旧き友
帝歴404年1月7日
「いやー、相変わらず愛が重いなぁ我等が主は……」
「それを分かった上で、敢えて怒らせるような真似をするのが悪いんだろう……」
「いやーさ、僕としては久しぶりの再会なんだよ?
昔みたいな軽口の1つや2つくらいしたくなるのも当然だろう?
僕等三人のよくある付き合いじゃないか?」
「よくあってたまるかよ!
俺の身が保たないだろうが!!」
そう言って俺は、先程からべったりと抱きついてくる親友もとい未来から来たらしいテナの頭を小突いて突き放した。
「全く、君は昔から釣れないな……。
昔はよく訓練終わりにこうして街を出歩いたのに」
「まぁ、そうだったな……」
「でも、しょうがないか……」
「それで、俺を連れだした意図や目的は何だよ?
わざわざ昔話かしたいだけじゃないだろ?
それに、向こうで抱きついた時から気になったが、その右腕は何だよ……?」
俺はそう言って、先程から気になっていた彼女の右腕に手を伸ばす。
特に隠すつもりもないのか、彼女の右腕は俺にされるがままに持ち上げられ、袖が僅かに捲れていく。
すると薄い灰色をした無機質な肌が露わになった。
「お前、やっぱり義手を付けて……」
「隠すつもりは特に無かったんだよ。
まぁでもなんというか、責任感じちゃうかなって。
あはは……」
「こっちに来てからやられたのか?」
「違う違う、僕がそんなヘマをする訳無いじゃん?
昔さ、向こうで誰かさんと戦った時に切り落とされてね……。
以来、こうして義手を付けてる訳だよ。
切れた先の方がまぁこんがり焼け過ぎて使い物にならなかったくらいだからさ……。
まぁ、しょうがないよ……」
「こんがり焼けたって、まさか俺が原因なのかよ?」
「うーん、まぁ色々あってね……。
ちょっとした喧嘩って訳でもないんだけどさ。
まぁその内分かるよ……、根本的な原因は僕にある事だし……」
そう言ってテナは持ち上げられた腕を下ろすと。
過去の出来事を振り返るように、義手となった右腕に視線を向けていた。
「昔約束したよね?
ルーシャ王女に仕えていた僕達二人が交わしたのを。
今後、片方が道を踏み間違えたとならもう片方が何があっても止めること。
その結果、どちらかの命が奪われたとしても道を違えた者は何があっても止める事。
ルーシャには止められたけど、僕等は結局その約束を最後まで守ったんだよ……。
まぁ、その経過の末に僕は片腕を失ったけど……」
「腕を奪われても良かったと思っているのか?」
「そんな感じなのかな……。
不便ではあるけど、お互いが交わした約束や誓いの合意はあった……。
その結果なんだから、僕自身は全く悔いはないよ」
そう言うと、テナは両手を上げ身体を伸ばした。
「本題入る前に、別のお店に寄ろうよ?
さっきのお店だけじゃ食べたりなくてさ」
「食い意地は相変わらずかよ」
「まぁね、あ……でもお金あまりないからここはシラフが奢ってくれないかな?
ね、いいでしょ?」
「分かった分かった、とにかく抱きつくのはやめろ!!」
「えー、まぁ後でシラフが怒られるくらいじゃない?」
「それが嫌なんだよ!
とにかく、入る店をさっさと決めてくれ。
あまり遅いと店が閉まるぞ」
「そうだった、じゃあ早く決めないとね。
ほら、シラフも走って走って!!」
再び、彼女にされるがままに辺りを連れ回される。
少なくとも、今よりは大人びている印象を受けてはいたのだが……。
根本はどうやら、俺の知る普段の彼女そのままのようだった。
●
例の如く、テナに夜の街にてひたすら食べ歩きをさせられた俺は、ようやく落ち着いた頃を見計らい近くの公園で休んでいた。
冬の公園はかなり冷えるが、まぁこれ以上食わされるよりはマシだろうと思う。
「いやー、やっぱり港町だけあって魚が美味しいね」
「あはは、そうだな……。
俺はお前の食い意地にいつも驚かされるよ」
「君が食べないだけじゃないの?
