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相田家の苦しい決断
「行く…」
椿樹はそう一言だけ呟いた
その時、春樹は妹の言葉にびっくりしたと言う
だが…なぜ妹がそう言ったのかすぐに理解した
それは親戚の厳しい視線
広島で受けた祖母の「いらない子」と言われた時と同じ
親戚達の視線だった
口には出さないがその態度が空気がピリピリと伝えられ
嫌な雰囲気を醸し出していた
その状況が幼いながらの椿樹にも伝わったのであろう
一言だけ呟いた後、椿樹は何も言わなかった
ただ静かに話を聞き顔を伏せ目線を下に向けていた幼い椿樹
そんな妹を見た長男の春樹も同じく「僕も行く」と言ったが
次男、伸樹だけは猛烈に反対し「嫌だ!!行きたくない!!」と大泣きをした
春樹の本音も椿樹の本音も本当は伸樹と同じ気持ちだっただろう
泣いて「嫌だ!!」と叫びたかっただろう
そんな次男、伸樹の叫びも思いも虚しく親戚達の説得により
3人の児童養護施設行きがその日に決定した
その日の夜、初めて兄妹3人は祖父母の流す涙を見るのだった