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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第二節 予言の歌姫と十の剣
270/324

因果に紡がれし者は

帝歴404年1月10日


 昨夜、自らを異時間同位体のシトラだと称した包帯の彼女との話を続けた後、旅の疲労があったのかこちらの連れであるシトラの方が就寝に入る頃合いで、話はお開きになった。

 

 翌日、いつものように朝早くから彼女等の朝食の支度をしようとすると、既に先客がテーブルの上に腰掛けコーヒーを嗜んでいた。


 「やぁ、いつも通り早いお目覚めだねラウ?」


 「まさか、お前の方が早起きするとはな」


 先客は例の異時間同位体、未来のシトラである。

 包帯が甘く巻き付けられたのが、視界に入り僅かに気になるところだが………。


 「包帯、巻き直して貰えるかな?

 一人だと、やはり難しくてね。

 ここに来てからは近所のおばさんに少しだけ手伝ってもらってたりしたんだが……」


 「……羞恥心は無いのか?」


 「今更恥ずかしくなる程の関係ではないだろう?

 下着やら、朝の支度や着換えやら手伝わせていたくらいだからな?

 それに、今更君にこの姿を見られても別に気にしないさ」


 「分かった……、変えの包帯を持ってくる」


 「それと、寝室に青い小瓶があるからソレも持ってきて欲しい。

 包帯を巻く前に使う、痛み止めの塗り薬なんだ」


 「了解した、そこで少し待っていろ」


 「あと、新しいコーヒーも包帯の後に頼みたい。

 一人で淹れるのは、やはり難しくてね」 


 「了解した」


 それからすぐに私は、彼女に言われた小瓶の塗り薬と新しい包帯を用意し、暖炉の前に彼女を移動させ現在彼女に巻かれている包帯を外し始める。


 「………、興奮しないのか?

 仮にも異性の裸体だぞ」


 「そんな冗談を言うくらいなら、一人でやれ」


 「酷いなぁ、まぁ君はいつもそうだが」


 「………」


 次第に露わになる包帯の中から現れる黒い痣のような炎症の様子に、かつての海賊騒動でみた魔力中毒のソレを思い出した。

 しかし、彼ほどに炎症自体は酷く無いにしろ内蔵の一部にまで症状の侵食が進んでいるのが分かり、ここまで全身に行き渡っているとなると………。


 「どうかしたかい、ラウ?」


 「流石に手遅れだな……。

 ここまで酷く症状が経過していると治療は難しい………」


 「だろうな、だからその為の塗り薬だ。

 気休めにしかならないがね」


 「初期症状が見られた段階から治療はしなかったのか?」


 「勿論したさ。

 でも、向こうは魔力の濃度が高過ぎてね………。

 3重くらい魔術で結界を張ってこれときた。

 サンプルを採取するときも勿論直接は触れなかったが、採取した後の道具にうっかり触って片腕を取られたよ………あはは」

 

 「私のような者と違って、シトラのような人間では身体の再生は非常に困難な魔術だ。

 特に、四肢の一部全部となると高度な医療機器が必要となる……。

 ラークではそれが当たり前のように使えたが……」


 「私達は異物だからね。

 公的医療機関は利用出来ないんだよ。

 まぁ、だからこの傷のツケは当然の報いだ」


 「………そうか」


 包帯を外し終え、炎症の出ている幹部に例の塗り薬を塗布する。

 僅かに目の前の彼女は痛みに耐えるかのように、目を瞑っているが………。

 

 「痛むのか?」


 「薬が効くまでの間だ。

 一度使えば、一ヶ月くらいは効く。

 ただ、少々染みるのがキツイがね」


 「我慢しろ、すぐに終わる」


 「顔に使う時は、水で半分程度の濃度に変えて使って欲しい」

  