ちゃんと食べないと、僕の身長をいつまでも越せないんだからさ……」
「……はいはい、そうですね。
とりあえず、満足出来るくらいは食べただろ?
これ以上は流石に銀行からお金降ろさないと手持ちが無くなるところなんだ……」
「そりゃあ満足したよ。
いやー、無駄遣いしないように食事は基本動物とか狩ったりしてたからさ……。
君みたいに器用に料理出来ないから、料理が単調で飽き飽きしたんだ……。
もうね、ここ数ヶ月干し肉齧ってきたようなもんだからね……。
こうして温かい魚料理が久々に食べれるのは本当に良かったんだよ」
「魚を釣るって考えは無かったのか?」
「あ……、それもそうか……」
「お前なぁ……、そういうところで抜けてるのは本当に変わらないよな……。
向こうで何年くらい経ったんだよ?」
「えーと、向こうからきて半年経ってるから僕が今確か24くらいだったはずだよ。
どう、実際かなり大人っぽく見えるだろう?」
「確かに、今のお前と比べたら十分大人には見える見た目はしているとおもうよ」
「それなら良かった。
僕の知る君は、こうして何度か迫っても鬱陶しそうにして最後の方なんかほぼ無視されてたからね……。
今の君みたいな純粋な反応が見たかったのにさ……」
「青少年に対しての今のお前のやり方は、むしろ毒じゃないのか……?」
「えー、そう?
まぁ、胸とか出るところは結構出てきたからね……。
身長はそんなに変わってないはずだけどさ。
触って確かめてみる?」
「そのネタ、この前クラウスさんに見せた奴だろ!
洒落にならないから、ふざけててもそういう事を言うのはやめろよ、全く……」
「君が昔から、僕を男扱いするからだろ!!
放置した僕もだけどさ……。
流石に今の僕の姿を見たら男扱いは出来ないだろう?」
「それなら俺が悪いのか……?
いやでも、今更お前に対しての接し方を改めてもしょうがないだろ?」
「あー、確かに今更それはそれで気持ち悪いかもね」
「肯定されても、気持ち悪いはないだろう……」
「いや、まぁそうだけど……。
うーん、あー……、やっぱこの話は無し!!
こんな事ずっと話しててもキリがないよ!!
で、とにかくどうなの?
今の僕は、君の知るテナのままなのかなって……」
「少なくとも、俺はそう思ってる。
見た目はともかく……、どんな形でもお前はお前だろう?
同じ主に仕えている、俺の親友のテナ・アークス。
道が変わろうと、そうであった事実は変わらないさ」
「……そっか、変わらないか……」
「何だよ、この回答に不満とかあるのか?」
「そうだなぁ、愛人とかでも良さそうじゃない?」
「おい」
「あはは、ごめんごめん。
まぁ僕はそれでも良かったのは本音だよ、一応……。
僕等の中では、今の君の恋人であり主であるルーシャは死んでいるからね。
だから、その次の相手があわよくば僕でも別に良かったとは思ってた……。
変な気遣いも不要だしさ、命懸けの場面でも背中を任せられるくらいには実力を含めても信頼してたからね。
まぁ、ルーシャの手前それを表には出さなかったけど」
「……アイツは、少し前に死んだよ」
「聞いたよ、今の君が倒したらしいじゃん」
「アイツは随分衰弱してたんじゃないのか?
こっちに来た時、あるいはそれ以前からさ?」
「まぁ、負担を一人で肩代わりしたからね。
一応、僕等は止めたんだよ?
全員で代償を背負えば、君が早く死ぬ事は避けられるってね……。
でもさ、彼は敢えて一人で背負うと決めたんだよ。
自分の身体が保たないと分かった上でね」
「……、既にアイツは神器を使い過ぎていたのか?」
「そういう事。
君、出来るんだよね深層開放をさ?
