて気絶しているアルフレッドとその仲間の方へとシルビア様は歩み寄る。


 「そこの彼とはどのような関係で?」


 「っ……!えっと、私達は彼と同じ班の者です!」


 「彼女はフィリメル、そして私はこの班を率いているロダリス・アーガレドと申しますシルビア王女。

 この度はお手を患らわせてしまい大変申し訳ありません。

 その、彼にも色々と事情がありまして……ですからどうか彼、アルフレッドに対しての寛大な処置を………。

 彼1人で足りないのでしたら、私がその責任の一切を引き受けますので、どうか何卒………」


 ロダリスと名乗った大柄な男は、シルビアに膝を突き頭を垂れて懇願する。

 その隣で、気絶した彼を抱えながらフィリメルという彼女も頭を必死に下げている模様。


 そこまでしなくとも、シルビア自身に彼等をどうこうする直接的な権利はないはずだが……。

 俺が何かを口出しするのも、仮にも王族である彼女の前では控えた方がいい気がした……。


 そして当人の方に僅かに視線を向けると、今まで見たことないような冷たい表情を浮かべ威厳を漂わせていた。


 「後程、王国騎士団から正式な処分が下るでしょう。

 後程、クラウス様がそちらへ向かいますので正式な処罰は彼から受けるように。

 アルフレッド・スルトア……。

 彼の名で間違いありませんよね、ロダリス?」


 「はい、このアルフレッドがまた何か……」


 「………、彼が起きたらお伝え下さい。

 御父上からの贈り物があると、では……」


 シルビアはそう言うと俺の方を僅かに見やると、一礼し神器の光が放たれる。


 再び深層解放を使用し、光の衣に包まれるとそのまま王宮の方角へと飛び去ると彼女の使う圧倒的な力によって人々は魅了されていた。



 「間に合ったかなぁ、シルビア王女………。

 今、彼に死なれては困るからね………。

 そうだろう、クラウス殿?」


 王宮の窓から彼女の向かった広場の方を見やる。

 先程の炎によって、穿たれた空を見やりながら笑いながらこちらに話しかけてくる長髪の男。


 シルフィード・アークス、サリア王国騎士団ヴァルキュリアの団長を務める、王国最強を担う騎士の1人だ。


 「優秀な彼女の事だ、恐問題はない。

 本来は私が出向くべきだったが、あの距離の移動を神器で行うのは流石に厳しい。

 全く、恐ろしい逸材を生み出してしまったよ……」


 「確かに、そろそろ彼女に専属を付けようみたいな話があったんだけどさ?

 この分だと自分の身は自分で守れそうだ。

 それにさ、例の彼みたく問題を引き込む体質じゃないみたいだからね。

 しかし、あの第三王女がまさか彼の許嫁とは………」


 「何を企んでいるのだろうな、アイシュ殿は……。

 それで、向こうの仕事はどうだ?」


 「顔が効いてるので、深入りは難しい。

 一応、幹部層との接触は叶っているがな………。

 一体何を企んでいるのやら?

 組織の詳細な規模の把握までは上手くいかないかな。

 まぁ、わかってる範囲で言えるのは……、そうだなぁ」


 「…………」

  

 「モーゼノイスという子連れの奴、全く生気を感じないんだよね。

 その割には、よく口が回るというかさも生きてるかのように振る舞う。

 子供の方は相変わらず何を考えてるか分からない、この前お菓子あげた時はそれなりに喜んでたけど……。

 しかし、王女様達の話が本当ならかなり不味くないこの案件?」


 「…………だろうな」


 「つまりだ、僕の義姉と君の奥さんを手に掛けた者達はこのサリアの人間という事になる。

 認めたくはないが………、この場に居ないアストのお爺さん含めて、サリアの一翼を担う俺達は先代の陛下とクローバリサの手によって殺された訳だ。

 困ったものだねぇ……」


 「口ぶりの割には、珍しく背筋が伸びてるな?

