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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第二章 炎の覚醒編 序節
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第二十三話 身内の騒動

 教室へ戻ると、既に生徒達は次の授業の準備を進めていた。

 というか、書類を書いただけで1時間目の授業が潰れていたのだが……。


 「確か、次の時間割は……と」


 俺はは端末を開き、確認する。

 教科は世界史、場所は第三会議室だった。


 「第三って……どれだけ広いんだよ……。

 仕方ない、場所を聞くか……」


 俺は近くにいた男子生徒に話し掛け場所を聞く。


 「済まないが、第三会議室の場所を教えて欲しい」


 「編入生か、いや俺は少し忙しい。

 お前の隣にいたクレシアに聞けばいいよ」


 そう言うと、去って行く。

 向こうが忙しいなら仕方ない、隣の彼女に聞こう。

 やはり、元の立場が立場なので俺から声を掛けると、皆が避けていく。

 仕方なく俺はまだ席に残っていた自分の隣の席であるクレシアに声を掛けた。


 「クレシアさん。

 突然済まないが第三会議室の場所を教えて欲しい」


 「第三会議室……。

 私も次同じ科目だから案内するよ。

 この学院、結構広いだろうからさ……。

 やっぱり、大変だよね」


 「ありがとう、色々助かる」


 そして俺は彼女と共に例の教室へと向かった。


 「シラフはこの学院どう見えた?」

 

 そんな事を彼女に尋ねられた…

 とりあえず思った事を率直に伝える。


 「そうだなぁ……。

 まあ、とにかく広いっていうのが第一印象。

 あと多種多様な文化なんだなって事かな。

 知らない国の文化をこの学院に訪れた時に多く見かけたからさ」


 「やっぱりそうなんだ……」


 「そう言うクレシアさんは、学院をどう思っているんだ?

 学院にそれなりに長くいる人の意見としては?」


 「うーん。

 そうだなぁ、私は結構楽しいとは感じてるよ。 

 私のお父様がこの学院で医者として働いているから、私はここで生まれて育ったの。

 だから、やっぱりこの学院というかこの国は大好きなんだ」


 「そうか……いい国なんだな」


 「うん。

 あと、私の友達がサリアの生まれなんだよ。

 今は違うクラスなんだけどね。

 だから、友人から聞いた知識で少しはサリアについての知識も知ってるの」


 「それは意外だな。

 サリアの国土自体はそんなに大きな国ではないからさ。

 正直、教会の本部がある隣国のフリクアや列強と名高いアンブロシアの方がより知れ渡ってそうなくらいだからな」 

 

 そんな他愛ない話をしながら廊下を歩く。

 今日会ったばかりの彼女は物静かな印象が大きかったが、話してみると意外に会話が弾んでいた事に驚く。

 ようやく学院生活で最初の友人が出来たと、そう感じていた。 



 午前中の授業を終えた俺とクレシアは成り行きで昼食を一緒に取る事になり、俺達は教室に戻っていた。


 「そろそろ来る頃だろうとは思うんだよな……」


 「一体誰が来るの?」   


 「俺の家族、あるいは……」


 教室内がざわついている中、扉が開くとその視線が一点に集まった。

 向けた先には恐ろしい程の美女もとい、例の人物がそこにいるのだ。

 長く美しい銀髪の髪を揺らし誰かを探している、いや探しているのは自分だろうか。

 更に、その女生徒と彼女の頭上には見慣れた小さな妖精が飛んでいた。


 「やっと見つけたよ、シラフ!」


 女生徒の声にこの場にいた生徒全員の視線が俺に向かう。

 隣に座っていたクレシアも同様だ。

 そんな様子に俺は軽くため息をつく。


 「えっと……シラフ。

 あの美人の上級生とは知り合いなの……?」


 少し戸惑いを見せる彼女の様子に俺は答える。


 「ああ、自分の姉こと、シファ・ラーニル。

 あの小さいのも俺の連れでリン……。

 つまり身内だ」


 「あー……、なるほどね」


 クレシアは今の状況を理解しきれていなかった。

 そんな彼女の様子を知らない姉さん達は、気付けば俺達のすぐ隣に来ており。


 「シラフ、端末に連絡先の登録しに来たよ。

 やっぱり家族で連絡が取れないのは不便だからさ」

 

 いつ見ても眩しい存在、いや今は眩し過ぎているのか。

 自分のペースで物事を進め、こちらの反応を待たずどんどん言葉を一方的に投げかけてくる。

 とりあえず、色々と目立ってしまうのでさっさとこの状況を終わらせたいのが本音だ。


 「分かった、分かりましたから!