加えて、もう一つの神器の力も」
「それが、問題だったのか?」
「別に、複数使える事が問題では無かったんだ。
単に使い過ぎてしまったんだよ、君は……。
幾ら英雄とまで言われるくらい優れた能力を有した君でも、所詮は一人の人間でしか無かった訳さ」
「そりゃ、俺なんかが英雄って柄じゃないだろ?」
「そうじゃない、君は確かに英雄だった。
でもね、君は戦い過ぎたんだよ。
誰かも構わず、手当たり次第に沢山の人達を救おうとして、僕等を生かす為に時間を稼いで、仲間を集めて今の僕等が生かされているようなものさ……。
知りたくもない真実に辿りついても尚、僕等の知る君はそれでも僅かな可能性を僕等に託したんだ……。
世界に全てを否定されようと、僕等にとって未来の君の存在は確かに英雄そのものだった……」
「一人で戦ったんだろ、アイツは……。
正直、今の俺が最盛期のアイツの実力に届いてるのか分からない。
それで、守れる人達がどれくらい居るのか……。
この力で、俺が救いたい目の前の人達をどれだけ助けられるのか……。
どれだけ強さを目指そうと、どんどん上が現れても尚……未来の俺自身はそれでも一人で進んだ。
理由は俺が一番わかってるよ……、俺は誰も失いたくないんだって……。
だから、今も結局一人でどうにかしようとしてる。
でも、今の俺なら違う道を歩めるかもしれない」
「……なるほど、確かに今のシラフなら問題ないかもね」
「それで、そろそろ本題について聞きたいんだが?
お前達は、一体何の為にわざわざ過去に来ている?
そもそも、時間を遡る事なんて可能なのか?」
「異時間同位体、それが僕等の存在の名称だ。
現存している世界樹12本、いや正確には13本の内部で運営されている幾つかの並行世界から生まれた存在。
カオスが求める理想の世界の為に、英雄計画の実現の為の世界の再現を行っている巨大な実験施設で作られた人間に極限まで近づけた魔力の集合体。
つまり、そもそも僕等全員君達とは違う世界から来た存在と言えばいいのかな?」
「未来から来た訳でもないのか?」
「未来の世界を再現した世界から来たってことにはなる。
こうしてお互いの過去や意識が共有出来るくらい、精巧に再現されている。
肉体も所詮紛い物……、正直生物として定義して良いものかすらも怪しい存在だ。
世界から勿論異物、故にラグナロクから最優先での殲滅対象という訳。
僕や君を含めて最初は12人居たんだけど、既に半数が殺されているくらいだからね。
全員、それなりに戦えたはずなんだけどさ」
「つまり、過去に遡る事は不可能だったと?」
「いや、可能性はあったんだよ。
旧文明の技術に、過去に遡ろうとした人類の実験の記録が残っていたくらいだ。
でも、僕等は敢えてこうしてこっちの世界に来ている。
災厄の未来を変える為に、色々と試行錯誤してね」
「成果はどれくらい出ているんだ?」
「………、僕等の当初の計画は失敗した。
むしろ、こちらの追っていた黒幕の策の上に踊らされていたようだった……」
「失敗だと……、それに黒幕って?」
「未来の彼から何もされていないのかい?
記憶の継承とかさ?」
「一応、継承はされているとは思う。
でも、アイツから受け取ったのは僅かな戦闘技術に関しての知識だけだった……。
ここは俺の推測なんだが未来の俺が敢えて、向こうからの記憶を伝えたく無かったような、そんな気がしたんだよ……」
「敢えて伝えなかった……、なるほどね……。
それで、未来の彼には何か不自然なところは無かったかい?」
「不自然なところか……。
他に来ていた未来のシルビア様からの話だと、アイツはクレシアに関する記憶の一切を無くしていたらしい。
クレシアは分かるだろ?
