言い訳に占いは不向きだな
こんばんわ
……
ある女性が一人で書類を整理し終えて、元からあったイヤリングを外し、違うアクセサリーを付けたとたんに周りを二三度チェックした。
「帝国の密偵及び体温……無し……」
はめ終えたイヤリングを軽く指で摘まむと『ピロリ』と本人しか聞こえない音が鳴る。
「今……時間は空いてますか?」
これは、遠くの人と通信できる機械だ。
このイヤリングの特徴で言うと、何も操作をしていないと言うことは、指定先が固定された機械……通信機ということになる。
「いつも御苦労様です。ガンナー帝国は……その星は自然が豊かで楽しかったでしたか?」
通話する際、彼女が周りを気にし出すということは容易に目上の人か重役の人と考えれるだろう。
「楽しかった!?……いえ、楽しいとかは特に……定時連絡と報告です。」
「その星も最後の監査場所となりましたね。帰って来るのを楽しみにしてますよ。
珍しいですね。定時連絡は、書類を読み上げるだけなのに、今日は報告もあるのかしら?
では、報告が気になりましたので、この通話を長引かさないように報告だけということにしておきましょう。」
「お気遣いすいません!
では、報告します……エルフの郷にて地毛が黒でありつつ瞳が黒という【第一世代】を発見しました。」
「まあ、珍しいですね。」
「ですが!くまなく調べようと近付いたのですが、とたんに目標が逃げ出してしまいました。」
「そうなのですか。緑竜王も青竜王も見つけたら、さぞや御喜びになるでしょうに。
ですが髪の色を一瞬で変化させるネックレスや、目の色を変化させるファッショングッズもあるみたいだから……」
「はい。
ソノ線で拝見していた所、突如私の目の前に老婆が湧いて出て来まして……逃げられました。」
『ンフフ』と声を潜めて笑っている音声を聞いた彼女は少し驚いた顔を見せ『笑う所では、ありません!』と一括したあと平謝りをするのだった。
「いいのですよモモコ。
……こちらからも重大な事件がありますから、よく聞いて下さい。
近々、戦争が起こる可能性が出てきました。」
「な!?それはどう言う!」
彼女の叫び声に、配置された帝国住民兵は驚いて駆け寄ってきた。
だが、あと一歩というドア前で『大丈夫です!こちらのミスです!』とキッパリと伝えた事・彼女も自身が言った事で冷静に戻れることが出来た。
「取り乱して……すいません」
「いいえ。
落ち着いて聞きなさいよ?戦争というのは、ただの可能性ということ。
あなたは知らないだろうけど、原色竜には神様から頂いた【神に願いを】という魔法?といいますか……スキルという物が存在します。
ただし、そのスキルは万能では無いのです。
それは、生涯でたった一度しか出来ないスキルなのです。
それが……最近、そう!あなたがエルフの郷に行っていたあの日に何処かで行われたのです。」
……
(百歩譲って戦争になった場合、この星は資源が豊富だから拠点となるに違い無い。
けど……他の国や街・村はどうするの!?)
彼女の頭の中は、もう戦争で一杯だった。
これから、宇宙に行くロケットの安全火災退避訓練をするというのに頭がクラクラとしそうで倒れそうになっていたが、自分は星々を巡り大国家の【監査】なんだぞ!というので踏ん張ることができた。
所かわり
「えー!?監査さんの説明受けれないのー!?」
現在私は、ある一室で尋問をされていた。
何故、こうなったかと簡単に説明すると、最初に私に聞いてきたのは問番の人『来た理由は?』の問いには、『モモコさんに会いに!』と言った。
それで、第一関門突破となった。
おそらくエルフの郷と同等で、恋人に会いに来たのだろうと思われたんだと思う。
次の関門は、武器の不法所持や滞在目的についてだ。
そこは隠すことなく『監査さんに会いに!』と言ったところで御用となった。
今は、もっぱら
「何故!大国家ゼントバブリーの御息女の名前を知って、且つ!ココに来る事を知っていた!?」
「占いで知りました。」
(ゼントバブリーってドコよ?ゼントファブリじゃねぇの?)
「ウソを付け!!!」
何故か俺だけが、この一室にいる。
では彼女達はドコへ行ったのだろうか?
「彼女達を見習え!」
「へ?」
「職員番号!たノ5454アキと、たノ5455オオババはこの帝国の宇宙開発部門へと就職するために来たそうだ。
それに付け加えて、自ら選んだ科目の筆記試験には見事合格したから、明後日監査殿が乗るロケットに配備が決定する程の実力者なんだぞ!
彼女達も言っていたぞ……『今は薬が切れた状態で、何を言っても無視して下さい』とか『恋にうつつを抜かしているからな……ソレを見ても冷静に対処してくだされ』と警告されたぞ!」
(お前!ソレヲ信じるのか!?って違う!!
マジか?先の先の……そのまた先を読んでモモコさんと宇宙へ!?……)
「イイ。イイね。」
「何が、イイねだ!」
「少し黙って貰おうか……私の目を見ろ!」
発動!ダークアイ。これは、ただの催眠術では無い。俺が良し!と思うまで、脳内に強制的にインプットされた事は忘れられないと言うわけだ。
というわけで
もうコノ星ともお別れだ!ありがとう万物の墓場よ!そして、ありがとうモンスターのお肉よ!ありがとう!惑わし捲った人達よ……そして、さようなら。
小窓を覗く間もなく、重い重力がのし掛かって来る。
この重力と振動は、空気抵抗やロケットの重さもあるが、俺達のこの星での思い出が重くなっていると思うんだ。そう!俺は思うんだ。
「おい!何を呑気に外を見ている!?
今の護衛は、知らされたと思うが多重力で周りの動きが鈍った者達から極稀に暗殺者が出て来る恐れが有るんだ!
我等には、強化パワースーツを着ているから自由に動けるからって目線を反らすな!」
「了解であります。」
(目を!……反らさないぜ。)
あれよあれよと色々と惑わして行く内に、オババ達がいた上層部へとたどり着く。
オババは、俺の行いも占っていたそうで『宇宙警備員になれ』という指示が出たので、難無くガンナーでの監査さんの説明会にも参加できた。
それに続いて俺は、監査さんを守る!という名目で俺は結構近くに配置されている。
「宇宙って、ワクワクするかもっ!」
「宇宙は初めてか?」
「全然。……だけど、モモコさんとは初めて。」
隣にはオババが控えている。
そう!俺達警備は、このその他多数から漏れ出る暗殺者がいるかいないかの警護なのだ。
更には、御食事を運ぶのも俺達の仕事で毒味も俺達の仕事だ。
(同じ御飯を食べる!……なんて素敵な仕事なのか!?)
明日もよろしく