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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第一節 喪失、再起
234/324

炎の英雄

 サリア王国には、400年以上に渡り語り継がれる英雄が二人存在していた。

 

 その両者はお互いに同じ時代に存在し、彼等が生きていた時はサリア王国において激動と黄金の時代でもあったと言えるだろう。

 

 一人は、鉄の女王との異名を得ていたリースハイル・ラグド・サリア


 サリア王国歴代随一の支持を集め、この国が帝国の軍事的及び政治的な支配から守り抜ける程の列強国へと一代で築いた伝説の女王。

 

 彼女無くして今のサリアは存在しない。


 そして、彼女に仕えていたもう一人の英雄、ハイド・アルクス。


 彼は歴代最強の十剣の一人。

 更には若くして王国最強の騎士団、ヴァルキュリアの団長も同時に務めていた伝説の騎士でもあった。

 王女リースハイルが玉座に正式に就任するまでに国の窮地を幾度も救い、先代国王の急死の最中でリースハイルを一番側で支え彼女が伝説の王女と呼ばれるまでに繋げた存在である。



 英雄は語り継がれ、その名も受け継がれていた。


 そして今、かの英雄に挑もうとする者が一人。


 ハイド・カルフ、またの名をシラフ・ラーニル。


 世界は、新たな英雄を求めていた。


 帝歴403年12月28日


 冬の荒野、雪が振り世界が白と黒の世界に染まる中で、俺は一人の男と対峙していた。


 「「神器解放……」」


 目の前の男と言葉が重なった。

 全身に巡る魔力の流れが、激しくなる。

 心の底から溢れる、様々な葛藤……。


 目の前に立つのは、祖国の英雄だった。

 

 歴代最強の十剣であり騎士である。


 祖国の誰しもが憧れた存在が、今俺の目の前に敵として対峙している。

  

 世界の秩序を守る、ラグナロクの一人として。


 俺の家族をリンを殺した奴等の仲間として……。


 かの英雄は、そこに居るのだ。


 実の両親がくれた本当の名の元になった英雄が……。


 ハイド・アルクスが今目の前に、俺の敵として存在しているのだから……。



 凍てつく世界で、お互いが灼熱の炎に包まれていた。

 いや、むしろそれは当然の事だろう……。

 俺の左腕に身に着けられている炎刻の腕輪は、かつて目の前の英雄が身に着けていたモノである。


 故に、目の前の男が同じ神器を炎の力を扱えても何らおかしくはないのだ。


 刹那、同時に全身を包んでいた炎が弾けるとまるで鏡を見ているかのように、炎の衣を纏った存在がそこにはあった。

 

 その手に構えた燃え盛る真紅の剣の形状は僅かに長さは太さは異なるが、目の前の男は今の俺とほぼ同じ姿を象っていたのだから。

 

 「さぁ来るがいい!!」


 「言われなくとも、やってるよ!!」


 炎を纏い、先手を取るため一気に足を踏み込む。

 直後、向こうの足が動き出しこちらに向かってきた。

 

 刹那、俺はこの時点で向こうの力量との実力差を痛感したしまった。

 相手は後から踏み込んだにも関わらず、既にこちらよりも先に己の構えた剣が攻撃に向かっていたのだ。


 こちらが踏み込み掛かった時点で二歩。

 しかし、相手は最初の一歩で既に最高速度へと身体は動いてるのだ。


 一歩の踏み込みの差、しかしこの一歩が明らかに致命的な差であった。


 瞬間、お互いの炎の熱と衝撃が辺りに広がっていく。

 降り積もる僅かな雪達が、爆発の衝撃で全てが蒸発し吹き飛ばされる。


 そして、衝突した俺の身体は衝撃により大きく吹き飛ばされていた。

 

 「っ!!」


 たった一撃で俺の意識が飛びかけた。

 攻撃を受け止めた手が震え、吹き飛ばされた身体が大きく地面へと叩きつけられる。


 一度大きく身体が跳ね上がり、その瞬間に身体の体勢を無理矢理直していく。

 剣を地面に突き刺し、衝撃を無理矢理抑え込むが、止まった場所の位置を察するにかなりの距離であった。


 相手の一撃は俺より遥かに重く、速いのである。

 

 「どうした、まだたった一振りでこの様か?

