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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第一章 理想の生き方
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第十四話 人か否か

帝歴403年7月13日


 「ある人物の殺す事、それに関係する」


 「ある人物?」


 「カオスの契約者だ」


 「カオスの契約者?

 契約者って何なんだよ?」


 ラウから告げられた契約者という単語。

 何の事だかさっぱりだが、ラウからすぐに返答が返ってくる。


 「契約者。

 それはお前達の間で言われる神器使いの総称。

 帝国では八英傑、そちらでは十剣と称される者達を示す言葉だ」


 「なるほど……。

 って神器使いを殺すってふざけているのかよ」


 「いや、ふざけているのでは無い。

 真面目な話だ」


 「………。

 それで、そのカオスの契約者は何処にいるんだよ?」


 「現状その手掛かりはない。

 ようやく名前がつかめたところだからな。

 現時点ではお前を含めて三人しか契約者が分かっていないが、どれもカオスの契約者とは違う。

 加えて現在の我々は圧倒的に敵に対しての情報が少ないのが現状だ」


 「なるほど。

 それで、どうしてカオスの契約者を殺すんだ?

 その理由を教えて欲しい。

 そして、それに何で俺の協力が必要なんだ?

 そんなに力が欲しいのなら、姉さんに頼る方が早いだろう?

 お前もそれなりの実力者なんだから、姉さん力くらい既にお見通しだろう?」


 「そうだな、確かに彼女は強い。

 とにかくだ、順に答えていくと。

 初めに、カオスの契約者を殺す理由について。

 それが帝国の悲願。

 いや、私達の存在理由と言える可能性が最も高いからだ。

 我々はノエルが人生を掛けて滅ぼそうとした者を殺す為に作られた事はシンから引き継いだ情報により彼女亡き後、知る事が出来た。

 これは既に決定事項、しかし彼女が何を成そうとしたのか依然として分からないのが現状だった。

 しかし、ようやく新たな情報源として過去にノエルの助手を務めていた奴との会遇を果たした。

 例の賊の長、名はサバンと言っていたが……」


 「賊の長が科学者の助手だと?

 賊の言葉なんか信用出来るのか?

 で、その言っていた情報は一体何なんだ?」


 「帝国滅亡から翌年経った後に帝国に訪れたらしい。

 奴はその影響で指を失い、更には顔等に魔力中毒の症状と思われるアザや裂傷が見られた」


 「魔力中毒の典型的な症状か……。

 それで何の為に奴は帝国に行ったんだよ?」 


 「友の遺体を探す為だと言っていた。

 その者の名は、ラウ・レクサス」


 「ラウ・レクサス…?

 お前と同じ名前の者か……。

 待てよ何処かで聞いた覚えが……。

 確か、帝国の……有名人だよな」


 「彼は当時帝国の英雄と呼ばれていたらしい。

 若くして八英傑と呼ばれる者達の長でもあったと聞いている」


 「八英傑……、帝国版の十剣的な組織の事か。

 まさか、いやあり得ない。

 賊の長が謀った可能性があるだろ」


 「まあ、そこは否定しがたいがな。

 しかし奴はある人物を訪ねろと言っていた。

 その人物の名前は、アルス・ローラン。

 現在は学院の方に住んでいるらしい。」


 「アルス・ローラン。

 確か……その人も八英傑だった人だよな」


 「そのような経緯があり、我々はカオスの契約者とかいう人物を見つけだす手掛かりとして、アルス・ローランという人物と会わなければならない。

 全てはカオスの契約者を滅ぼす為に」


 「それで姉さんについての事は何なんだよ?」


 「一つ質問をする。」


 「何をだよ?」 


 「彼女はいつから生きている?」


 「…………何が言いたいんだ?」


 「答え無いのなら、私が言おうか」


 「何をだよ?」


 「彼女は人間ではない、そうだろう?」



 その言葉を告げられた瞬間、幼い頃に経験したある一幕が頭に過ぎった。

 あれはそう、姉さんに引き取られてまだ間もない頃の出来事だった。



 この屋敷に住み始めて、しばらくが経ったある日。

 シファさんは僕にこんな事を言った。 


 「いい、私の部屋には絶対入らないでね」 


 「どうしてです?」


 「いやー、ちょっと散らかっているし。

 あんまり見られたく無いからさ」


 「分かりました。

 あなたが言うなら従います」

 

 それからしばらく経ったある日、リンは勝手にシファさんの部屋に入って行った。

 俺は彼女を引き戻す為につられて、渋々と彼女の部屋へと足を踏み入れた。


 「こら、駄目だろリン!」


 「何だよ……シラフの癖に。

 いいじゃん別に面白そうだしさ?」


 「シファさんに言われただろ!

 この部屋には入るなってさ……」


 「でもさぁ、あそこまで強く言われた色々気になるじゃん。

 あの人の唯一の隠し事でしょう?

 きっと隠れて美味しいお菓子置いてるとかだよ!」


 「全く、そんなことある訳がないだろう?

 ほら、いいから早く出るよ」


 「ちぇっ、つまんなーい!

 ほんとシラフはいつもいい子ぶるんだから」


 リンを連れて部屋を出ようとするが、僕は思わず部屋の光景に足を止めた。

 大きな本棚の壁一面を覆うようにそこにあったのである。

 本棚、たくさんの本が壁に立て掛けてあるかに思えたがよく見ると、その背表紙はどれも同じような物。

 全てが同じような不可解な本達に俺は僅かな興味を抱き思わずそれを手に取った。

 本の中身が彼女の日記である事にすぐに気付き、その中には、一日の出来事が丁寧にまとめられている。


 「ふーん?

 人には言うくせに、人の日記を勝手に見るなんていい趣味しているね?」


 「そんな気は無かったよ!

 ただ何の本を読んでたのか気になったんだ。

 あの人が本を読むところなんてあまり見ないからさ」


 これ以上はさすがに悪いと思い日記を閉じようとするが、日記に刻まれた日付に僕は違和感を感じた。


 「あれ……この日付」


 「どうかしたの?」


 「いや、日記の日付がおかしいんだよ」


 「ん?どれどれ?」


 その日記の日付はサリア歴221年8月。

 現在は帝歴の395年だ。

 サリア歴が用いられていたのは確か帝国の支配下に下ったとかで変わって以来だから実に400年以上も前の日付である。


 この日付からだと少なくとも今から700年くらいは軽く経っているだろうか。


 「……ねえ……シラフ。

 これ誰の日記かな?」


 「え……そりゃあ多分、シファさんのだと思うよ」


 それを確かめる為に他の日記も手に取り確認。

 自身の好奇心に任せ、手当たり次第に日記達を手に取り筆跡を確認する。

 字の癖は何となくだが全て同じに見えた。

 小難しい内容の言葉は理解出来ないがあの人の筆跡の癖が自分の確認した日記全てに現れていた訳で……


 何か、見てはいけないモノを見てしまった気がした


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