コマ撮りアニメ
芸術の話とそれに伴うルポルタージュです。
古びた商店街にひっそりと佇むフリースクールがある。色んな悩みを抱えた若者が集まり、時には泣き、時には笑い、語り合う尊い場所。
そんなフリースペースでアート活動が行われた。元々フリースペースと深い関わりのある作家さんが、かねてから共演したいと仰っていたあるアニメーション作家さんを呼んで、公開制作を行った。それにはフリースペースに通う僕を含めた若者も共同で作品を制作した。
皆、思い思いに絵を描いていた。玉子から生まれた宇宙人、さらさらと書いた女性の横顔、野原を駆け回る猫。個性豊かな絵をパラパラ漫画のように描いていた。
僕はと言えばとても絵心がないので、どうしたものかと思ったが、幼少期に描いていた汽車の落書きをそのまま書いてみた。汽車が駅を出発してそれがガタゴトと街を抜け、山を抜け、海を抜ける。僕も段々アイディアが浮かんできて、しまいには空を飛んで宇宙に行く。大昔のフランス映画「月世界旅行」を少しオマージュして最後に月に行く。そんな絵を何となく書いた。
それを作家さんが上手に繋げてパソコンに入れて、あれよあれよという間にアニメーシュンにしてしまった。
スクリーンに写し出されると皆が描いた絵が命を与えられたように生き生きと動き出した。回る女性の顔、可愛い雨粒、宇宙人、猫、そして汽車の旅行。それらが見事に調和してとても味のあるショートアニメに仕上がっていた。
と思ったら、アニメに付けるBGMを作ろうということになり、無茶ぶりで僕が付けることになった。とりあえず擬音を適当にのせていたら、作家さんがギターで伴奏を付けてくれた。僕もそれに助けられて、何とか出来上がった。
作品制作が終わると、開場の皆で和気あいあいとソーシャルディスタンスを守りながら団らんに華を咲かせた。芸術のことをゆったりと語り合えた。まだまだ北風が冷たい2月の街に、とても暖かい空気を運んでくれた。それで心も暖かくなれた。こんな場所があれば、こんな寂れた街も捨てたものではない。