家族
6時にセットした目覚ましがなった。
俺はそれを止めて、二度寝したい気持ちを抑え、ベッドから降りた。んんーと一度だけ伸びをし、シャワーを浴びに風呂場へと向かった。
シャワーを浴び終え、髪をドライヤーで乾かしながら、俺は今日の夢のことを考えた。悪魔なんているわけがない、そんなことは分かっている。しかし、あいつのあの言葉
「明日の夜にお見せしますけどね」
が頭の中にひっかかっていた。
夢ならもっとこう、なんだ?ご都合主義?俺の知りたいことは知れるみたいな?そうでないときは知れないでいいんだが、明日に見せるって言うのか?見せれるならその場で見せればいいのに・・・・・・
とまぁ、いろいろと俺は考えた。そして俺が導き出した答えは、俺の悪魔の力について何も知らないから、夢の中でその力を発揮できなかったとまとめ、結論は昨日のは夢ということでおちついた。
そんなことを頭の中で考えているうちに、髪はすっかり乾いて終わっており、変な癖がついていた。俺は、慌てて寝癖直しで癖を直して、制服に着替えるために自室に戻った。
「「お兄ちゃん、誕生日おめでとう」」
制服に着替え、朝食を取りにリビングに入ったら、普段は俺より遅く入ってくるはずの妹達が、最近はまったく見せてくれなかった、とびっきりの笑顔で俺を向かいいれた。
「恋・・・愛・・・」
俺は可愛い妹達の名前をつぶやいた。
如月恋〈きさらぎこい〉と如月愛〈きさらぎあい〉それが俺の妹達の名前だ。
一卵性双生児で見分けがつかないほど似ているため普段は、コイがポニーテールでアイがツインテールという髪型で見分けている。そんな妹達が、最近はツンツンだった妹達が、最高の笑顔で待っててくれた。やばい涙がでそう。
「お兄ちゃんいつまでそこに立ってんの?」
とコイ
「どうかしたの?お兄ちゃん?」
とアイ
「なんでもないよ。ありがとうな、コイ、アイ」
そう言って俺は、アイの向かいのイスに座った。テーブルには、いつもと同じような朝食が並んでいた。俺の隣に母が座り、いただきますとあいさつをし、朝食を食べ始める。
母は、朝早くから仕事があるため、普段は3人で朝食を食べているが、今日は休みを取ったらしらしく久しぶりに朝食を家族そろって食べている。そのせいか、いつよりもおいしく感じられた。
朝食を食べ終え、登校の準備を始めた。
「うわっ、数学2時間あるし」
とぶつぶつ文句を言いながら作業を進める。
数学の先生は、俺のクラスの担任で、全校生徒から信頼されており、俺も嫌いでない。しかし、数学はすごい苦手で数字を見ただけで、頭が痛くなる。学校に行く前から憂鬱になった。憂鬱ってどう書くんだっけ?そんなことを考えていたら、外から声が聞こえた。
「キラ、迎えに来てあげたわよ」
ふと時計を見る。時刻は7時35分。
「いつもより早いだろ」
外に聞こえないようにそう言いつつも急いで準備を終わらせ、玄関に向かった。
玄関から出ると、妹達と1人の少女が楽しそうにおしゃべりをしていた。しかし、少女は俺を見るとすねたようにこう口にした。
「キラ遅いわよっ」
「ゴメンな」
遅くねぇよ、むしろ早いし。そう口にすると、さらに機嫌が悪くなるので我慢して謝った俺。
「反省しているんなら別にいいけど。じゃあね、コイちゃん、アイちゃん」
「いってくる」
「「いってらっしゃい、お兄ちゃん、雪お姉ちゃん」」
妹達は、授業参観の振替休日で休みらしく、登校しない。俺達は妹達に見送られ、学校に向かった。
「コイちゃんとアイちゃんってホントいい子ね」
「どうしたんだ急に?」
さっきまでの話題は、昨日のテレビの話や友達の話だったのに、急に話題を変えてきた。幼なじみに疑問を感じた。
「だってね、誕生日おめでとうっございますてわざわざ言いに来てくれたのよ」
「それで迎えに来るのが早くなったのか?」
「まぁ、それだけじゃあないんだけどね」
「ん?ほかにはどんな理由だったんだ?」
「ひ・み・つ」
彼女はふふっと笑い、唇に人差し指をあてそう答えた。その仕草に不覚にも可愛いと思ってしまった。
結城雪〈ゆうきゆき〉それが彼女の名前だ。
昔は男勝りで、可愛げなんてなかったが、中学生くらいからは女の子っぽくなっり、高校に入ってからは、髪型をストレートからツインテールにした。それがとっても似合っていて外見や性格から男子の一部からの人気が凄いらしい。また、スポーツ万能でバスケ部に所属しており、1年からレギュラー入りしている。
「そういえばユキ、昨日3組の鈴木から告られたんだって?なんて返事したんだ?」
「当然お断りしたわ」
当然なのかよとつっこむべきか迷ったがスルーする。ドンマイ鈴木君。
「おとといはサッカー部のキャプテンの佐藤先輩から告られたんだってな。なんで断ったんだよ?あの人ファンクラブもあるほどイケメンなのに」
「タイプじゃないから」
「そっか」
ユキのタイプってどんな人だと聞こうと思ったがやめた。そもそもユキは、好きな人がいるなんて話はしないし、男に興味がないのだろう。そう考えるとユキってまさか・・・とか思いながら歩いた。
一方ユキはさっきから気のせいかチラチラこっちを見ている気がするんだが、どうかしたのか?
