プロローグ
ここでついに高校生活が始まるのか。校門の前に立ち、校舎を見上げている山田晴樹の心を期待と少しの不安が占めていた。
「今日から、やっと」
そう呟き、今にもにやにやしてしまいそうな顔を隠そうとしたがやはりこの気持ちは抑えられない。
入学式に備えるため、玄関に貼り出されていたクラス分けの紙に書かれたクラスへと晴樹は移動した。晴樹のクラスは4つあるクラスのうちの四つ目、つまり四組であった。
腕時計の針は七時三十分を指している。気持ちが先走ってしまうのを抑えられず、予定よりも三十分ほど早く着いてしまったのだ。
「まだ誰も来てないよな…」
自分のクラスの教室の扉の前に立つ。扉を開けると、イヤホンをしながら机につっぷしている男子生徒がいた。
自分の出席番号が書かれた席の椅子に座る。一度、教室を見渡してみる。すると、
「おはよう」
つっぷしていた男子生徒が顔を上げて、こちらを向いて挨拶をした。
「わっ!お、おはようごご、ございます…」
晴樹はいきなりの挨拶に戸惑ってしまって、上手く挨拶を返すことができなかった。
「な、何を聴いてるの?」
男子生徒に晴樹が尋ねる。
「ん?あぁ、ロックだぜいぇい」
「ロック?僕もロック好きなんだよ!」
晴樹は父親と兄の影響で小さな頃からギターを弾く。上手い下手は別として、晴樹はギターが大好きであった。
「へえ、そうなんだ。あ、名前教えてよ」
男子生徒が晴樹に尋ねた。
「あ、山田晴樹です、よろしく。君は?」
「俺は中野悠太。まあ、よろしく頼むわ」
そう言うのと同時に、悠太が晴樹の左手の指のあることに気付いた。
「晴樹はギターとか弾くのか?」
晴樹の左手の指はギターを弾くので皮が擦りむけている。
「うん、ちょっとくらいなら。よくわかったね」
「まあな。ほら、山田は指の皮が擦りむけてんじゃん」
「中野は楽器やるの?」
歯が見えるほどにこっと笑った悠太は
「俺はベース!なあ、俺と組もうぜ」
その後続々と他のクラスメイトたちが入って来たが、晴樹と悠太は好きなバンドについてや楽器について、時間を忘れて語っていた。