 いつもの軽口は口先だけか?」


 「そういうんじゃありませんけど…………。

 まぁ、この件に関しては後でケジメを付けるとしてだ………。

 ヴァリスの国王、アレはもうダメだ。

 向こうは本気で俺達サリアを潰そうとしている。

 シファさん相手もお構いなしの模様だ」


 「戦火は避けたいところだ。

 婚礼も近いのに、荒事が目立つとサリアに悪評が立ってしまうだろう。

 この機会に、他国との友好条約締結の話も幾らか舞い込んでるんだ。

 特に、今まで音沙汰が少なかったヤマトとの交易が増えるのは大きい。

 近年軍備増強が目立つ極東三国への圧力にもなるからな……」


 「圧力って、そんなのシファさん1人で問題ないでしょう?」


 「そうも言ってられない。

 近年の魔導工学の発展は著しいモノだとシファさんは学院への視察の際にそう感じていたらしい。

 遅かれ早かれ、神器に迫るであろう新兵器が生まれる可能性が高いともな………。

 例のホムンクルス然り、あれだけのモノが数百数千、数万と来ればサリアのような小国では厳しいだろうよ」


 「あー、まぁうちも魔導工学に関してはかつて帝国と共同研究していたが、やはり今のラークと比べられると流石に厳しいだろうね。

 アスト、クラウスみたな戦闘系の十剣は貴重だけど、アストさんに至ってはもう現役の引退は近いだろうし。

 幾ら神器が優れてるにしても、扱うのは人間一人。

 魔導工学によって量産化されたそれ等と比べたら、数の暴力でなんとでもなるからね」


 「そうだな………」


 「最近なんかあったのかい、クラウス?

 こっちが言えたモノじゃないけど、サリアに戻ってから調子が悪そうじゃん?」


 「シファさんの逆鱗を久々に垣間見た。

 あまりの恐ろしさに、この歳ながらも恐怖で竦んでしまったよ。

 君のように、サリア最強と民から慕われていた私がこのザマだ。

 それに、学院での彼の成長は私にとってとても感慨深いものだったよ。

 彼女に口応えして、自分の意思を貫き通した強さと覚悟……。

 同年代だった頃の私には出来なかった偉業だ……」


 「…………」


 「少し前の話に戻るんだが、彼についてどうする?

 王女姉妹の話、公に知られるとかなり不味いのは既知の事実だがそれ以上に、彼の家族を殺したのは我々サリアの人間という事になる。

 それも彼の仕えるサリア王家の人間がだ……。

 そして、我々のエゴで都合よく利用しようと画策したツケが今にきて回っている。

 正直最悪の状況だと思う」


 「どうするって言われても、彼の実力はもう俺達じゃ手に負えない次元なんだろ?

 クラウスで無理なら、僕も無理無理。

 シファさんと張り合える化け物相手に、正面から喧嘩売る馬鹿な真似はしたくない。

 そっちの方で、彼の実力はわかってるんだろ?」


 「まあ、あの炎を思い返すだけで今も手が震えるよ」


 「…………」


 「彼はもう、一国は愚か世界の行方を好きに出来る。

 唯一救いとなってるのは、彼自身にまともな倫理観が備わってる事。

 これに関してはシファさんやルーシャ王女、そして君の娘であるテナ君のお陰だろうな……」


 「それは何より」


 「でも、そのまともな倫理観が裏目に出つつある。

 考えてもみろ、幾ら強いとはいえ彼はまだ未熟な子供だ。

 そして、彼は何より失う事を恐れている。

 家族やそれに準じる者達を害する存在は、何があろうと立ち向かう強い覚悟を持っている。

 そんな強い正義感のあり方が、さっきの王女等の話で大きく変わってしまう可能性があるんだ」


 「……………」


 「彼の家族を殺そうした者達は、今まで彼の側にいた人間だった。

 我々のようにある程度の分別や理解が出来るならいいが、さっきも言った通り彼は子供だ。

 子供にとって、家族は唯一無二の存在。

 彼の正義感は、彼にとって大切な存在を失いたくないが為に働くもの。

 それが今この瞬間ひっくり返された場合、彼は俺達サリアの敵となる。

 シファさんに匹敵する脅威、先程の炎が王都を灰燼とする未来が待ち受けているだろうな……」


 「流石に、そこまではしないと思いたいが……。

 実際どうなの、彼を見た感じ?」


 「当事者の先代国王に会わせてはいけないだろうな。

 会わせたら最期、この国は滅びの道を辿るだろう」


 「まあ、僕もあの人は苦手な方だな。

 先代の汚点の後始末で、今の陛下等が苦労したのも見てきたし、やっとかつての信用を取り戻しつつある現状だ。

 だがまぁ、そう簡単に先代国王の禍根が消えた訳では無い。

 存命である以上、彼本人は愚か現役の陛下等に対しての不信感が強いのが事実。

 この手の不評を払拭する良い機会として、今回のレティア王女の婚約がある。

 相手は、あの皇帝の血を引いてるがこの際関係ない。

 今回の婚礼はサリア王国が変わる為に必要不可欠なモノである事に変わりはないからね。

 何があろうとも、今回の婚礼は無事成功させなければならない。

 それが未来のサリアの為に必要な事、そうだろう?」

  

 シルフィードはそう言うと、外の方を見やりながらぽつりと呟いた。

 

