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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第二節 予言の歌姫と十の剣
251/324

王とは何か、役目は何か

帝歴404年1月6日


 「明日頃にはサリアに着くか……」


 忙しく消化し切れずにいた時代小説の一つが読み終わり、無造作にテーブルの上にまた1冊と重ねる。

 これで計7冊程。

 少々目が疲れた俺は長い船旅で強張った身体を伸ばす。

 いつもなら日課の稽古をしているのだが、この長旅の間は満足に身体を動かす事が出来ないのが寂しいところである。


 「……俺にとっての、理想の王とは何だ?」


 幼い時から俺は王を目指していた。

 それが俺の夢であり、道である。

 成して当然であり、己の生まれに左右されず世界を動かしたいと願っていた。


 何の為に世界を動かすのか?

 

 単にそれが格好良いとか、幼い頃に抱いていた感情も大きいが恐らく本質は違う。

 背けたい何かがあった……。

 王を目指す事で、力の無い俺が王になる事で成せる何かがあると……。

 あって欲しいと、そう願っていた。 


 思えば、己を取り巻く因縁は非常に多かった。

 生まれに左右されたくないと思えば、俺に流れる血筋の因縁は深く根付いている。

 自身に強大な力が無くても王に成ろうとしたが、王に成る為に俺は数々の力を手に入れようとした。


 無くても成せる証明は、己の因縁からの逃避から来ていたのだろう……。


 勿論、俺自身は数多くの努力は重ねたつもりだ。

 文武を極めんとし、そして相応の実力も得た。

 しかし生まれ持った力……それに飽き足らず、神器と呼ばれる異能に手を染めた。


 力は更に得た、しかし以前として足りない。

 そして、王の在り方の答えも見つからない。


 故に、俺が理想の王になる事は今も叶わなかった。


 力を得ようが、更に上の存在が常に在る。

 サリアの騎士シラフと、謎の多いラウという者を筆頭に、その裏に存在するシファという黒幕に近しいナニカ。


 新たにアクリ、そしてとうとうシルビアというサリアの王族までも神器やそれに近しい圧倒的な力を持つ者がこの短期間で数多く現れてしまった。


 サリアという一国と俺には新たな因縁があるのかもしれない。

 これも運命の巡り合わせなのか、運命を共にする彼女もまたサリアの生まれであったこと……。


 「王とは何か……俺が目指すべき姿は一体……」


 答えは未だ見つからない。

 

 俺は何を成したいのだろう?

 

 王として、一人の人間として……、


 俺は一体、何の為に此処にいる?


 生まれと同時に実の両親も失い顔も名前も知らない、そして興味もない。

 噂は噂で耳に入るモノがあったが、確証はなく俺自身その生まれで王になる事は避けたかった。


 親の血筋で王には成らず、俺の名を以て王とする。


 それが目指す在り方の一つ。


 しかし、王となる為に何が必要だ?


 国土、民、有能な家臣、圧倒的な富、諸外国とのコネクション……。

 

 現状、その全てを俺は持っていない……。

 

 目指す以前に何もかもが欠けていた……。


 今回の婚約に関しても、お互いの意思は尊重した上だが両国としては政略結婚という側面の方が強いだろう。

 

 持たぬが故にいいように使い回される。

 力が無いが故に、俺は抗う術を持たない……。


 今の俺の意思は何ら意味も無いも同義……。


 俺自身、現在の学年は5年であり学院はあと2年程で卒業する。

 八席の一人という肩書きが、元八席という立場になるのだろう……。

 

 名ばかりのヤマトの王族という肩書きしかない今の俺は学院を終えた後に何をすれば良いのか?

 親代わりに育ててくれた養夫婦の為に、実家へ戻り家業を継ぐ選択肢が最も妥当なのだろうが……。


 それとは別に俺個人が特段何かをしたい訳でもない。

 

 実際問題、俺はヤマトの上流階級では毛嫌いされていたのが事実……。

 俺を受け入れた養夫婦等が特別良い人達であっただけで、俺自身は祖国では何ら歓迎されてはいないことがほとんどであった……。


 戻ったところで居場所もない。


 ならば、サリアに移住でもするのか?

