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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第二章 炎の覚醒編 序節
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第十六話 学院へ

 帝歴403年 7月18日


 俺達を乗せた船はこの日、学院の港町に到着した。

 その後は西側の都市であるオキデンスに向かう為に現在は列車に乗り継ぎ移動している。


 「これが列車かぁ……。

 ねえシラフ、こっちの奴だとサリアの列車と比べて振動とかが全く感じないけどどうしてなの?」


 リンは俺の頭の上にちょこん座りながらお菓子をつまみつつ質問してきた。


 「確か、列車自体を魔力とかで浮かせながら走っているからじゃ無いのか?

 というか俺の上でお菓子を食うなリン。

 お菓子のクズが髪に掛かるだろ!」


 「えー、別にいいんじゃん。

 まぁでも浮いてるなら列車が揺れないのも当然だね」


 「細かい仕組みはさすがにわからないけどさ、学院の技術力の影響だろうな、恐らくは。

 全く、これが世界最先端の技術が集まる学院国家の凄さなんだろうなぁ………」


 そんなため息を付きながら、俺は窓の外へと視線を向ける。

 サリアにも鉄道路線は存在しているが、ここの列車程の速度はまず出ない。

 体感的に、倍以上の速度は出ているはずなのだ。

 車輪が壊れるくらいなら、いっそ浮かしてしまえという発想からきたのかもしれないが………。

 鉄の塊を浮かす発想は正直すごいと思う。 


 「シラフにもわからないなら仕方ないか」


 リンはそう言うと、俺の頭の上から降り隣の方に座り残ったお菓子を平らげた。


 窓の外から見える街の景色はサリアの王都以上に発達しているように見える。

 いや、至極当然の事だろう。

 学院国家であるこのラークは世界最先端の技術が集まっている都市でもある。

 帝国が世界を統一した記念として世界中の技術を結集させて造られた都市国家。

 今年で創立348年となったらしいが、世界中のありとあらゆる技術の粋が集まり発展した都市と言われるだけある程。

 この学院事態が世界の縮図とも化していてもおかしくないのである。


 世界各地の国の自治区を各地に置き、こちらにある地方の農村や町単位がこちらでは小さな国のように運営されている程であるから、正にこのラークは世界の縮図とも言えよう、


 「シラフ、なんか気になる事でもあるの?」


 「別に……ちょっと暇なだけだよ。

 あと2時間程で向こうに着くがそれまで特に何もすることが無い訳だし。

 船の上なら、外で多少の剣の素振り程度ならしてたけどさ、ここじゃ流石に武器を振るう訳にもいかないだろ?」


 「確かに、シファ姉もすっかり寝ているし。

 ふぁーあ、私まで眠くなってきた」


 俺の向かい側の席で、姉さんは静かな寝息を立てながら眠っている。

 相変わらずの美貌に、見慣れている彼女の姿に危うく見惚れそうになるが………。

 年頃には明らかに毒そのもの、年々と平常心を保つのが難しくなってきた頃でもある。

 

 「全く……いつも無防備なんだよなぁ……

 この人は……」


 「ねえシラフ?

 そういや、あの海賊達はどうなったの?」


 「ああ、あいつらの身柄は向こうで何とかしてくれるらしいよ。

 賊の取り調べまで俺達の仕事では無いだろうし?

 後で、事件の様子だとか当時の状況を聞き込みされるだろうがな」


 「あー、確かにそうだね。

 まあでもさ、無事解決して良かったよねシラフ!

 私達も怪我しなかったし、ほんとによかったよね!」


 俺達の船を襲撃した賊の身柄は、学院側に預けて後ほど細かい事情聴取に移り、その後は相応の裁きが下されるだろう。

 彼等がその後がどうなるのか、そこまで自分達が関わるような事はないはずだ。


 「それで、シラフ?

 これからどうするんだっけ?」


 「オキデンスに着いたら、まず最初に編入の手続きをしないといけないだろ。

 その後に向こうの校長、学長とかへの挨拶もあるし。

 それに、明日は明日で色々と忙しいだろうしな。

 色々と問題が山積みなんだよなぁ

 第二王女のルーシャの事、忘れてないよな?」


 「あー、あの王女様か……。

 姉と妹はしっかり者なのに、あの人は少し怒りっぽいから苦手だなぁ。

 特にシラフには当たり強いし、私もなんかペット扱いしてくるしさぁ………、

 ねえシラフ、私は学院でどうしていればいいのかな?

 一応二人に付いて来てから言うのもあれなんだけどね、何してればいいの……?」


 「それ、今更俺に聞くかよ。

 まあ大きく騒がない程度なら好きにしていればいいんじゃないのか?

 姉さんや俺の方の寮を行き来したり?

 適当に菓子や昼寝に貪ってればいい。

 どうせお前は、授業を聞いてても寝てるだけだだろうからな?」


 「確かにそうだね……って、私の扱い酷いよ!

 私そんなに食い意地張ってないよ!

