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監査さんのタメに!  作者: ふ~ん
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あなたの名を身に刻みましょう

こんばんわ

 決戦の朝は早いのが常識。いつもの身支度をするのも大事だろうが、やっぱり俺の欠かせないのが精神統一だ。

 これは、只の精神統一ではない。それは、目を閉じて心眼で物事を把握するかの様な……果ては、微量の音さえも聞き逃さず精神集中するのである。


 そうする事で、見えてくるものがある。

 それは、生物の芽吹いた産声。それもあるだろう!そよ風が木々の間を通り抜ける音は精霊の囁き声なのだろうか。

 その楽しそうな囁きは、この先の山々を越えた場所からでさえも聞こえてくる。


(……アキか。近付いて来る。まだ、早朝だぞ)


 アキは俺の部屋の前まで来ると、ドアのノックしてきた。

 『入るね』と言い、俺の了承無しでガチャとドアを開けて入って来くのだった。


「はぁ……九時間前と同じ格好じゃないの。」


「精神統一をしている。……おっと!俺の体に触れると手が蒸発するぞ。

 それでも構わないと言うなら、触っても良いがな。」


 只の精神統一では無く、人の形をしたダークはあぐらをかいて瞑想する。

 それは、身体中からゴアアと出る見えない湯気……もとい蜃気楼と言うやつが発生している。


「空間が歪んでいるぞ!やめろって。

 というか聞くが、何のための精神統一だよ?」


 そんなことも分からないのか。

 【決戦】と伝えたハズだ……


「何のため?……それは、彼女に会う準備だよ。

 彼女に会う為に、幾千幾万の壁が立ちはだかろうとも俺は一騎当千の如く正統に凪ぎ払う準備だよ!!」


「そんな準備、必要ねぇよ!」


「何てことを言うんだ。決戦前夜は、思いを深めて明日の為に冷静に着手するものだぞ。」


 アキには、何を言っても納得をしてくれない。

 なので、後方にいたオババに精神統一の大事さを語らねばと思い語ったところ、思いもよらない言葉が反ってきた。


「精神統一は、緊張して眠れなかっただけ。」


 そうとも言う。

 思いもよらない言葉が、俺の精神へと攻撃されたが……このような攻撃は攻撃にあって攻撃に在らず!!


 そう!こんな、弱々しいツッコミはツッコミに在らず!!なのだ。

 俺の食らった……今までで最強のツッコミを今教えてしんぜよう!


……

 俺達の朝の精神統一の話しは、一般的の起床する奴らよりも二時間早く騒いでいた為もあり、起床と着替え・更には朝食はスムーズに取り終えることが出来た。

 なお、体の回りを蜃気楼の様な湯気は早く起きたというのも幸を生じたのか、約一時間で解除となった。


 宿の人からの情報で『今日の午後から防災訓練……津波と土石流の予測回避』を郷の広場でする事をゲットする。

 なので、俺達はいち早く!場所取りを実行したわけだ。


 朝食を食べ終えての場合取りは大成功となった。それは、誰が見ても分かる得ること……そう!一番前なのだ。

 もうすぐだ!もうすぐで最強のツッコミが来るのだよ。


(フー。いよいよ。あと、数時間後に来るぜ!)


 今は、正座をして居取りの精神で受け身を取っている。それは、あらゆる攻撃に対して全て受けて払ってくれよう!という意気込みである。


 正座の両手は、ソッと膝に木の葉が降り注いで来たかの様な柔らかな感じで、ソコに有るようで次の行動が流線型の動きに転じることだって出来よう。

 足と九十度となり立っているのは背中である。その素直でピンッ!と立っているのは、何処かの動物が太陽の日の光で日光浴している……只の日光浴では無い!体温調節をしている姿である。


 隣では『そんなの来てからで良いでしょ』と聞こえるが、そもそもコレは前もって準備し備えるモノなのだよ。

 だがしかし、自称天才殿には俺の気持ちなんて届くハズもなく……そういう説明は置いといて、それよりも先に俺の心の準備が必要だと感じたんだ!


 そして、来た。


 太陽が少し傾き掛けた時『こちらです』という言葉を拾い、再度もっと聞きたいと思い耳を澄ますとソレは『ハイ……ありがとうございます。』という……


(来た!!天女様の声が聞こえる。)


 俺の体は『ビクンッ』と一瞬跳ねた。それと共に『え?来たの』というアキの反応は正しく、俺の行動パターンをよく把握している。


(どんどんと近くに!?近くに寄って来ている!)


 そして


「皆さん!こんにちは。本日は、津波や火事等の自然災害の予防策と訓練を説明しますのでよろしくお願いします。

 私の名前は、モモコと言います。短い間ですがよろしくです。」


 この時!俺はある重大な事件に遭遇していたんだ。それは……


(ああ!!目を開けるタイミングが無かったぁ……何故だ!?何故こうなってしまったんだぁ?

 ……っと、その前に名前を覚えなきゃな。)


「……と言うわけですが。あの、一番前の方?自身の太ももに爪で私の名前を入れ刻むの、やめて貰えますか?」


「心配ご無用でごさるよ。私の体は、些細なキズですと直ぐに再生するでござる。

 こーやって、身を削ることにより天女様の名前も覚えやすくなると言うものでござる。」

(って!ござるってなんだぁぁぁ!???)


 目を閉じて、スラスラと話し繰り出すのは何故か『ござる』という語尾。

 自分の知らない、新たな部分の発見と天女様の誤解を解く為に、自分に最強のツッコミを入れるものの中々目が開きそうにも無い。


「アラ?あなたの地毛は黒なんですね。」


「あ、イエイエ。目には見えなくとも私の目にも写ってござるよ……あなたの艶々の黒髪も、素敵で候うつかまつります。」

(つかまりますって何だオイ!?何処の国の奴だよ!?)


 俺には分かる。俺の褒め称えた髪を、自身でサラッと撫で上げる姿が俺には分かっている。

 それは、彼女の動きから発せられる微細な風と音で、彼女の動きは完璧に網羅してやってるぜ。


「……失礼ですが、目の色は?」


「?……当然、黒ですが。」

(黒い竜だぞ!……当然だろ。)


「見せて貰えますか?」


 なぬ?マジか??

 ちょっと待ってね。ちょっと待ってねぇー。


 俺はこの時『好機!』と本当に思った。天女のモモコ様が、俺に目を開けるタイミングを下さったのだから嬉しくって仕方がない。

 嬉しい気持ちを抑えて、冷静に話して行きゆっくりと目を開けたんだ。


「あ」


「あ?」


 彼女は俺を見下ろしていた。ソレもそうだ。俺は座っているからな。

 それは置いといて、見下ろす彼女から流れ落ちる黒く綺麗な髪は、俺の顔先数センチといったところに浮いている。


 更には、見下ろす彼女が覗き込む姿といい眼差しは俺には!……俺には耐えられない!!


 なので


 見つめ会った時間は、数秒なのか十数秒なのかは不明だが、俺は耐えられないと思い隣の座っていたオババを掴んで俺の目の前……つまり、俺と彼女の間へと置いた。


 そして、俺は事もあろうか!その場を『あひょひょああぁ』と意味不明な言葉発しながら逃げ出してしまった。


 大好きな彼女なハズなのに、逃げ出してしまったんだ。

明日は、休ませて下さい。

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