 まさか、その程度で俺と張り合おうと?」

 

 「まさか、まだまだこのくらい序の口だ」


 「それなら良かった。

 君が新しい力を試す前に倒れては、わざわざこちらが出向いた意味が無いからね」


 こうなればヤケになってでも食い付いていくしかない。

 先程の一撃で、既に相手の方がこちらよりも強いのは明白だと理解した。


 だが、そんな事で諦める訳にはいかない……。


 向こうが祖国の英雄だろうと、俺は俺の全力を尽くすまでだ。


 「負けてたまるかよ、絶対に……!」


 俺はその言葉と同時に全身の魔力を更に高める。

 身体強化の魔術、その限界を超えて身体を更に強化を重ねて。


 体内に魔術を付与するだけなら、外部に行うよりは遥かに容易な芸当だ。


 よって本来は魔術の発動に必要な詠唱の過程を飛ばせる事を踏まえて、同時に魔力をその手にある神器を額の前に掲げ意識を集中させる。


 「神器解放……」


 炎の熱が更に高まる。

 その背に、蝶の羽を思わせる紅蓮の翼が顕現し、自身の頭髪が異様に伸びていきオレンジ色の輝きを放っていく。


 その手に構えた炎を纏った真紅の剣の形状が更に鋭く、そして激しい熱量を帯びていく。


 「なるほど、コレが例の幻影解放か……。

 さっきよりはだいぶマシのようだ」

 

 男は俺の変わり果てた姿を見てそう呟いた。


 「見た目だけ変わった訳じゃないさ。

 そしてこの姿は、恐らく昔のあんたには出来なかった芸当だろう?」


 俺がそう告げると、男は僅かに微笑んで言葉を返す。


 「なるほどな。

 さぁ遠慮は無用だ、来い」


 男の言葉を聞き終えた刹那、俺は先程の攻撃とは比べモノにならない速度で相手に斬り込む。

 こちらの一撃は相手の身体を確実に捉えていた、向こうも僅かに驚きをみせるが、己の武器で辛うじて攻撃を受け止めた程度。

 先程の俺と同じく、その身体は大きく吹き飛んだ。


 やはり、今の俺の力は解放者より遥かに高い。

 

 だが先程見せた男の微笑みから、確実に何かの裏がある。

 恐らく、俺のが扱う幻影解放に代わる力か何かを持っているとしか思えなかった。


 「……来る」


 吹き飛ばされた男の身体が目の前から煙のように消えた。

 俺と同じように炎纏っているが故に、消えた身体がどこに向かったのか、その軌道が残像のように残る。


 刹那、男から振るわれた一撃が俺の剣と交錯する。

 数多の剣戟が白と黒の世界で炎の煌めきと共に輝きを星空のように放ち続ける。


 お互いの剣筋は鏡合わせのように酷似していた。

 俺が全力で食らいつくも、一撃一撃の重さはこちらよりも遥かに上の相手。

 目の前のソイツの表情から余裕を覗かせ、こちらの戦意をより煽り戦いそのものを楽しんでいるかのようだった。


 「どうした?

