確率はただの確率でしか無いのだよ
こんばんわ。遅れました
何故こうも余裕寂々で、想いの丈を叫んでいるのには理由があった。
今の彼女は後ろ姿であり、宇宙警備員の初心者マークが付いている俺は後方で、その他多数の人達を見守るのが俺の仕事ってわけよ。
だから彼女の後頭部しか見えないが、こーやって匂いをスン!と嗅ぐと彼女の体臭が分かるってもんだ。
(良い匂いかどうか分からんが、彼女の匂いの精霊がルルララァーって踊っているような心意気に俺も同調して、ルルララァーってなるぜ!)
ルンルンランランと目を輝かせ、前方向をロックオンし続けていると、横からチョイチョイと俺の腕を突つく方がいた。
「なんだい?オババ」
「あと一分で試練が待ち受ける。」
なね!?早い!!一分って早すぎない?
「って……誰の?」
プルプルとした人差し指を俺に向ける。
どうせ後ろの奴だろうと思い『後ろにお譲りしまーす!』という感じで避けたのだが、やはり!指先は俺に向けていた。
もう、大気圏は越えて宇宙空間で何も誰も危険人物すら見当たらないと言うのに……俺だけ試練って何だソレ!?
そんなことを思っていると俺の上司……名前は覚えていないが、格好からして筋肉バカと名付けようと思う。
筋肉バカは俺に毒味をさせて、イケルか否かを確めたいそうな。
まあ、俺の専属させられた理由として『負けた事をが無い』という点と『体は丈夫』という、最も警備員に必要不可欠な所といえよう!
そんなこともあってか、監査様にお出しする食事は前もって俺が毒味という新人イビリがちらほら見え隠れする。
この宇宙警備員会社のモットーは、強さだけではない!更に『運』も必要となってくる。
それは、社長持論でも表示されているように『運より強いもの無し!』というのが、配属されたら配られたり大声で暗唱させられたりする。
運?……任しとけって!
「ほら!毒味しろ。」
(こっ!これは……白の皿に盛り付けられた物は匂いからして、バワ鳥。この艶と潤いから推測するに、一歳の肉と見た!
このソースは……分からん!何かの香辛料が混ざっているな。)
「この緑!もしや、バワ鳥と爪の垢とアーガ星特産のアガ海苔を使ったのかぁぁ!!」
「……いや、メニューにノってる事を大声で言わなくていいから。
早く食べろ。」
「頂きマンモーぉ」
【要点だけ言う】
何故俺は五千年以上もの間、生肉しか食べていないのだろうか?そもそも、俺は何故生肉にこだわって来たのか不明だ。
それについて一つの考えが導き出された。
俺は自然を愛するあまり、生物の血肉をいっぺんたりとも!無駄にしてはいけないと考えるのだ!
だから!こんなにも愛しく隅から隅まで味わうのが俺の流儀であると大声で発表したい。
「ウメェ!!」
「オイ!?全部食うな!!」
……そだな。
横槍が来たのだ、そう!その飯は監査さんのモモコ様のモノって言ってやがるんだよ。
そんな訴えは、俺を素に戻らせた。
「ったく。
ほら、これは同じ調理器具から作られ更に作った一晩中も同じモノだ……食うのは摘まむだけだぞ!」
入念に『これは毒味だ!』という奴の声を聞いてハッとした。
アレ?一分経過してない??
そう!あれから……一分は多分経過してると思うんだが?気のせいだろうか。
嫌!ちがう。まさに!コノ皿がまさに俺にとって試練の時なのだと知った。
そして考えた……何が試練なのか?……直後!『バッワワワ』というバワ鳥の鳴き声が俺に囁いたんだ。
そして、知って気付いたんだ。
(俺、毒耐性あったぽくね?)
どうする!?こんな摘まむ位じゃ、毒かどうかも分からないぞ!?というか……コレ毒??
イヤ!全っ然分かりません!というか美味しいの一点張りじゃね?
なので強行策へと出た!コレは俺への試練。
だったら、受けて立つ。
「すいません。皿が小異空間へ吸い込まれました。」
「ハ?」
「アキ!説明頼む!」
「はーい!説明するね。
現実的に話すけど、小異空間というのは存在するのよ。有るものが一瞬にして消える……これは、一種のブラックホールと言っていいわ。
ブラックホールと小異空間は、別のモノだから!同じ様に考えないでね。
つまり!小異空間に吸い込まれた皿は、皿の物体の質量というエネルギーで小異空間の入口とぶつかって相殺するのよ。
だから、一瞬に消えた皿は戻って来ません。
因みに起こる確率は、ざっと九百億分の一。
行っとくけど!同じ質量での話だからね!?」
そうなんです!俺のセイでは無いんです作戦だ。宇宙が!小異空間がいけないんです!というセイにした。
やり方は簡単!まず小ブラックホールを出して吸い込みブラックホールを消えさせる……以上!
我ながら完璧な作戦だ。
さらに、アキの天才的な説明で俺の完璧さがプラスになりおったわいな。
「すすすすすすいません!
どうやら小異空間が連発してしまい……携帯固形物しか残っていません。」
一度有ることは、二度や五十二度程有るんだよ。コレが宇宙の神秘なのだよ。
「いえ大丈夫です……もうすぐで、宇宙警備会社第四ステーションにたどり着くので。」
明日もよろしく