 育った国を捨て、わざわざかの国の為に尽くすのか?


 サリアの騎士含め、興味深い者達が非常に多く魅力的には写るが……それは剣士としての俺の興味……。

 俺の生涯に関わる選択肢に敢えて入れる程の要素になるのか?

 レティアは恐らくソレを強く歓迎するだろうが……、彼女の立場として俺は彼女を取り巻く関係者からは祖国と何ら変わらない扱いを受けるかもしれない……。

 下手をすれば今以上に、レティアを巻き込む可能性もある……。

 

 「はぁ、女々しいな……。

 今更悩んだところで……何が変わると……」


 部屋の窓から見える大海の景色。

 僅かに雪が降る美しい、凪のような光景。

 

 一人の人間など、あの降り積もる雪の一つにすぎないだろうに……。

 

 答えの出ぬ己の命題……、今まで答えの出なかったそれが今突然解決する訳などないのだから……、


  曇る感情を振り払い、俺は部屋を出る事にした。


  

 いつの間にか、時間は過ぎていく。

 いつものように、俺の部屋に来て入り浸る婚約者の姿が視界に入ってくる。

 既に馴れた光景の一つではあるが、年頃にしては羞恥心が低いように思ええくる……。

 数日後には婚儀を交わすのに、これまでと変わらずケラケラと笑顔を振りまいてくる。

 人間の人生において、重要な選択肢の一つであるのは何処の国も同じ認識のはずではある。

 目の前の彼女はその点について、何も思うところはないのだろうか?

 僅かな疑問と不安が今更ながらに過ぎる中、読書中の俺の視線に顔を覗かせ幼い子供さながらに割り込んできた。


 「何の真似だ、レティア?」


 「さっきから読むの全然進んでないよね?

 珍しいと思ってたからさ、何か悩み事でもあるのかなって?」


 「明日にはサリアに着く。

 そして、その数日後には結婚式を控えている。

 人生においての大きな節目を迎えるというのに、何も悩まずにいる方がどうかと思うがな……」

 

 「ルークスは私と結婚するのが嫌なの?」


 「いや、そういうことじゃない……。

 ただ、お前はどうなんだって話だよ。

 王族としての立場、周りから見れば今回の婚儀はサリアとヤマトの政略結婚でもあるだろう……。

 自身の立場上、何かしら悩み事の一つや二つくらい本来はあるだろうに……」


 「あー、そういうこと……。

 確かに、そういうのもあるから色々と考えちゃうか」


 「一括りに、まとめるのもどうかと思うが……」


 「今更考えたって仕方ないじゃん……。

 私なんか、サリアに戻ったら絶対お母様からお説教受けるの確定してるんだよ!

 結婚式やりたいって勝手に話進めて、近隣諸国こぞっての一大イベントになってるんだから……。

 もう国家予算も結構動いてるみたいで、考えだしたら夜しか眠れないよ!」


 「ちゃんと寝れてるんだな」


 「ふふん、偉いでしょう私?

 そうじゃなくて!!、ええっと……。

 私だって色々考えてるよ、これでもさ。

 でも考えたってなるようにしかならないし……。

 だったらもう、とにかくやるしかないって話でしょう?」


 「まぁ、確かにそうだな」


 「私は多分、今回みたいに大きなモノにならなくてもいずれは学院内で結婚式はしていたと思うよ。

 大きくて、立派な教会じゃなくても、私達がお互いどんな立場であったとしても関係なくね。

 ルークスの事だから、色々と難しい事ばかり考えている内に、そのまま話が流れてしまいそうだからさ……」


 「いや、実際そうだとしても時期は早過ぎはしないか?」


 「それは……、うん……。

 でも、それくらい私はルークスの事は信頼してるの。

 完璧超人って器でもない私を受け入れてくれたからさ……、出会ったばかりの頃とか色々あったけど結局は私との話に最後まで付き合ってくれて……。

 それ以外にも、色々理由はあるけどさ……。

 私は生涯を共にする相手がルークスで良かったって思ってるよ」


 「生涯を共にか……。

 今の俺は、地位も名誉もお飾りに過ぎない。

 卒業後の進路に関しても何の目処も立っていない」


 「ルークスは王様になるんでしょ?」


 「それはそうなんだが……そういう話ではなくてだな」


 「一定の領土、永続的住民、政府組織、外交能力。

 この4つが揃えば、国を作る上での最低ラインは確保出来る。

 一応、私の中だと今のルークスの一番の問題は領土かなって思うんだよね?