 私よりも、シファ姉の方がもっと食べるし!」


 「そこで張り合うのかよ。

 というかお互い様だろ、そこの二人は。

 俺からしたら同じくらいだ。

 とにかく、やることは沢山あるんだ。

 気を引き締め無いといけないと」


 「はーい。

 それじゃあ、私も適当に寝てるから着いたら起こしてね」


 適当な返事をリンは返し、姉さんの方へと向かうと膝の上に寝転び、そのまま数分後には共に寝てしまっていた。

 

 子供らしい二人の様子に呆れながらも、列車での一時もたまには悪くないと思った。



 列車が目的地であるオキデンス地区へと到着し、駅の改札を出ていくと俺達を迎えに一人の青髪の青年がこちらの方へと向かってきた。


 「あなた様方が、ラーニル家の者ですか?」


 声を掛けてきた青年は腰に剣を帯びており、手入れの模様から相当な業物だと鞘から抜かずともその実力が分かった。

 その上、かなりの使い込みも見られた為、目の前の人物は年齢相応以上に強い人である見ただけですぐに理解した。


 「はい、お迎え感謝致します。

 私は、サリア王国のラーニル家現当主のシファ・ラーニル。

 この子が私の弟のシラフで、そしてこの小さな妖精の彼女がリンです。

 あなたが、今回の案内役であるラノワさんで間違いないかな?」


 珍しく姉さんの丁寧な言葉遣いを見た気がする。

 一応は令嬢みたいな物だから出来るだろうとは思っていたが、仕事モードの彼女を見るのは珍しい光景だろう。


 「はい、確認しました。

 お尋ねされた通り、私はこのラークの現八席を務め今回あなた方の案内役を務める、ラノワ・ブルームでふ。

 本日は何卒よろしくお願い致します」


 「よろしくお願いします、ラノワさん」


 「あなたのお噂で校長から聞いておりましたが、噂に違わぬ類を見ない程の美貌ですね。

 ここで立話を続けるのもアレですので、あちらの車で移動しながら今後の手続き諸々のお話をさせていただきます。

 では、どうぞこちらへ」


 ラノワに案内され、俺達はその車に乗り込む。

 車内にてラノワは薄い黒い板のような物に映像を映しながら俺達に学院の説明をしていた。


 「これは学院に住むの生徒及び国民全員に配布される端末と呼ばれる代物です。

 これを用い、学院での授業で扱う教科書であったり簡単なメモや学院からのお知らせや課題の配布、または買い物等にも使用しますので無くさないようにお願い致します。

 もし紛失等があった際には手続きを踏まえた上で新しい物をお渡しする事になりますのでご了承下さい」


 「了解しました」


 「それと……。

 今、こちらの端末に表示されている画面に左右どちらの手でも構いませんので置いてもらえますか」


 ラノワさんに言われた通りに姉さんはそっと端末の上に右手を置く。

 数秒後、電子音が鳴り響くと咄嗟に姉さんは思わず手を離した。


 「大丈夫ですよ、生徒登録の手続きをしただけですから。

 こちらをご覧下さい。

 これが現在のシファ様の情報です」


 端末には姉さんの顔写真と、いくつかの情報が記載されていた。

 書かれていた内容は……



 氏名 シファ・ラーニル  性別 女性

 種族 混血種 (天人族✕EEE)  

 年齢 EEE  出身地 サリア王国 

 編入日 403年7月18日 4年5期生

 魔力等級 EEE

 学位序列 申請無し



 「これがあなた様の登録情報となっています……。

 ん、でもなんだこの表示は……不具合か?

 すみません、後で直しておきます。

 別の端末を用意してありますので、弟さんはそちらをお使い下さい」


 端末に表示された情報が気になったのか、姉さんはラノワさんへ質問を投げかける。


 「あの、学位序列って何ですか?」


 姉さんが質問をすると、ラノワさんは端末の画面を変え映像を用いて説明を始める。


 「学位序列は、この学院で年に一回開かれる闘武祭という祭典の格付けとなっております。

 順位が高いと学院での成績同様に学院から様々と要請や補助、高待遇を受ける事ができます。」


 「闘武祭?」


 「はい。

 闘舞祭とは毎年十月に開かれ、その年の学院最強を決める生徒同士の戦いの祭典です。

 大会の成績によって学院から様々な特典や恩恵がありますし、腕に覚えがある場合登録をすると良いかと思います。

 私も、その中で最強の八人の一人を務めさせてもらっている身でしてね」 


 「最強の八人………」

 

 俺がそう呟くとラノワさんは言葉を続けた。


 「学位序列上位八名、通称八席と呼ばれ私はその序列第五位です。

 闘武祭に出場するのは例年約百万人程度、9月の始めから予選は始まっており十月には中央特区にある巨大な闘技場での戦いになります。

 去年の優勝者は入学2年目にして優勝しましたし、この戦いで問われるのは純粋な個の実力です」


 「なるほど……。

 シラフは登録する?」 


 「俺は、もう少し考えてから判断するよ。

 少し、面白そうだけどさ」


 「そう、私も今はいいかな……。

 途中から申請とかは出来るの?」


 「はい、闘武祭期間中は申請出来ませんがそれ以外の期間ならいつでも問題ありません。

 腕に覚えのあるのなら是非ご参加下さい。

 いずれは私とも直接戦うかもしれませんがね」


 「分かりました。

 その時は是非とも」


 それから俺は姉さんと同じく生徒登録を済ませ、リンも登録を済ませた。 



 氏名 シラフ・ラーニル 性別 男性

 種族 人間  

 年齢 16 出身地 サリア王国

 編入日 403年7月18日 3年5期生

 魔力等級 三等級 

 学位序列 申請無し

 氏名 リーン・サイリス 性別 女性

 種族 EEE  

 年齢 EEE 出身地 サリア王国

 編入日 403年7月18日 特殊区分

 魔力等級 ーーー

 学位序列 申請無し

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