家康に過ぎたるものと言われた男
先に鷲津砦を攻略していた朝比奈左京亮泰朝は、丸根砦の異変に気付き、井伊直盛に鷲津砦の守備を任せ、本多平八郎忠勝と一緒に1500の兵を従え、丸根砦の援軍に訪れたのである。丸根砦を攻略していた松平勢は、すでに壊滅状態。松平元康を始め、松平元康の右腕であった酒井忠次は、打ち取られ、石川家成の姿も見えなかった。朝比奈勢1500は、士気高々な佐久間勢350と討ち合うことになるのであった。
「我らの兵の方が強い!恐れず進め!」
朝比奈勢先鋒の本多忠勝は、配下の兵を巧みに鼓舞しながら佐久間勢を討ち取っていた。一人また一人と自身の配下が討ち取られていくのを見て、
「関羽殿、お願いがあります、あの先鋒を止めてくだされ。」
「任されよ、往くぞ赤兎。」
盛重の頼みに、赤兎の手綱を握りしめ、兵と兵との頭上を駆け抜け、忠勝のもとへと駆けていく。忠勝が見えると愛刀を掴み、一撃しかけた。キーン。槍と槍とが撃ち合い、激しく音を立てる。関羽の猛攻に対し、打ち返すことは儘ならないが、必死に食い止める忠勝。五合程討ち合うなかで、関羽はこの小僧を討ち取ることを躊躇し始め、思い切って、手刀を繰り出し気絶させることに成功する。うめき声を上げながら馬上から落ちそうになっている忠勝を関羽が掬い上げ、自身の馬に横たわせた。そして、朝比奈勢を次々に討ち取っていった。
一方、朝比奈泰朝も忠勝が捕縛されたのを見て、兵を退却させることを決意する。
「退却、退却せよ!殿はわしが務める。鷲津砦におる井伊直盛と一緒に引け~!」
と伝令を出しながら兵を退却させていった。本多忠真に、兵を任せ、自身は殿として佐久間勢を食い止めていた。徐々に追い詰められていく朝比奈泰朝。その男気に惚れてしまった関羽は、彼を討つのではなく、捕縛することを決意。兵たちで囲み、捕縛した。
関羽たちの死闘の最中に、織田信長の軍勢は、田楽桶狭間にて、今川義元本陣を急襲し、今川義元を討ち取ることに成功していた。
戦いシーンは難しいです。
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