 君の力はまだこんなものじゃないだろう?」


 「ソレはあんたもだろう?」


 「なら、力を使わせるくらいの実力は見せて欲しいな」


 「すぐにそうなるさ」


 鍔迫り合いの最中でお互いに会話を交わし、相手の様子を伺う。

 向こうにはかなりの余裕があるのに対して、こちらは歯を食いしばりどうにかついて行けてるような物だった。


 鍔迫り合いが収まると、鏡合わせのようにお互いの身体が白と黒の世界で飛び回り、幾度となく剣戟が重なり合う。

 一撃が重なる毎により速く、より重い攻撃が互いに繰り出され、この戦いは激しさは更に増していた。


 地を焦がすが如く、互いの炎が幾度も大地の上でぶつかり合う。

 気付けば、降り積もる雪の姿はなく雨が降り始めていた。

 互いの熱量によって生じたソレは、熱湯と大差ない程であるが、互いの身体に触れた寸前に自身の纏う膨大な炎の熱量によって蒸発されてしまう。


 多くの蒸気が辺りを覆い、視界が徐々にぼやけていった。


 「っ!!」


 蒸気の霧は、互いの剣が振るわれる事で僅かに晴れていく。

 晴れる事で生まれる、僅かな蒸気の揺らぎを頼りに相手の位置と攻撃を予測し対処する。

 

 けたたましい衝撃と音が幾度に渡り響き渡り続けた。


 どれだけ歯を食いしばり抗おうと、俺は目の前の男の強さに追いつけなかった。


 己の限界を、刃を交える度に突きつけられる。


 「こんなところで……っ!!」


 間合いを取り、構えた剣に魔力を集中される。

 纏った炎の煌めきが、輝きが徐々に増していた。


 ソレを察したのか、男も同一の構えを取り剣に魔力を集中させ、炎の輝きが激しくなっていく。


 その膨大な熱量故に、大地は溶け始めていた。

 そして、辺りを覆っていた霧すらも消え去っていく。


 そして、お互いの放つ炎の輝きが更に増していた。


 「「アインズ………、」」


 お互いの声が重なる。

 炎の熱量と、光の輝きが最高点にお互い同時に達した瞬間、その剣を振るう。


 「「クリュティーエ!!」」

 

 両者の剣から放たれる莫大な熱量の塊。

 ソレが重なると同時に激しい爆発と、巨大な火柱が天を貫いた。


 そして俺は、そのまま火柱の元へと剣を再び構え身体を炎の中へと飛び込んだ。


 お互いの炎によって生じた莫大な炎の塊を、再び己の剣に纏わせ、全てを吸収し。

 吸い込まれた炎は、紅蓮の花を形成してその形を変えていく。


 その花は白き炎を纏い、光輝き、俺に力を与えて。



 「アインズ・ヘリオトロープ!!」


 その技の名を告げた刹那に振るわれた、真紅の剣。

 大地を焦がし、全てが焦土を化す程の膨大な熱量の塊が目の前の男へと放たれた。


 捨て身に等しい賭けの一撃、だが今の俺に出来るこれ以上ない一撃。  


 相手が同系統の炎の力を持つなら、その力を利用出来る。

 以前、未来の自分との戦いで得た経験である。


 故に、目の前の英雄がどれだけ強かろうと扱う力が炎であるなら俺はその力を利用出来るのだ。

 

 だが、己の勝利を確信した刹那。

 先の自分の思考が大きな過ちを犯していた事に気付く。


 相手の炎の力を利用出来るならば、向こうも然り。


 目の前を巨大な炎が覆う中、その中からあの男が平然と姿を現していたのだから……。

 