 少し端末を貸して、やり方は教わってるから」


 そして姉さんは俺に自分の端末を手渡した。

 俺は朝にルーシャから教わった方法で姉さんを電話帳に登録する。

 登録を終え、端末を本人に返した。


 「はい。

 多分、これでいいはずだよ」


 「ありがとうシラフ」


 「それと姉さん……」


 「何かな?」


 「目立つ行動は控えて欲しい。

 周りの視線がさ………」


 「そんなつもりは無いけど……」


 「とにかく、用が済んだら出てってくれ。

 周りの視線がすごいからさ。これ以上目立つと流石に色々とやばい……」


 「はーい………、つまらないなぁシラフは……。

 ああ、そうだった……。

 私の試合が午後の三時から第六闘技場ね。

 一応、私の応援には来るんでしょう?」


 「まあな、例の主様と共に観戦に向かうから。

 試合本番でもあまり目立ち過ぎないように……」


 「わかってるわかってる。

 そもそも試合する時点で色々目立つ前提なんだけど

 それじゃ、また後でね!!」


 俺に軽く手を振り笑顔を振りまきながら彼女は教室を去った。

 嵐のように訪れた彼女が去って行った瞬間、俺に向かって突然人集りが形成さらていた。


 「おい、あの人誰だよ!」

 「姉さんって、まさか……。」

 「うらやまし過ぎるだろ。」

 「あの人知ってるんだろ、名前と番号教えてくれ」「あの美人誰なの、編入生。紹介してよ!」

 等の声が俺の周りで大きく騒がれる。


 俺の後ろに退避しているクレシアは少し怯えている様子、巻き込んで済まない。 


 姉さんの存在で一気に俺への注目が集まったことに、なんとも言い難い歯がゆさを覚えた。

 姉さんから溢れるあの存在感は確かに認めるが、いくらなんでも俺の扱いとの差が酷すぎる……。

 

 「いや、あれはその……」


 まあ、姉さんが色々と騒がれるのは自分でもある程度予測はついていたし、多少は頭で分かってはいた……。

 でもまさかここまでとは思わなかったのだ。

 姉さんの教室では、一体何が起こったのだろうか?


 騎士団の入隊した新人男衆は、姉さんの姿を見るとすぐさま歓声が巻き起こるのが、恒例行事と言われてる程である。

 あの様子に、同期の女達から軽蔑の眼差しが向けられる程だが、一定数は姉さんの取り巻きの一人になる程。


 昨年には確か、入隊式でナンパされたとか言ってたが、いつもこの調子の彼女が本当に学院に来て良かったのだろうか?


 いや、自分には関係ないこと。

 考えたところできりがないし、考えないようにする。


 さて、俺がどう対応しようか色々と言葉に悩んでいると、先程から俺の後ろに退避していたはずのクレシアが俺の右手を掴み引っ張ってくる。


 「今は逃げよう……シラフ。

 私に任せて」

 

 「クレシア?

 急に、どうして!?」


 クレシアの言葉に少し唖然とした直後、少し強引に俺を引っ張り人集りをかき分け、共に教室を走り去ることになる。

 後ろから追って来る数名の姿を見やりながら、俺は自分の手を引く小柄な少女の姿に困惑。

 第一印象からして明らかに内気な様子の彼女が行った大胆な姿に、驚きは隠せないでいた。


 さて、これからどうしたものか……。


 今後の学園生活において、僅かな不安に煽られながらも今は目の前の彼女を信じるしかないのだろう

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