今の俺から見て、10年以来の付き合いがあったルーシャの親友のさ……」
「ああ、勿論知っているよ」
「この事について、何か知っていないか?」
「彼女はある意味で、君達にとって大切な存在だった。
ルーシャや僕や、特に君にとって……」
「それは、向こうでの俺の相手がそうだったのか?」
「いや、僕の知ってる範囲では君はルーシャと交際していたよ。
でも、彼女はまた特別な存在だった……。
色々と勘違いしているみたいだけど、これもまた彼女が望んだ形なのかもしれない……」
「クレシアが、黒幕に関係しているとでも?」
「彼女は死ぬよ、近い内に必ず。
いや、こう言った方が正しいのかな……」
「……?」
「彼女は既に死んでいる、君と出会った10年前にね。
そして、君等は忘れているんだ。
彼女が一体何者なのかを、彼女の持つ呪いにも似た奇跡の力によって……」
「クレシアが何をしたと?
それに、とっくの昔に死んでるって……。
なら、今俺達の前にいる彼女は何者なんだよ?」
俺の問いに、目の前の彼女は何も言わない。
いや、それを口にする事を避けているように見えた。
「どうして、言えないんだよ?」
「僕個人としても今の君の為に言う事は避けたい。
自分自身で目の前の彼女を、受け止めなきゃいけない事だと思うからね。
受け入れる為に、これから起こるであろう出来事はどの道避けては通れない……。
本当の問題は、彼女の死後……。
黒幕は彼女の亡骸の姿をしていたんだ……。
故に君は剣を振るえなかった。
未来の君が彼女に関する記憶の一切を失ったのは、君が自ら望んで彼女の記憶を消したからだよ。
目の前の現実から目を逸らす為に、君は彼女に関する記憶の全てを消して、彼女の姿をしたソレと戦った。
でも、勝てなかったんだよ……。
力が及ばず、今まで戦いで積み重なった負担や代償が身体を蝕んでね。
その後、奴は僕等の前から行方をくらました。
だから僕等は奴が本来の力を取り戻す前の彼女の生前である今の世界を目指したんだ。
せめて、同じ災厄を繰り返す事がないようにね」
しばらくの間、俺は唖然と開いた口が塞がらなかった。
目の前の親友の告げた言葉が、真実であるという事を俺の身体は拒絶していた。
認めたくない、認められる訳がない……。
つまり、今目の前にいるテナ達は俺の覚悟の無さが故に世界が最悪の結末を迎えたと言っている事ではないのか?
あり得ない、俺が?
俺の覚悟の無さが、弱さが、そんな結末に至らせた?
●
「俺はな、自分が憎いんだよ……。
守ると誓ったその人を救えず、何度も何度も地獄を見てきた……」
「……。」
「目の前で多くの人が死んだ……十剣や各国の神器使いが紙くず同然に葬られ……多くの人が死に絶えた」
「……。」
「……俺は……騎士であろうとした。大切な人達を守ろうとした……だが全て目の前で無惨な死を遂げた。
ここに至るまでに俺は多くを失い過ぎた……」
「……。」
「屈辱だよ、今の自分がどれだけ無力か……。それで過去の自分にまで頼らなければならないなんてさ……」
「守れなかった……それが、俺の後悔なんだな……」
「……だからせめてここで終わらせる。
この最悪の連鎖を断ち切る強さが必要だ。
お前がその強さを持てる器か、この俺を越えて証明しろ!」
●
「……お前は自分の過去を全て知っているのか?」
「……そうだな。
辛い記憶だよ、だがそれは俺自身に必要な記憶だ。
知ることで救えた者もいた……だが知ることで失った人達を知った」
「……。」
「俺は、ルーシャを……王女を守れなかった……。
王都が崩壊していくその日、彼女は俺達を救う為に王都に残る決断を下したんだ……。
あいつが最後に残した言葉、『必ずこの絶望の世界を変えて……』
だが結局、俺自身の手では果たせなかった」
「……。」
「今の俺には、守るべき主はいない……。
だからせめて、お前だけはその主を守り抜いて欲しい……」
「……守って見せるさ、必ず……」
男は微笑を浮かべると、仰向けに倒れた……。
視線の先に広がる、蒼天の空……。
何を思ったのか、男は右手を伸ばす……。
「……俺は騎士としての最後の使命を果たした…。
これで、俺の長い戦いは終わる……」
「……。」
「………我が王よ。
あなたの遺志は……彼に託せ…まし…た…よ……」
●
脳裏に過ぎる、あの日の俺自身との会話。
その根本の原因が……?