 「お見事、その年でここまでの力を扱えるとは。

 シファさんは実に、良い弟子を得たものだよ」


 「っ……何だよソレ、その姿は一体……?」


 「あぁこれか、深層解放に悪魔の力を乗せただけだよ」


 「悪魔だと……」


 俺は思わずそんな言葉を漏らした。

 火傷を負っているのではない、アレはまさに本物だった。


 燃え盛る、コウモリのようなボロボロの羽根。

 露出した腕から覗かせる、黒っぽい爬虫類の鱗のようなモノ。

 そして、額の左側に生えた牛の角のようなモノ。

 こちらを見据える蛇のような白銀の眼。


 後ろには何らかの獣のような尻尾が生えており、その姿はおとぎ話に出るような悪魔のソレであった。


 この時、俺は一瞬悪魔憑きの存在が脳裏に過ぎった。

 八席を務めていたラノワ・ブルームという男が、その悪魔憑きという存在だからだ。


 悪魔憑きは、生まれからその力を持っている存在。

 かつては教会側から忌み嫌われ、未だに一部地域では差別の対象にもなってしまう。

 理由は、人智を超えた異能の力を持っている事。

 そして、悪魔憑きという名の通り彼等にはそれぞれ悪霊のような存在が取り憑いているのだ。


 悪霊と言っても千差万別、悪戯好きな小物も入れば高貴で身分や序列の高い悪霊も存在している。

 そして大半の悪魔憑きは、悪霊に身体を操られ凶暴化し犯罪等に手を染める場合が非常に高いのである。


 一部例外として対等な関係や契約をすることで飼いならしたり己の意のままに力を扱う人達も存在している。

 ラノワという人も、恐らくその数少ない一人なのだ。


 だが目の前の男は明らかに例外。

 姉さんも一度、あのような姿を俺に見せた事があるが恐らくソレと同じ要因だと俺は推測する。


 つまり、目の前の英雄ハイド・アルクスは悪魔と人間との間に生まれた特異な存在なのだと言うことを。

 

 「済まない、この姿ではかなり君を驚かせてしまったようだね。

 まぁ無理もないか。

 俺が生きた当時の時代は魔女狩りが頻繁に起こっていたからな。

 悪魔も同様、彼等への差別が非常に激しい時代でもあった。

 そのような存在が、かつて十剣としてこの国で活躍していた事実を君達が知るはず無かった訳だ」

 

 「あんたは、姉さんと同じ存在なのか?」


 「いや、俺はシファさんとは違うよ。

 俺の両親は共に人間、両親は早くに亡くなり俺はその後その街の町長に養子として迎えられたんだ。

 だが、流行り病に幼い俺は侵されてしまってね死んでしまってね。

 そんな俺を蘇生する為に、町長は己の魔力を対価として自身の半分の魔力を注ぎ込み俺を蘇らせたんだ。

 その町長こそが悪魔と人間との間に生まれた子供であり、この国の建国に携わった炎の英雄と呼ばれる存在。

 サリアの歴史を知る君なら分かるだろう?

 俺の前に、この神器を使っていた英雄の存在をな」


 「っいや、まさか……。

 じゃあサリア王国は一体何の為に生まれた国なんだよ!!

 炎の英雄が悪魔だった事実を姉さんが何も知らないはずがないだろう?」


 「ああ、無論知っていたよ。

 炎の英雄を育て上げたのは、シファさんだからな。

 十剣を生み出し、そしてサリア王国の建国。

 更には、アンブロシア、フリクア、ヴァリスの国々も彼女の意志によって生まれた国々。

 正確には、彼女の設立したヴァルキュリアの者達がそれぞれで国を造り始めたのがきっかけだがな。

 だが、サリア王国を中心に四ヵ国を生み出したのは全て彼女の意志であり計画通りだ。

 現在の教会も、彼女に数多信仰を集め注目が大きく及ぶ事を避ける為に作られた仮染めの組織が始まりだがな」


 「そんな事があるはずが………」


 「まぁそんな事は今はどうでもいい。

 力の底は既に見えた、さぁもう一つの力を使え。

 使わなければ、今度は俺が君を殺しに向かうまでだが」

  

 「知りたければ力ずくって訳か……」


 目の前の悪魔に対して俺は覚悟を決めた。

 