 「クラウス、僕はね……。

 正直この国は一度滅ぶべきだと思ってるよ。

 現状の王政が続けば、この悪循環を抜け出す事は出来ない。

 新たな指導者の候補に、君やその近辺の者達を推薦して新政府の体制を整えるべきだと思ってるんだ。

 さっきも言った通り、やはり先代の残したモノがあまりも問題が多すぎるんだよ。

 一代でどうこう出来る問題じゃない。

 現陛下、その次や次とどこまで影響が響くか計り知れない程だ。

 だから一度全てを取り払い、新たな指導者を立てる必要がある。

 あくまで、僕個人の意見だけどね」


 「ソレをシファさんが受け入れるとでも?」


 「ほぼほぼ受け入れないだろうね。

 サリアの王政は、彼女がこの国を操作する上で必要なハリボテなんだ。

 王の玉座に、誰でもいいから王家の血筋の人間がそこに居れば良い。

 むしろ、先代のような無能である方が彼女にとって遥かに都合が良かったんだ。

 だから、帝国の崩壊や先の疫病の騒ぎでこの国は一気に瓦解した。

 埋め合わせをするように、責任を取らされたのが彼の父親辺りの王が快く思わなかった彼等の存在。

 しかし、彼女はソレを止めはしなかった。

 唯一神器に選ばれた彼、シラフ君もといハイド・カルフを除いて彼女はそれ以外の全てを見捨てた。

 そうだろう?」


 「あの時は、元々彼女が引き取る予定だったよ。

 その場に居合わせたのは私だからな、ソレに元々あのような事態を想定はしていなかった。

 アストさんも、彼が自分の血縁者だと知るのはかなり後だった。

 だから、シファさんは見捨てた訳じゃない。

 彼しか救えなかったからこそ、その責任を取ろうとしたんだ。

 私やアストかん自身も、そういう彼女の責任の取り方で救われた者だからな……」


 「あくまで、彼女の肩をもつんだな」


 「一応、家族ですからね………。

 ソレを言えば、アストさんに取っても同じ。

 仮にどんな意図があろうと、私達は彼女に救われた存在。

 だから、可能な限りは彼女の恩義に報いたい。

 ソレが非常に危うい事を承知の上でもな……」


 「人をイヌかネコと同じようにしか見えないあの人に尽くすお前も、ソレと同然だな」


 「お互い様だ。

 騎士団長なんて忠犬もいいところだろうに」


 「確かにな」


 窓の外を見ながら、ため息をつく。

 不安要素が多いながらも、今はこの僅かな平穏を噛み締め、綺麗に晴れたあの空を見つめぽつりとふと思った事を彼に呟いた。


 「なぁ、シルフィード?」


 「何だ?」


 「もしも、今この瞬間にシファさんが居なくなったらサリア王国はどうなると思う?」


 「………、僕としては彼女の死に関してを身内のみに伏せておくかな。

 その間、アストのとこのティルナちゃんに変装でもさせて上手く彼女のやってきた裏の舵取りを操作する……。

 最終的には王国の立て直しの礎にでもしようかな。

 それがどうかしたかい?」


 「いや、まぁお前ならそうするか……」


 「十剣のお前としては違うと?」


 「………、私は十剣の制度を無くしたい。

 そうすることで、神器を巡った醜い貴族社会の闇を幾らかマシに出来るんじゃないかと思ってね」


 「なるほど、確かに……。

 かの十剣が無くなれば幾らか僕のような境遇の人間が減るかもしれないな……。

 まぁ、無理だろうけど」


 「そうだな」


 「それじぁ、俺は向こうに行くよ。

 そろそろアーゼシカからの呼び出しがあるかもしれないからね」


 「確か、最近入った腕利きの魔術師だったか?」


 「もう3年くらいだったかな。

 なんか見たことある見た目してるけどね……。

 上は、ソレを見越して彼女を利用してるのかもね。

 彼女自身も何か企んでるかもしれないけど」


 「……で、何の要件で呼ばれてるんだ?」


 「簡単に言うと人探し。

 ヘリオスって女を探して欲しいんだと、まぁ目処はついてるが正直に話すべきかなぁ。

 どのみち探り当てられそうだから、交渉材料に使えないんだけどね」


 「ヘリオス……」


 「そ、なんでもタンタロス殿の知人だそうで。

 世間に疎くて、何考えてるのか分からない奴らしい。 まぁ、何か裏がありそうだけど」


 「根拠は?」


 「知人とはいえ、普通はさ女一人に魔道士団や騎士団の手を借りると思う?

 正直、何かあるのは確実かな。

 ま、また何か分かったら可能な限り連絡するよ。

 それじゃクラウス、シルビア王女に宜しく頼むよ」


 シルフィードはそう告げると、私の元から歩き去る。

 

 思うところが多いが、まずは目の前。

 数日後に控えた結婚式を無事に完遂させよう。


 それが私のやるべき仕事だ。


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