まさか髪の癖が直っていなかったとか・・・いやないか。そうだったら絶対そのことで俺をいじるだろうし。なんだろうなと考えていたら急にユキが止まった。
「どうした?」
「あのさ、キラ・・・誕生日おめでと」
うつむきながらそう言うユキ。
今日誕生日だったんだよな。今日の夢のことで、頭がいっぱいで忘れてた。妹達からも言われた気がするが、それよりも笑顔の方が強くて、思い出すに至らなかった。さっき妹達の話をしたのも、誕生日を思い出させるためか ?だとするといつもより早く迎えに来たのは、おめでとうって言ってもらいたかったからなのか?それなら謝っとくか。
「ゴメンな・・・ユキ」
「ふぇ・・・? いきなりどうしたのよ?」
「なんとなくだけど。まぁ、誕生日おめでとう、ユキ」
「う、うん。ありがとね」
そう言って笑顔になる幼なじみ。
ユキとは、誕生日と生まれた病院、学校が同じだ。また、家が近所で、お互いの母親が親友ということで、物心ついたころには側にいた。
いわば、俺にとっての兄妹のようなものだ。こいつが笑顔になるとついつい、頭を撫でたくなる欲望に刈られる。負けるな俺。
「よしよし」
負けました。今まで一度も勝てません。
「んにゃ・・・んっ。こ、子供扱いしないでよ」
そう言いつつも顔をいつも通り赤く染める。
「悪いな、ついついやっちゃうんだよね」
「べっ、べつに、悪いとは言ってないもん。こ、こんなことやらせるのは、あんただけなんだからねっ」
俺はこれを幼なじみの特権と呼んでいる。視線がいつも気になるけどな。
そんなこんなで学校に着いた。
友達と笑い話をしていたら、チャイムが鳴った。
朝のホームルームが始まる。特にやることはなく、連絡して終了のようだ。赤点の追試の日程、卒業式の予定、話が変わって、強盗の話、物騒ですね。ってか、話変わりすぎじゃね?
ん?なんか眠くなってきた。まぁ1時間目数学だし、頭痛くなって他の教科に響いたら悪いし・・・よし寝よう。
Zzzzz
「キラ起きなさいっ」
その声で俺は目が覚めた。
「ここはどこ?私は誰?」
「ここは学校で、あんたはキラでしょ。しっかりしなさいよ」
「悪い、ボケてみた。んで今何時?」
「もう放課後よ。よくこんなに寝てられたわね。おかげで委員長とあたしが、あんたの付き添いで、呼び出しくらうはめになったじゃない」
マジか!椎名さんに悪いことしたな・・・謝んなきゃ。呼び出し場所はなぜか屋上。先に椎名さんは行ってるらしい。
「ユキ、ゴメンな付き合わせちゃって」
移動しながら本日3回目のゴメン。今日は謝ってばっかりだ。目を合わせてはくれなかった。
「いいけど、あんた寝不足なの?あんなにぐっすり眠って、何かあったの?」
「いや特には、変な夢は見たけど寝不足ではない」
そうこう言ってる間に屋上に着いた。
「来たな如月、結城」
待っていたのは、高坂解〈こうさかかい〉俺やユキや椎名さんの担任で、数学を担当している。
そして、我らが学級委員長の椎名さん。
「まぁ座れや、如月何でお前らを呼んだか分かるか?」
先生は俺にそう聞いた。
「えっと、僕が数学の時間寝てたからです」
「ハズレだ、結城はどう思う?」
えっ違うのか?そう言う前にユキに質問をする先生
「えっと・・・私達が数学の時間寝ていたからです」
「不正解だ。椎名はどう思う?」
私達?お前さっきあんたのせいでとか言わなかったっけ?という前に先生は椎名さんに質問する。
「私もユキと同じだと思ってました」
えっ、俺のせいで呼び出しくらったんじゃないのか?と横に座っている幼なじみにアイコンタクトを送る。そして、それを華麗にスルーする。俺のゴメンを返せ。つーか呼んだ理由はいったい?と言う前にユキが先生に訪ねる。さっきから言うタイミングがとれないな・・・
「先生、じゃあ答えはなんですか?」
「誕生日おめでとうって言うのと勧誘だよ」
「「「勧誘?」」」
「悪魔ハンターのな。まぁ誕生日おめでとうな」
俺らは、先生のその言葉の意味を数分間理解できなかった。