 ほら、お互いある程度の人脈はあるから領土以外の3つの要素は案外どうにでもなるでしょう?

 領土の候補としては、現状不可侵条約の元で管理されている旧オラシオン帝国があったテラクト大陸辺り。

 だから、今後ルークスが王様となる為の道筋としてはサリア及び四国内で官僚として勤め、人員及び新国家の国民を集めていく。

 そして、現在不可侵条約で管理されている大陸の管理者としてルークスが入って、新政府及び新国家を形成して統治する。

 最初の内は、世界中から色々な利権やら外交関係で独立は難しいだろうけど、私も色々と頑張ればなんとかなりそうじゃないかな?」


 「正気か、その話?

 いつもの冗談じゃないよな?」


 「本気の本気だよ。

 ルークス、王様になるんでしょ?

 そりゃ、ルークスは戦いばっかで政治関係は疎いだろうから、私が政治関係全部やればいい話だし」


 「それをされると俺はただ玉座に座ってるだけじゃないのか?」


 「あー、じゃあ国防辺りやればいいんじゃない?」


 「いや、国防辺りって行き当たりばったりな発言をされてもなぁ……」


 「王様になるんでしょ、ルークス?

 なら、王様はみんなを引っ張れる存在じゃないとね?

 何を成せるのか分からないなら、成せる何かを見つけるまで色々とやってみればいいし。

 それに、何も出来なくたってルークスが新たな国の王様であって欲しい人達が集まった国なんだからさ。

 なのに、王様であるルークスがそんな後ろ向きな発言ばかりじゃ絶対に駄目だからね!!

 国の長として、常に威厳というか風格を持った姿で国の顔として立つべきなの。

 じゃないと、幾ら私が頑張ったって国はすぐに滅んじゃう……。

 だから、王様になるルークスはとにかく前を向いてなきゃ駄目なのよ!」


 強気で豪語する彼女の言葉に、ため息混じりに言葉が盛れる。


 「前を向くか……」


 「私のお父様は、お兄様達や私にいつも言ってたわ。

 王は民へと弱さをみせるべからず、王の弱さは即ち民の弱さであり国の脆さである。

 王は常に堂々であれ、王の強さは民の強さへ繋がり国をより強くするものだってね。

 だから、王様を目指すルークスが今みたいな姿を周りに晒しちゃったらダメ。

 私やみんながあなたを必ず王様にしてみせる、だからルークスは王様としての姿を私に示し続けなければならない」


 「王の姿を民に示せ……。

 暴君として、乱世を生き抜くのか……。

 名君として、治世を築くのか……。

 俺は、どちらに見える?」


 「暴君にもなるかもしれない、名君にもなるかもしれない。

 どちらが正しいのかなんて、その時じゃないと分からない。

 今の、後の世に間違っていると、正しかったと言われても当事者の私達の選んだ道だから、その当時正しい選択肢を選ぶだけだから。

 だから私は、あなたが暴君になってもいい。

 名君になってもいい。

 あなたが道を間違えた時にあなたを止められるなら、

 あなたの選んだ道の果ての景色を一緒に見られるなら、私はなんだってするから。

 ルークスと一緒に作る新たな国の最初の民として、あなたの王道を一緒に進むよ。

 今を生きる私の選択として、私はあなたを必ず王様にしてみせる。

 だから、ルークスも私に見せてよ?

 あなたの理想の国の姿を、共に生きる私に……」


 「理想の国の姿か……、無謀にも思えるがお前とならあながち不可能ではないのかもしれないな……」


 「で、どうなの?

 ルークスは王様になるんでしょ?