 「了解した」


 それから私は彼女の指示通りに、例の薬を彼女の身体に塗布し、新しい包帯を巻き直していく。

 包帯を全て巻き直し終えると、彼女はゆっくりと立ち上がり身体を伸ばした。 


 「ふぅ、あー痛かった。

 相変わらず丁寧な施術だ、学生時代はこうして色々と手当てしてもらったのが懐かしいよ」


 「………、コーヒーを用意してくる」

 

 「ああ、頼む。

 それと、包帯の件について。

 ありがとう……、本当に助かった」


 「………、当然の事をしたまでだ」


 「素直に人の厚意は受け取るモノだよ」


 「そうだな」


 それから私はコーヒーを二人分用意し、向かい合うように彼女に座る。

 薬が既に効き始めているのか、心なしか昨夜よりは表情が柔らかくなったように見えた。

 

 「こうしてまた、君の淹れたコーヒーを飲めるとは思わなかったよ」


 「私達が来ることはわかっていたんじゃないのか?」

  

 「来るのはわかっていた。

 だが、その時期がいつかは正確には知らなかったんだよ。

 だから、ここ2ヶ月くらいサリアに滞在していた。

 お蔭でお金はほとんど無いがね………、幸いにもここで医者紛いの真似事をして僅かな日銭を稼いではいるが」


 「医者の資格を持っていたのか?」

 

 「ああ、まぁ色々と便利そうだからね。

 一応、医者ってだけで多少の薬剤の持ち込みの融通が利きやすくなるんだからさ」


 「持ち運びが効くのは、そのごく一部だろう?」


 「私がそのごく一部って事だ。

 まぁ、名前や住所は多少ここに合わせて偽造したが」


 「その時点で違法行為が過ぎる」


 「禁忌を犯し、ここに来た時点で既に法のクソもないだろうよ」

 

 そう言うと彼女は、私の淹れたコーヒーを一口含み安堵の息を漏らす。

 

 「この味だ、本当に懐かしい……」


 「何処にでも売られてる市販の物なんだがな」


 「君の淹れたモノだからな。

 技術もあるだろうが私にとって多少意味合いが異なるんだよ」


 「意味合いが異なるだと?」


 「ああ、学生時代はこうして毎日のように君のコーヒーが飲めたからね。

 思えば、あの時が私の人生にとって一番色付いていたんだろうな……」


 「………」


 「君に魔術を教えたり、私生活で度々小言を言われたりしながらも、そういう時には常に君の淹れてくれたコーヒーがあった。

 本当に……、ソレが私にとって一番楽しい日々だった」


 「この程度の事でそこまで言う事なのか?」

  

 「君にとってのこの程度の事が、常にあるだけで私にとって非常に幸福だったんだ。

 それだけのことだよ」


 「そういうものか」


 「………、君はわざわざここに来てまで、今更何を求めている?

 あの人の研究資料を探るのもアリそうだとは思ったが……」

  

 「私の存在理由を求めて来たまでのことだ」


 「……なるほど。

 それで、ここに来て初めて見て驚いたんだが……、

 地下の研究室にあった冷凍保存されているあの女は一体何者だ?

 見たところ、ノエルさんの遺体という訳でもなく、我々の知らない未知の存在のようなんだが?」


 「アレなら確か、シンの妹分に当たるリリィ・マルクト・ザルフィアとかいうシンと同じ第2世代型ホムンクルスの一人だったはずだ。

 何かあった時の万が一の備えとして、ノエルが生前に用意した存在らしいが………。

 問題は、彼女が一体どういう人物なのかが不明。

 いかにノエル、マスターの命令と言われても私にとっての害となり得る得体の知れない存在を解放するのも、危険と判断し、ここを出る際も彼女を目覚めさせることなく置き去りにした程の存在だ……」


 「なるほど、眠らされたままのホムンクルスか……。

 ならついでに、彼女も連れ出したらどうだい?

