降臨
建安24年のある日、一人の男の命が尽き果てた。孫権軍の潘璋将軍の配下で、馬忠という男が、三國志に知られている英雄を斬首したのである。
そして幾日もの時間が流れた。
時は1560年、桶狭間。
ここでも世紀の大戦が始まろうとしていた。駿府、遠江、三河に力を広げていた今川義元が25000の兵力を持って、上洛を開始し、ここ尾張にも近付こうとしていた。
「大学助、わしに、尾張の未来に、命をくれ。」
織田信長は、信秀の代より信頼のおける佐久間大学助盛重に対し、丸根砦に入り、今川軍の侵攻を押さえてほしいと命令したのである。
丸根砦に入るということは、敵の最前線に送られ、命の保証はない。
「若のためなら、喜んで死地に入りますぞ。」
そして、佐久間盛重は丸根砦に入り、今川義元先鋒の松平元康率いる三河武士2000の軍勢に対し、戦国時代弱兵と言われた尾張兵500で白兵戦に挑もうとしていた。三河武士は、戦国時代でも薩摩、甲斐に次いで強いとされていた武士たちであった。
そんな中、時を越え、場所を変え、一人の英雄が降臨したのだ。
「ここは、どこだ。わしはあの時、殺されたはず。」
男は周りを見渡すも状況が飲み込めずにいた。覚えのないところにいるのだから。
そんなとき、一本の矢が風に乗り、彼に迫ってきていた。当たりそうになる瞬間、ガンっと矢を切り落とした男がいる。盛重だ。
「そこの若者よ、こんなところで何をしているのだ。危ないぞ、早く立ち去りなさい。」
彼は、盛重に礼を言うと同時にここがどこなのか訪ねようとしたが、目の前には松平元康の軍が迫って来ており、それどころではなかった。
盛重の心意気に感服した男は、彼の助太刀に入ることを決意したのだ。
「我が名は、関羽。我の前に立ち塞がるものどもよ。青龍の名の下に滅するがよい。」
青龍偃月刀と愛馬赤兎を従え、松平勢に突撃した。突然の出来事に圧倒されてしまった三河武士は、次々にうたれていった。
同時に佐久間盛重も仰天してしまったが、味方と化した関羽に遅れは取らまいと奮起した。そんな闘いの中、関羽の一降りが松平元康の首にかかり、地に堕ちることになる。
主君松平元康が討たれてしまい、逃げ出すもの、立ち竦むものなどがいるなかで、
「松平家家臣酒井忠次、同じく石川家成、いざ尋常に勝負!」
と、関羽、盛重に対し、一騎討ちを挑んできたのである。
酒井忠次の相手は、関羽が務め、石川家成には、佐久間盛重が当たることになる。
忠次は、関羽に対し、雄叫びをあげながら突撃するも彼の武の前に一撃で討たれることになる。
「関雲長、酒井忠次を討ち取った。」
その声に反応し、家成も盛重に突撃する。槍と槍とか激しく火花を散らす中、五合ほど打ち合い、家成の背中に刀傷を与えることができた盛重であったが、味方の伝令に家成を逃がすことになってしまう。
「盛重様、鷲津砦が落とされ、朝比奈泰朝率いる1500の軍勢が迫っています。」
週に一度のペースで更新できればと思っています。