 正直、新たな神器を使う事に対して抵抗があった。


 2つ目の神器の能力は、元々の持っていた力と同じ炎であるからだ。


 そもそも俺は、炎の神器を扱えないが故に今まで多大な苦労を重ねてきた。

 ここ数ヶ月でようやく神器を扱えるように至ったが、それでも炎に対する恐怖は消えていない。

 力を一度使うだけでも、相応の覚悟を決めた上でしか扱えないのだ。

 リノエラと一度試した時も、正直使えるかどうかすら分からなかったのが本心である。  

 目の前の英雄と刃を重ねた時も、同じ炎の能力故に恐怖心が強かった……。

 故に、何度も炎の力を扱える確証はな俺には無い。

 いつ失敗してもおかしくない、諸刃の剣そのもの。


 だが、俺は背負うと決めたんだ。


 リンがずっと背負い続けた苦しみも、憎しみも俺が背負うと決めたんだ。


 だから……


 「俺に力を貸してくれ、リン……」

 

 炎の衣を解き、俺は左腕に巻きつけた首飾りの方に視線を向ける。

 本来の赤く美しい輝きを取り戻した真紅の宝石。

 僅かに過ぎる、リンとの想い出を胸に俺はソレに魔力を込めた。

  

 赤い閃光が辺りを照らす。

 俺の足元に真紅の魔法陣が現れ、そこから生き物が這い出るかのように燃え盛る炎の鎖が天に向かって伸びていく。


 咎人、罪人……、目の前の鎖に対して抱いたのは当初そんなイメージだった。


 しかし、ソレは違うと俺は改めて肝に銘じる。


 この鎖は、俺と彼女を繋ぐ家族としての繋がりなのだと。


 俺がもう二度と大切な人達を失わせないと決めた覚悟の、誓いとしての鎖なのだから……。


 だから、一人で俺はこの力を振るうんじゃない。


 誰かの為に、己の守りたい者達の為に俺とリンが共に戦う為の力だ。


 復讐も、苦しみも、悲しみも、憎しみも……。


 この負の連鎖を断ち切る為の力なのだから……。


 「神器解放……」 

 

 そう告げた刹那炎の衣が、身体を覆った。

 衣を更に鎖が囲い、その背に天使の翼を思わせる四翼の形状を形成していく。


 そして、目の前に新たに剣が赤く激しい閃光と共に顕現する。


 赤と青が入り混じり、激しく燃え盛る業火の剣。

 剣身から放たれる圧倒的な力を覆い隠すように、その剣先から鍔に掛けて鎖によって覆われていた。


 俺がその手に触れる事を目の前の剣は待っている。


 そして、躊躇わず俺はソレに手をかけると剣を包んでいた鎖が解けていく。


 溢れる熱量に俺は驚きを隠せなかった。


 だが同時に、俺は確かに感じ取れたのだ。


 今は亡き妖精の存在を……、此処に。


 「………深層解放、プロメテウス」


 そして、その手に握られた剣を軽く振るうと、剣から放たれた無数の炎と鎖で辺りの情景が大きく変化していく。


 燃え盛る鎖の樹海、本来自然に存在するはずの無い魔境のようなソレが目の前に形成されていく。


 「なるほど、実に面白そうな力だ」


 「覚悟は出来ているんだろうな、英雄殿」


 「さぁ、来るがいい!!

 君の力を俺に示してみろ!!」


 目の前の悪魔はそう叫ぶと、剣を掲げ俺に迫ってくる。ソレに呼応するように、自分の身体も自然に目の前の悪魔を倒すべく炎の剣を振るわんとする。


 此処は、既に灼熱の樹海。


 炎と鎖に覆われたこの場所を指すモノとして相応しい言葉だと思う。


 そんな地獄のような場所で俺と相対しているのは祖国の英雄だ。


 いや、悪魔がそこに存在していた。


 しかし、俺には相手が英雄だろう悪魔だろうと関係無い。


 ただ、目の前のソイツに負けたくなかった。


 これ以上大切な人を失うのは嫌だから。


 今の俺の全てをこの炎に込めて、鎖に繋げて……。


 剣を振るうしかないのだ。


 炎と剣戟、灼熱の鎖に包まれたこの世界で一人の騎士と英雄が幾度となく刃を交え続けた。


 自分の正義を貫きたければ勝つことのみ。


 故に、俺は剣を振るい続けた。


 炎が己に有り続ける限り


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