 私がこんなにも、あなたに尽くすんだからさ……。

 これからあなたはどうしたいのか、ちゃんと私の目を見て答えて」


 そう言って、読んでいる途中だった本を俺から取り上げ両手で俺の顔を掴み視線を合わせる。

 僅かに寝癖が残っているだらしなさを一瞬感じたが、その表情は普段外に見せている女王としての威厳を現したいつもの彼女そのもの。

 丸眼鏡の内にある、彼女の青い彗眼がこちらの本心へと問いかけてくる。


 しかし、彼女の問いに対しての答えは、とうに決まっていた。


 「俺は王を目指すさ。

 それが、ずっと昔から変わらず宿し続けた己の野望なのだからな……。

 どれだけ苦難の道筋であろうと、俺の目指す国の姿を必ずレティアに見せてやるよ。

 この先、色々と大変になるだろうがな……」


 「覚悟はしていますよ、それくらい。

 それでも楽しんで行けるでしょう?

 私達なら、なんだって乗り越えられるはずだから」

  

 目の前の彼女はそう言って、笑顔を向ける。

 何も出来ないと自負するいつもの彼女だが、たまにこちらの想像を遥かに超える意志の強さを見せてくる。

 本質的な彼女の強さなのか……。

 しかし、その強さが自身の為にのみ活かされる事はほとんどない……。

 

 誰かの為に、自身が大切にする他者の為にのみその強さを振るうのみ……。


 そんな献身的な彼女が故に、いかに彼女の実力が他者に劣ろうと彼女の為に力を貸す人間は非常に多い……。


 俺自身もその一人なのか……、あるいは……

 

 

 「うーん、今のところは何の連絡もないか……。

 待機命令って事でいいんだよな……。

 あるいは、何かの異常が起こっているのか……」


 船内の個室で一人、チェスの盤を睨みながらそんな事を呟く……。

 

 「タルタロス……、旧文明の監獄……。

 かつて、世界に恐れられた災厄の彼等が封印された場所……。

 利用価値がある故に、今も尚凍結された者達……」


 黒い駒を手に取り、タルタロスの者達についての情報を一人一人整理していく。


 「この前得た情報だと、脱走者の内気を付けるべきは6名だったか……。

 ウラヌス、ヘカトンケイル、イクシオン、タンタロス、テュホン、そしてヘリオス……」

 

 キング、クイーン、ナイト、ルーク、ビショップ、ポーン、それぞれ一つずつを盤面に並べ、状況を整理していく。


 「それぞれはかつて、旧文明の戦争において世界に甚大な被害を与えた者達。

 ウラヌス、ヘカトンケイルは巨人族の兵士。

 元アメリカ軍の海兵隊員であり、その巨体と圧倒的な力で国の片翼を担っていた程の存在。

 しかし、同族に対する扱いの劣悪さ故に上層部の命令に逆らい、当時のレジスタンスと呼ばれた組織に加入し反逆した。

 次に、イクシオン。

 出自に不明な点が多く、獣人族の一人。

 かつては中国軍の陸軍に所属し最前線で戦いながらも、中佐というかなりの高い地位に立っていた稀な存在。

 しかし、何を思ったのか彼は所属していた国を裏切 巨人族二人と同じくレジスタンスに加入した。

 幾度かレジスタンスとは戦っていた過去があったはずなのだが、その真意は不明……。

 記録のほとんどが黒塗り及び欠落しており、かの国の情報は非常に謎が多い部分がある」

 

