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ミラクルモルモット

作者: 鶴ヶ友護
掲載日:2026/08/31

 朝起きたら、玄関にモルモットがいた。

 見覚えのない小動物に困惑しつつ、よく見てみるとモルモットには首輪が着いていた。

 誰かのペットだろうか?

 そんなことを考えながらモルモットのことを観察していると、首輪に札が付いていることに気づいた。

『ミラクルモルモットです』

 札には雑な自己紹介が書かれていた。

「ミラクル?」

 首をひねっても答えはわからず、俺はとりあえずその小動物をリビングへと案内した。

 モルモットはリビングに入ってすぐにテーブルへと昇り、テーブルに置かれた食パンを見つめ始めた。

「食べる?」

 朝食に準備したものだったが、まだたくさんあるからいいか、と思い訊ねてみた。

 モルモットは首を横に振る。

 次の瞬間、食パンがフランスパンに変わった。

「なにこれ?」

「ミラクルです」

「誰だ?」

 声の主を探してみれば──モルモットだった。

「これがミラクル?」

「朝は軽めです」

 

 午後になると、モルモットは鉢植えを見つめ始めた。

 しばらく見つめていると、鉢植えに植えられていたサボテンがブロッコリーになった。

「ミラクルです」

「方向性がおかしいだろ」

「緑つながりということで」

 だいぶ雑なミラクルだな。

 心の中でツッコミを入れてから、俺は試しに宝くじを差し出した。

「一等にしてください」

 俺の言葉を聞いて、モルモットは目を閉じる。

 ドキドキしながらしばらく待っていると。

「えいっ!」

 宝くじが二枚になった。

「増えました」

「……あたってない」

「ミラクルですよ」

 枚数の問題じゃないんだよ。


 そんなモルモットとの楽しい日々を過ごしていると、ある日の夜。

「これが最後のミラクルです」

 俺を見つめそう言うと、モルモットは激しく光り輝いた。

 何が起こってるんだ。

 こんな光、初めて……。

 ていうか、最後って……。

 頭の中に湧き上がる思考が途切れるよりも早く、光は落ち着き、やがて消滅した。

「なんだ? なにが起きて? というかモルモットは⁉」

 突然姿を消したモルモットを捜していると、違和感に気づいた。

 なんだかやたらと髪の調子がいい。

 過去一番の髪の質感。

 癖なんてひとつもない。

 ……ミラクルこれ?

 いや、髪の調子が良くなったのは嬉しいんだけど。

 あんな盛大な光を放ってすることがそれなのか。

 そんなことを考えながらリビングを飛び出し、廊下を捜していると。

「ん?」

 玄関になにかが置かれていた。

 駆け寄り見てみれば、モルモットの着けていた首輪だった。

 その首輪の札にはこう書かれていた。

『ミラクルは気にしすぎないくらいがちょうどいい』

「ふっ。なんだよそれ……」

 軽く笑った後に俺は玄関の扉を開けた。

 まだ近くにいるかもしれない。

 そう思って、外を捜し始めた。

 しばらく捜して、わずかな違和感に気づいた。

 通る信号が、全部青だった。

「ふっ」

 小さな笑みが自然とこぼれた。

「たくっ……離れようとしてるのか、早く来てほしいのかどっちなんだよ」

 俺は足に力を込め、夜の街を駆けだした。

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