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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第一章 理想の生き方
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第十五話 決別と期待を胸に

 幼い頃に見たとあるモノ。

 姉さんの部屋にあった壁を埋め尽くす程の大量の日記達の存在。

 そこに記されている古すぎる日付。

 

 知ってはいけない何かを、幼い頃の自身が垣間見てしまった瞬間であった



 「でもこれって、かなり昔だよ……。

 よく見るとけっこう古い物だし………」


 「確かに古い物だけど……」 

  

 そう、古いのである。

 いや、明らかに古過ぎているのだ。

 今手に取ったある日記の日付、自分も見た事がない字とかで書かれた日記が存在しているのだ。

 日付はサリア歴よりも遥か昔であろうモノ。

 千年前、いやもっと以前の彼女の記録で間違いない。

 

 「もしかしてあの人、幽霊か何かかな?」


 「いやだったら触れるのはおかしいだろうよ」


 「それじゃあ一体何なの?」


 「…………、わからない」


 少なくとも深く関わってはいけない。

 僕は日記を元の場所に戻すとリンを連れてそそくさとこの部屋を出て行った。



 古い記憶が脳裏をよぎる。

 奴の言葉に俺は少なからず心当たりがあった。

 

 「その様子では心当たりがあるようだな」


 「何が言いたいんだ、お前達は?」


 「シファ・ラーニル。

 彼女は危険な存在だと、私達は見ている」


 「彼女が人間では無いからか?」


 「いや、彼女の神器だ」


 「姉さんが神器使いだと何故分かる?」


 「無論だとも。

 お前も知っていると思っていたんだが?」


 「それはまぁ、そうでしょう。

 姉さんが俺に神器の扱い方を教えてくれたんですから。

 でも、お前達が知っているのはおかしい」


 「………、とにかくこちらが言いたい話は簡単だ。

 彼女を危険と判断した場合、我々は彼女の敵になるだろう。

 その時はいずれ、この国は愚か世界全土に対して彼女は牙を向く可能性が高い。

 そんな話だ」


 「……何?」


 「ある人物からの依頼で、彼女を殺すように頼まれている。

 雇い主は言えないがそれなりの身分のある人物だと言っておこう」


 「どうしてそれをわざわざ俺に言う?

 秘匿義務は無いのか?」


 「雇い主からはお前にだけは口外する事を許された」


 「訳がわからない。

 雇い主の名前は?

 俺の知っている人か?」


 「二度も言わせるな、雇い主の名は言えん。

 しかし強いて言うとすればお前は既にその人物を知っている。

 向こうはお前を覚えていたようだからな。

 それだけは言えるだろう」


 「何!?」


 奴の一言に俺は凄まじい衝撃を受けた。

 敵は俺を知っている……。

 そして、俺も知っている人物なのだと………。

 つまり何らかの形で既に関わっているという事だ。

 姉さんを殺そうとしている存在に、俺は既に関わっていた……。


 「これ以上の事は言えない」


 「………。

 で、俺に何をさせるつもりで呼び出したんだ?」


 「彼女の力は私でも無視は出来ない……。

 協力が得られればそれでいいが、敵に回れば非常に厄介極まりない存在だ。

 我々の計画、あるいはお前が属するサリアや十剣の脅威となる可能性が高い存在だ。

 その時が訪れた際に、我々に協力してほしい。

 学院でも少なからず、お前の力を借りる事があるかもしれないが……」


 「何を、何を……言うかと思えばお前は……!!」


 俺は煮えたぎる感情のままに席を立ち奴に近づくとその胸ぐらを掴み上げる。


 「お前の目的は何だ!はっきり言え!!

 神器使いを殺す?姉さんを殺す?

 それが貴様の何になるんだ!


 訳のわからない戯言を抜かす目の前の男に異様に腹が立った。

 煮えたぎる感情をそのままに奴に言葉をぶつける。


 「覚えておけ!!

 あの人を、家族を傷つける存在ならば……、

 国も世界も関係ない!!

 俺の家族を、大切な存在を害する奴は誰であろうと決して容赦はしない!!

 十剣や騎士も関係ない!

 ラーニル家の、あの人の家族としてお前達が姉さんを害するなら、俺がお前達を止めてやる!!」


 「………」


 「そこまでです!」


 気付けば俺の喉元に短刀が突き付けられていた。

 短刀を構えているのは先程まで無言を貫いていたシンその人であった。

 彼女の動きに全く俺は気づかなかった。

 怒りに任せたとは言えそれなりの警戒は常にしていた、しかしそれでも気づけなかったのだ。


 彼女の動きを、俺は捉えられなかった。


 「っ!!」


 自分の愚かさに苛つきを覚えながらも渋々と俺は手を降ろした。

 狩られる。

 そんな感覚が全身に突き刺さっていた。

 ラウの実力でさえ姉さんは一目置いていたんだ。

 その従者であるシンもラウと同等、あるいはそれ以上であってもおかしく無い。

 抵抗する余地が無く、敵地の真ん中に放り込まれた事と同じ状況なのだ。


 「協力に感謝します、シラフ様」


 冷静さを取り戻し、俺は奴等に言い放つ


 「これではっきりとした

 ……俺はお前達とは決して分かり合えない。

 カオスの契約者が何者なのか、はっきりしない。

 加えて、姉さんを……家族を殺そうとする輩の力になんてなりたくもない!!」


 「非常に残念だ」


 「………、覚えておけ。

 お前達がサリア裏切り、俺の大切な人達を害するなら俺は決して許さない。

 必ずこの手で、お前達の野望を止めて見せる」


 「好きにすればいい」


 「お前達と話す事はもうない。

 話は終わりだ」


 そして俺は部屋を出ていく。

 彼等の目的は絶対に阻止する。

 もう二度と家族は失わせない、そう心に誓って



 帝歴403年 7月18日

 

 船の甲板で姉さん達と外を見ると巨大な港町が見えていた。


 「あれが、学校なのシラフ?」


 「そうとも言えるけど、少し違うのかな。

 あれが学院じゃなくてあの島いや大陸全体が学院なんだよ」


 「あの見えてるの全部学校って事なの?」


 「そうだよ、まあ大き過ぎて四つに分けてるらしいけどさ。

 姉さん達、学院の資料何も見ていないのか?」


 「四つもかぁ」


 二人はどうやら見ていないらしいので、俺が代わりに説明をする事になった。


 「そうだよ、その中で俺達は西側の土地で名前はオキデンス。

 東区のオリエント、北区セプテント、そして南区メルディ。

 それら四つ地区の総称して学院国家ラークって訳」


 「へえ……。

 ねえあの島ってどれくらいの人がいるの?」


 「国民の総人口が3000万近く。

 そのほとんどが学生のみで占めている国で、その過半数近い2800万人近くが学生で占められているそうだ」


 「そうだって、シファ姉」


 俺の話を聞いて姉さんは。


 「そうなんだ、まあ何とかなるんじゃない?

 楽しみだね、こっちでの新生活!」


 姉さんが俺の話を聞いていたのかよくわからない。

 まあ、とにかく俺達の新たな日常が始まろうとしているのは確かだろうな。 


 新たな出会いと秘めた誓いを胸に徐々に近づく大陸に向けて心を躍らせていた。

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