 それ等の対応する駒としては、ポーン、ナイト、ビショップと言ったところだろう……。

 駒を手に取り、それぞれを手前に並べていく。

 問題となるのは、残り3つに対応する者だろうか。


 「タンタロスは、旧文明の戦争においての一級戦犯であり神器及び権能器の開発者の一人である。

 タルタロスの建設にも携わっていた事もあり、組織内での立場は非常に高かったが……倫理性に非常に問題があった。

 国籍を偽り、幾つかの名前や容姿をもっていた事もあり、本名は愚か素性の一切が不明……。

 しかし、その異彩な程に優れた頭脳を買われ組織内ではかなりの地位に立っていた……。

 今回の脱走者達のリーダー的な存在であり、彼を倒せば今回の脱走者等も自然消滅する。

 つまり、彼を倒す事が今回の最終目標に当たる」


 キングの駒を手に取り、僅かにそれを軽く眺めると3つの駒の更に手前においた。

 そして、残るはクイーンとルーク。


 「最も気を付けるべきは残る2つ……。

 テュホンは、大戦当時において世界の2割を滅ぼした災厄そのもの……。

 元はレジスタンスに対抗する戦力として、連合軍が生み出した人造兵器であったらしい。

 そのあまりの強さが故に、味方も敵も構わず滅ぼし一時はレジスタンスと共闘して、ようやくタルタロスへと封印された程。

 可能ならば直接の交戦は避けるべきであり、対峙した際は即時撤退せよ。

 本体自身は非常に非好戦的な性格であり、何もしなければ最も危険度は低いとも言える。

 戦いが短期戦になれば、彼女と直接交える可能性は低くそこまで危険度も高くはない……。

 相当するなら、後半に厄介になりがちなルークと言ったところか……。

 そして、問題は……」


 残るクイーンを手に取り、僕はそれを眺めた。


 「ヘリオス……、大戦当時において世界に反旗を翻したレジスタンスの頭目的な存在……。

 組織の太陽として、旧文明が滅ぶ一因に至った戦争の引き金を引いた災厄そのもの……。

 彼女の一声で、レジスタンスの全軍がこちらに向かってくる可能性が非常に高く、最も交戦は避けるべき存在。

 妖精族の原種に当たる存在であり、非常に高い魔力を有しており、先程とテュホンと同格かそれ以上。

 自然に対しての強い干渉能力を持ち、天候や地形さえも意のままに操るらしい……。

 本体の戦闘能力も非常に高く、あのシファに並ぶか同等以上の高い能力を持つ……。

 そして、シラフの持つ神器の素となった存在……。

 危険度は最も高く、最優先で撃破するべき存在だろう」


 クイーンの駒を盤面に置き、それぞれの優先順位を付けていく。


 キング>クイーン>ビショップ>ナイト>ルーク>ポーン……と言ったところか。


 キングを倒せばこちらの勝ちは確定。

 しかし、キングを倒す為に他の駒は倒しておきたいところ。


 長期化する程、ルークの危険度が大きく上昇しクイーンに並ぶかそれ以上になると……。


 こちらの戦力がどの程度、それぞれに割けるか……。

 話によれば、シファ等との一時共闘の約束をしたらしいがどの程度彼女等を信用していいのかは不明。

 

 わざわざ僕が動く事は少ないだろうが、戦力として出向く可能性は非常に高い。

 どちらの組織の都合上、直接交戦はしないにしろ後方支援には回るだろうが……。


 十剣数人で、駒一人倒せるかどうかだろう……。


 「あー、もう……。

 厄介事ばかり押し付けられるなぁ……!!」


 面倒事や障害が非常に多い……。

 敵の動きも、味方の動きも不鮮明……。

 今の立場上、最優先となるのは今回の両国王族の結婚式を無事遂行する事だろう……。

 結婚式の最中に襲撃されたら、国際問題もいいところだ……。

 帝国崩壊から荒れていた治安が、ようやく落ち着きそうなのに、ここで大きな騒ぎを起こすのはお互いの立場としては避けたい事象である。


 せめて結婚式くらいは無事に終えたい。

 その後、どうにかこうにか裏で処理出来れば一番の理想的な構図なんだけど………。

 

 「運命がどちらに向かうのか……。

 神頼み……いや、神様なんて今更あてになるのか?」


 盤面に並べた駒に再び視線を向ける。


 正直、聞いてる話のどのくらいが本当なのか分からない。

 あの人の、マスターが危険因子だと言う程なのだから相応なのだろうが……。


 しかし、今の僕達が全く太刀打ち出来ない程の脅威が過去の遺物に存在するのか?


 こちらには、十数個に及ぶ神器や幾万の軍隊がある。

 それでも、例のたった6人には敵わないと?

 

 「まぁ、どの道やることは変わらないか……」


 並べた駒を片付け、外の海景色に視線を向ける。

 

 「敵は全て倒す。

 倒せなきゃ、死ぬのみ……。

 例え敵にどんな事情があろうとも……。

 僕達の敵は、僕の道を阻む敵は全て倒すだけだ。

 いつだって僕はそうして来ただろう、テナ……」


 

 

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