夢渡りの邂逅と同族嫌悪 序章。
いつも読んで下さりありがとうございます。
今回は、ゆうりを大好きなあの御方との邂逅を書き始めて見ましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
何処までも白一色が広がる世界の中の一角に、まるで水鏡のような巨大な水面を見詰める一人のこの世の物とは思えない美しさを宿した少女の姿が有った。
「……ねえ、立花。」
「はい。」
その少女が深紅に彩られた唇を開き、気怠げに誰かの名を呼べば、瞬き程の合間にその名の持ち主である漆黒の執事服に身を包んだ男が現れる。
「……優李に会いたいわ。」
少女が視線を反らすことなく魅入る水面に映し出されているのは、満面の笑顔で笑う一人の人物だった。
変わらない満面の輝く笑顔に惹かれ、目の前に広がる水面へと思わず手を伸ばしかけていた事に気がつき、バツが悪そうにその手を引っ込める少女。
「誰も園宮に会いに行くことを止める者はおりません。 お好きになされば宜しいのでは?」
いつもの癖が始まったとばかりにため息を付きながら応える男へと、少女は唇を尖らせて抗議する。
「だって……全てが終わって、私が私自身を許せるようになるまで我慢するって決めちゃったんだもの。」
「既に園宮は全ての元凶を打ち倒したのですから、あとは貴女様自身を許すだけだと思いますが?」
男の言葉に少女は呻き声のような声を漏らし、じろりと視線を向けて再び口を開く。
「……優李があれを倒してからそんなに時間も経っていないのに、すぐに会いに行ったら誰かさんに“自分には甘いんですね”とか、なんとか言われそうじゃない!」
「それは被害妄想と言うのですよ。 貴女様の忠実なる部下である者達がそんな無礼なことを思う訳が無いではありませんか。」
己を睨む少女の言う“誰かさん”が自分の事を指しているであろうことを理解しながらも、素知らぬ顔をして応える男に少女はムスッとした表情を浮かべてしまう。
「……そうね……自分を許せた訳じゃないけど、それよりも大切なことがあるわよね!」
暫し水面を見詰めながら何かを考えていた少女は、険しい表情を浮かべて勢いよく立ち上がる。
「あの子の幼なじみとして、長年優李の魅力に気が付いて引き寄せられてきた異性を葵さんと一緒に、その本気を確かめていた者として、迷うことなく行動するべきだったわ!」
水面に映る満面の笑みを浮かべる優李の隣りに立つ、優李を見詰める眼差しに愛しさを全く隠しもしない一人の新緑の髪の男へと鋭い眼差しを送った少女は、時間を惜しむように動き出す。
「立花! 今すぐ優李に会いに行く……ことは優李の大切な世界に負担を掛けちゃうから、前みたいに夢渡りをするわ!!」
「……畏まりました、彩花様。」
やれやれとため息を付きながら苦笑を浮かべる、長年付き従った主の見慣れた背中を見送った立花は水面に映る優李の傍らに映る新緑の髪の男へと同情めいた眼差しを送り、再び己を呼ぶ主の声に応えて姿を消す。
白一色の世界には異世界で精霊王となった優李と、その想い人であるブラッドフォードの姿だけが映し出され続けるのだった……。