 仲間は多いに越した事はないだろう?」


 「シン以外に、私は従者を取るつもりはないのだが」


 「それを、シラフ君の為だと言ったら?」


 「…………、どういう意味だ?」


 「君から直接関わるよりは、他の人間を通して彼を護衛する方が手っ取り早いだろう?

 彼の重要性は、今の君ならよくわかってるはずだ」


 「アレの近くのは、アルクノヴァの残した第4世代ホムンクルスのアクリがいる。

 他にも、天人族のリノエラがいるはずだ」


 「相変わらず、彼はどういう因果なのか知らないが、女の子には囲まれてるみたいだね……」


 「彼女等の実力も充分、新たに護衛役を追加する必要はないはずだ。

 新たに、わざわざ眠っている奴を起こす必要もないだろう」


 「シン君と同じ末路にさせない為にかい?」


 「………、それが悪いとでも?」


 「いや、気持ちは多少分かる。

 だが、利用出来るなら利用するべきだ。

 彼女はきっと、君の目的を果たす為の力になる。

 いや違うな……、彼女は贄のクローンのような物だからね。

 今後、世界樹と関わるようなら彼女の存在が必ず必要になる」


 「………世界樹の贄として、犠牲にしろと?」

  

 「いや、むしろセフィロトへの対抗する手段に贄の力、特定の魔力の型が必要なんだよ。

 我々の仲間は元々12名存在した。

 それぞれが、世界樹に対抗出来る魔力の型を持った存在としてね?

 しかしマルクトの、11号基に適合する型だけが居なくね……」


 「彼女はソレに相当する存在だと?」


 「ああ、11号機は帝国に存在した世界樹に適合する型だからね。

 何かの備えとして、彼女はソレに適合するホムンクルスを用意していた。

 元々、ホムンクルスそのものは人間の代用として贄する為に昔から研究されていたようだ。

 それをあの人は、自分なりに改良を重ねて現在の君達のような原形を生み出した。

 そして、今ここには我々が用意出来なかったマルクトの力を持つホムンクルスが存在している」


 「そちらの仲間の何人かは例の世界樹の型に相当していたのか?」


 「そうだなぁ、それぞれ1号基から順に相当するに適合する名を彼等に当て嵌めていくと、

 ルークス・ケテル・オラシオン

 シトラ・コクマー・ローラン

 シトリカ・ビナー・クローバリサ

 アクリ・ケセド・ノワール

 リノエラ・ケブラー・シュヴル

 シルビア・ティファレト・サリア

 アルフレッド・ネツァク・スルトア

 テナ・ホド・アークス

 ラノワ・イェソド・ブルーム

 リリィ・マルクト・ザルフィア

 ラウ・ダアト・クローリア

 と、以上になるのかな?」


 「この中に例の弟の名は無いんだな」


 「まぁら彼はまた特別な役割というか我々のリーダーのような存在だからね。

 彼は世界樹の型に当て嵌まらない唯一無二の存在。

 故に彼等の枷の影響下に入らない事に加えて、全てのセフィロトに対しての攻撃が可能なんだ」

 

 「全てのセフィロトに対して攻撃可能?」


 「ああ、そうだ。

 彼等はね、同じ型を持つ者でなければ攻撃する事は愚か、物理的に触れる事すら不可能な存在だ。

 故に、セフィロト一人に対して戦えるのは原則セフィロトと同じ型を持つ存在のみ。

 つまり、さっき私が挙げた11人の一人一人のみがセフィロト各一人に対抗できる戦力ということ。

 僕らが向こうで勝てなかった理由は主に3つ。

 各セフィロトに相当する型を持つ仲間を集められなかった事と、それぞれが彼等に対抗出来る力を有して居なかった事だ。

 加えて、この厳密な対抗手段の規則を知らなかった事、勿論私を含めて彼等に対抗出来る本来の仕様を知ったのはこの世界に流れついて来てからの事だ。

 つまり、我々が何故彼等に敗北したのか?

