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相田椿樹
二年前、私の友達で相田椿樹という女性がいた。
彼女は突然、風が一瞬で吹き抜けるが如く『死』を選び、自分のアパートの部屋で首を吊り亡くなった。
「あたしはこれまで生きてきた人生の中で自分にとって満たされた人生を送っていない。男性にも仕事にも・・・」
そう、彼女はいつも語っていた。
人の好意をいとも簡単に振り払い、人の親切さえも信用しない性格の彼女の口癖は、
「こりゃあたしはいつか地獄行きだね」
だった。
そう思いながらも辞められない。
満たされなくて寂しくて、心にぽっかり空いた穴を埋めるように、その満たされない何かを探して縋るように、人の好意を一つ一つ並べては『男』という名の飾り物を綺麗に棚に並べてうっとりと眺めているようだった。
ーー周囲に何と言われようが構わない。
ーーあたしはクズで良い。
ーー愛なんて信じない。永遠なんてどこにも無いじゃない。
そういつもポツリと呟く彼女の瞳には一体どんな世界が映っていたのか。私は知りたくなった。
彼女の生きてきた人生、相田椿樹という女性の全てをー・・・。