青猫カルテット!
「・・・なに、これ」
というか、何、この状況!?
「・・・あの、え、何、これ」
何で、ネコミミ生えた男の人が、私の上で膝枕されてんの!!?
・・・うん、落ち着け。この状況になったのは、少し前の事だ。整理をしよう。
「ただいまー」
ガチャリ、と仕事から帰ってきて、するとアオトが私を迎え入れてくれたんだ。
「ニャー」
「あ、アオト。ただいま」
「ナーッ」
嬉しそうに鈴をチリンチリンと鳴らしながら、私の周りをトテトテと歩くアオト。
青色の毛で、赤い瞳を携えた、とても綺麗なオス猫。それがアオトだった。
捨てられていたところを偶然見つけて、拾ったのが始まり。
そもそも一人暮らしだったし、猫も好きだったので拾うのに躊躇はしなかった。
「ほら、いい子で留守番してた?」
「ナー」
抱き上げると、鼻先の辺りをペロペロと撫でてくるのがくすぐったいけど可愛らしくて好きだ。
ソファに座ると、必ず私の上に乗って、気持ち良さそうに欠伸をする。
今日もそうだった。それで、私も気持ちよさにうとうとして少し寝てしまって・・・。
それで、現在に至るわけだが。
まさかこの青髪ネコミミ美青年がアオトだなんて私の頭は理解しないわけで。
「あ、あの・・・」
だから、おずおずと、しずしずと、こわごわと、聞いてみる。
「うぅ・・・ん」
・・・起きない・・・だと・・・!?
起こそうと躍起になって肩を揺さぶっていたら、ある事に気付いた。
顔しか見ていないからわからなかったけど、
「・・・・!!!」
ふ、服着てない!!!??
驚いて騒ぎたい気分だったけど、残念ながら身動きがとれないので口を塞いでもぞもぞするしか手立ては無かった。
・・・と言うか、一度裸だとわかったら、もう意識せずにはいられない!!
「お、起きて」
それでもなんとか顔だけ見ようとして、声をかけた。
「・・・ん、香澄・・・」
彼の言葉に驚いたのは、私の名前を知っていたから。
目を開いた。綺麗な赤色の瞳だった。
「ア、アオト・・・?」
「うん、アオトは俺だよ」
彼は自分があの猫のアオトだと言うと、私のお腹に頬を摺り寄せてきた。
「!」
「香澄・・・好き」
驚いて声も出ない、とはこの事だろう。
アオトは起き上がると、私と向かい合うように隣に座った。
「あ、俺・・・何も着てない」
自分の格好に気付いたアオトは、徐に私に身体を摺り寄せてきた。
「・・・!!!」
非常に言いづらいし、言いたくは無いんだけど・・・。
「ア、アオト」
「何?」
「当たってる・・・」
「当ててる」
「はい!?」
驚いて何も言えない。
「香澄、好き。だから俺、人間になってみた」
「は?」
目の前にいる綺麗な少年は、目を細めて、
「俺、人間になれるんだ。まあ、耳とか、尻尾とかは消せないんだけど・・・」
衝撃の一言を放った。
「いつから・・・?」
「結構前から。でも、夕方から朝方にかけてで、しかも俺の意思では変えられないから、今までは香澄の前にこの姿では出てこれなかった」
「・・・でも、今は」
「調節出来るようになった。だから、これからはいつでもこの姿でいれる」
我がペットの大変重要なお話を聞いて、動揺を隠せなかった。
「だから、いつでも交尾が出来る」
「はい!!?」
またまた衝撃の一言が出てきた。
「人間は、好きな人が出来ると交尾をするんだろ?猫と一緒だ」
それは、アレですか。ようするにセッ・・・
うん。やめよう、この場で私も言えば収拾がつかなくなる。
「えっと、アオト?嬉しいんだけどね、私・・・」
「香澄、今彼氏いないだろ?なら、俺にしろ」
「・・・」
バレてた。いや、男の人を家に連れて来た事ないし、それはアオトにバレバレだったんだろう。
どうせ女子会が生甲斐の寂しい女ですよッ!!
「でもね、アオト。私はアオトが好きだけど、そう言う意味の好きじゃないの」
「好きにも種類があるのか?」
首を傾けて訊いてくるアオト。それはまるで猫みたいで・・・って、猫なんだけど。
「うん。私の好きと、アオトの好きは違うの。私は、アオトを家族の意味で好きなの」
そう言うと、アオトは私の首に腕を絡ませて、身体をグッと近づけてきた。
「わっ」
「・・・じゃあ、無理にでも好きにさせる」
「アオトッ!」
思わず大声で呼ぶと、アオトがビクリと肩を震わした。
「・・・あ」
そっか。いつも悪戯をするとこういう風に怒ってるから、反応しちゃったのか。
「香澄、俺、悪い事した?」
「ううん。でもね、ビックリしたの。アオトが行き成りこういう事をするから」
尻尾をゆらゆら揺らすアオト。安心したみたいだった。
「アオト」
頭を撫でると嬉しそうに喉を鳴らした。やっぱり猫なんだなぁ。
「アオトは、他のメス猫を見たことある?」
「ある。でも、香澄の方が好きだ」
「そうじゃなくて」
遠まわしに断られると思ったのか、断言するアオトに苦笑すると、
「猫と人間は、種類が違うでしょ?だからね、恋人にはなれないの」
「・・・じゃ、愛人は?」
何て言葉を知ってるんだこの猫は!?こんな不純に育てた覚えは無いぞ!!
「恋人とか、愛人とか、そういうレベルじゃないの、そもそも恋愛ができないの!」
少し強く言えば、ゆらぐ赤の瞳が、私の心を締め付けた。
「・・・でも。俺は、香澄が好きだ。叶わなくても、いい」
でも、強く決意する瞳に、何故だかホッとする私がいた。
「アオト」
「だから、香澄。この位は、許して」
え?と言いかけた唇を、軽く塞がれた。
少し侵入された舌は、すこしざらついていた。
短編第三弾!色々ハチャメチャになってしまった・・・。
一度で良いのでこんな感じのを書いてみたかったので、満足!
アオトみたいなペットが欲しい←