 その原因がはっきりした時には既に遅かった訳だよ」


 「私の持つグリモワールでも対処出来なかったのか?」


 「世界樹に直接干渉出来るグリモワールは確かに優れたモノだ。

 しかし、それは世界樹に触れられたらの話。

 セフィロトの彼等は、基本的には我々と同じ人間の括りであるが故に、グリモワールはせいぜい他より強めの魔術が使える程度のモノ。

 その点は、既に未来の君が証明している」


 「なるほど」


 「しかし、君は彼のように前線で戦う行為には本来向いていない。

 今の君でも流石にソレは自覚しているだろう?

 グリモワールを扱うにしろ、君は私と同類に当たる魔術師の一人。

 彼や、他の契約者達と比べれば能力そのものの突出した強さには必然的に劣ってしまう。

 あくまで君はソレを己の技量で補っているが、ラグナロクの者達と相対すれば分かるはずだ。

 君の程度の力では彼等に劣るモノだということを」

 

 「なるほど………」 


 「別に、そこまで悲嘆する必要もない。

 仲間内での君の実力は、学生時代の序列と対して変わったないからな……。

 勿論、こちらの君は私は愚か他の仲間よりも頭が幾つか抜けてる分には充分強い。

 単に相手が悪かっただけだろうがな……」


 「相手の悪さで、世界が滅ぶのは避けたいところだ」


 「ああ、だからこっちも手段を選んでられない。

 しかし、こちらの干渉が君達に、無論私達にとっても想定外の事象や不利益が起こるかもしれない。

 昨夜も言った通り、我々はこの世界の異物だからね」


 「なるほどな……」


 「ですね~、そろそろもう一人のお客様を起こして来ましょうかシトラ様?

 ふぅ、地下のお掃除がようやく終わりましたよ〜。  これでようやく一息つけましゅ…ますです」


 「ああ、ご苦労。

 そうだな、一応今日の夜までにはここを出るらしいから問題ないだろう。

 ラウ、君には朝食を人数分を頼みたい」


 「了……っ!?

 おい、待て、こいつは誰だ」


 私の声に向かいの彼女が僅かに首をかしげる。

 そして、その間に入り込むかのように右隣で平然と紅茶を飲んでいる女の存在に私は思わず驚いた。

  

 気配が全くしなかった。

 あまりに自然と、こちらの会話と場に混ざった謎の存在に私は思わず警戒する。


 灰色がかった長い髪、特徴的なのは頭頂部に存在する犬のような垂れた耳を持つ童顔の少女……。

 こちらを不思議そうに、その蒼い目で覗き込みその姿に私は何かの既視感を感じた………。

 

 「まさか……、リリィなのか?」


 「はい、初めましてです!

 昨夜は顔を出せなくてすみましぇ、せん。

 ここ数日はずっと地下のお部屋の掃除やら仕事が全然終わらなくて……。

 もう、今も正直眠くて……こんな姿をお見せしてしまって……しゅみません……ふわぁぁ……」


 大きなあくびをし、眠そうにウトウトとしている少女の姿を見て、すぐに私の直感は向かいの彼女が何かをした事を察知した。


 「シトラ、お前目覚めさせたのか?

 眠らせていたはずでは………」


 「私は地下にいた彼女は何者かと聞いただけだ。

 起こしていないとは一言も言ってないだろう?」


 「……………」


 「どうだ?、結構かわいい子だろう?

