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清宮質文作 「夢の中へ」
高崎のとある美術館。そこで木版画を観た。四方20㎝ほどの小さな木版画であった。
淡いスカイブルーの色彩の中に、猫が1匹描かれていた。猫は小さなゴンドラにちょこんと座り、その近くに結晶が猫を見守るように描かれていた。猫は一体何を思っているのか?観客を見つめるわけでもなく、ただ、横を向いていた。
背景のスカイブルーは、画面の右側へかけて、段々と淡くなっている。夕焼けなのか暁なのか、分からない。しかし、移ろいでいく時の流れを感じずにはいられなかった。
その猫は 亡くなったのだ。作者の清宮質文先生は、大切にしていた猫を想って描いたのだ。
ゴンドラは、天の地への箱船。そのゴンドラが、私の夢の中へ来てくれたら・・・。先生はこう想ったのかもしれない。
背景の色彩は、まさに時の流れ、移ろい。生から死へと移ろいゆく、生命が避けられないテーゼ。
しかし、そこには恐怖、残酷を感じない。ただ、淡く、温かいものが描かれているだけだ。
猫への愛情。別離よりもまたの再会を願うように、私は感じた。そこには空也上人が、鹿へ注いだ愛情に似た何かを、僕は感じたのだった。