目の前のクレシアの姿をしたナニカに剣を振るえずに、俺は祖国を……主を目の前で失ったと?
「は……訳が分からない……。
敵がクレシアの姿をしていた?
それ故に俺は剣を振るえなかった……、
その結果、世界が最悪の道に進んだと?
それに、俺が望んで彼女の記憶を消したって……、
ふざけるなよ……そんなの明らかにおかしいだろ!!
彼女が死ぬ理由も、既に死んでいた理由も分からない上に……それを俺が望んで忘れ去っただと?
何で、何でお前らはそんなことを許容したんだよ!!
テナ……、どうしてそんな事をさせたんだ!!」
俺は思わず声を荒げ、目の前の彼女に掴み掛かり問い詰めていた。
しかし、テナはこちらに視線を合わせず俯くのみ。
「何で答えてくれないんだよ、テナ……!!」
「……ごめんね、僕等にも責任はある……。
君には、ずっと何もかもを背負わせ過ぎた……。
僕等がもっと強ければ、わざわざ君が手を下す必要もなかったはずだ……。
僕らの弱さに原因はあったはずなんだ……」
無気力気味にそう告げた彼女から俺は手を離した。
すると、彼女はゆっくりと俺の右手を改めて手に取ってくる。
「テナ?」
「嬉しかったよ。
こうして君とルーシャと再会出来たんだからね……。 本当にさ……」
「……」
「もう一度会えるなんて思ってもみなかった……。
結局、何も出来る事なんてないのに……。
全部失敗して、思うようにいかなくて……。
今の君にこうして甘えている自分が、本当に嫌だ。
あの時、もっと強ければ……。
もっと側にいれば届いたかもしれないのに……。
でも、しょうがないじゃないか……。
今更悔いたところで、失ったものは取り戻せない。
本当に、それをこの半年間ずっと悔やんでた……。
最後になってしまった別れの間際も、僕は彼に対して何も言葉を掛けてあげられなかった。
いうべき謝罪も感謝も沢山あったのに……、僕は何も出来なかった……」
「………」
「ねえ、シラフ?
私からは一つだけ、頼みたい事があるんだ」
「頼みたい事?」
「僕には、あまり優しくしないで欲しい。
ほら、なんというか君にはルーシャが居るんだからさ今までみたいな関係だと色々と誤解されちゃうだろうし?」
「まぁ、確かにそうかもな」
「それも兼ねて、まぁ程々に頼むよ。
まぁ困った時は頼るかもしれないけどさ」
「それくらいなら、どうにかするよ。
それに、お前が道を外さないように俺やルーシャ達も色々頑張るからさ……」
「……うん、そうだね……。
ありがとう、シラフ……それとさ……」
彼女がそう告げた瞬間、突然手に込められる力が僅かに強くなる。
そして、突然強い眠気のような感覚を覚えた……。
「……テ…ナ?
なんか急に……眠気が……」
「ご…ん……。
いち…さ、こ……もひ…よう…事だから」
意識が徐々に消えていく。
何かがおかしい、そう気付いた瞬間俺は視線を上げると赤い光が見えた……。
赤い光……、何処かで見覚えがある気が……。
意識の途切れる間際、俺は彼女の告げた一言が脳裏を何度も過ぎっていた。
「またいつか、巡り会いましょう……ハイド」