 学生時代に君が気にかけていた、サリアのシルビア王女みたく素直でいい子だと思わないかい?」


 「シトラ、お前何を考えて………」


 「私、やっぱりお邪魔でしたか………?」


 私の横に座る彼女はそう言うと、明らかに落ち込んだ素振りを見せ目線を落とすと私の服の裾を掴んで来る。

 

 「っ………」


 「いいぞリリィ、彼はこういうのに弱いからね。

 もう一押しすれば、簡単に落とせるぞ」

 

 「貴様、余計な事を言うんじゃない!!」


 「私……、要らない子ですよね………。

 そうですよね、私だけ実際置いてかれた訳ですし……。

 家事とかもうほんと全然駄目で……、出番とかもうそこらのモブと変わりませんよ……。

 マスターや皆さんのお役に立つなんて絶対無理ですよね……。

 獣人キャラってだけが私の取り柄ですし、なんかもう外に小屋とか置いて貰えれば大丈夫ですよ。

 外に出ても、結局面倒事しかありませんからね。

 私みたいな子は、一人で部屋の隅っこで座ってる方が落ち着くんですよね……。

 ほんとに………あはは……」


 異様な程の自暴自棄、更には何処かで見覚えのあるような世間に対しての卑屈が酷い……。


 「………、おいシトラ、コイツに何をした?」


 「私の英才教育の賜物だよ。

 元の素体も優れ、何より素直で飲み込みも早い。 

 素晴らしい子だよ、全く………

 ん?、待て、落ち着け……ラウ。

 突然立ち上がって私に何をするつもりだい?

 暴力は反対だ、君らしくない」


 「………、よく効く薬があったはずだ。

 多少染みるだろうが、魔力中毒にも多少効果があるかもしれない。

 ただ、麻酔が効きにくいのが問題だがな………」 


 「おい、待て………。

 一旦落ち着くんだラウ。

 私の傷は治らない。

 そう言っただろう?、な?」


 「リリィ、そういう訳だ。

 私は薬を取ってくる。

 傷の処置はそちらに任せる。

 彼女は非常に良い練習相手になってくれるだろう?

 今後、我々が怪我をした際に治療役が居なくては困るからな」


 「あ……はい、分かりました……ラウ様」


 「待て、私の意見はどうなるんだ?

 ラウ、おい……止まれ!

 なぁリリィからも彼に言ってやってくれ!!

 頼む!!」


 すると、少女は少し反応に迷い僅かに私の方と彼女の方を見比べると、少し間を開け意を決し口を開いた。


 「その……あの………。

 正直その……私のマスターは本来ノエル様かラウ様なので………。

 シトラ様のご命令よりも、ラウ様のご命令の方が優先されます。

 なのでその、すみましぇ……せん。」


 「待て、本気で私を裏切るのか?!

 せっかく君を目覚めさせたこの私を?!」


 「その、あの……えっと…、あ…はい」

 

 「くっ……、しかしまだ私には奥の手が………」


 「彼女は病人だ。

 逃げ回る前に、体を抑えておけ。

 多少骨が折れても問題ない、それも込みで治療する。

 では、頼んだぞリリィ」


 「了解しました、ラウ様!!」


 明るく屈託ない笑顔で返事を返すとすぐさま少女は、向かいの彼女を取り抑える。

 日頃あまり運動しない彼女は愚か、常人が本来反応出来る速度で突然体を取り押さえられると、一瞬大きく暴れるもすぐに諦め、子犬のような悲しげな表情を浮かべた。


 「ずるい、ずるいぞラウ!!

 私を何だと思ってる、仮にも師だぞ、先生だぞ!

 年上だぞ!!

 丁重に扱え、敬え、私に跪け、愚か者めが!!」


 「……、諦めろ。

 年貢の納め時だ、シトラ」


 「貴様!!」

 

 「大人しくして下さい、シトラ様!!

 私、力の加減間違うと全身の骨が砕けるかもしれないので……」

  

 「助けて下さい、お願いします。

 なぁラウ……、私と君との仲じゃないか?」

  

 「親しき仲にも礼儀あり、そうだろう?」


 「ヴァァァァァァ!!!」


 大人げもなく、子供の駄々のように藻掻き抗う彼女を、少女はしっかり抑え続ける。

 暴れ狂う彼女を他所に、私は薬を取りに地下へと足を運んでいた。

  

 次第に彼女の声は小さくなり聞こえなくなるまで続いていた。


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