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書き換えられる過去

中心が静かに“息を吐いた”。


それは音ではない。


空間そのものの密度が変わる感覚だった。


レインは一瞬だけ視界を失う。


そして次の瞬間、


そこに“違う光景”があった。


グランが立っている。


師匠がいる。


だが位置が違う。


距離が違う。


そして空気の重さが違う。


レインは息を飲む。


「……これ、さっきと……」


グランが低く言う。


「始まる。」


師匠は動かない。


だが目だけが鋭い。


レインは理解する。


これは記憶ではない。


再現でもない。


“更新”だ。


中心が、過去をもう一度立ち上げている。


そしてその中で、


「どの結果を残すか」を決めている。


グランが一歩前に出る。


その瞬間、


光景が揺れる。


師匠の声が響く。


「お前は止めたと言ったな。」


グランは答える。


「止めた。」


その言葉と同時に、


空間が“分岐”する。


レインの視界に二つの結果が重なる。


剣が振るわれる未来。


剣が止まる未来。


どちらも同時に存在している。


レインは息を止める。


「どっちが……」


言いかけて止まる。


その問い自体が意味を失っている。


グランが低く言う。


「どっちでもない。」


師匠が目を細める。


「なら、何だ。」


その瞬間、


中心が応えた。


“選ばれた方が現実になる”。


レインの脳に直接流れ込むような感覚。


次の瞬間、


剣が動いた。


グランの剣ではない。


師匠の動きでもない。


だが確かに“結果としての動き”。


空間がひとつに収束する。


レインは理解する。


ここでは行動ではなく、


“確定された結果”だけが残る。


グランの表情が一瞬だけ変わる。


それは驚きではない。


諦めでもない。


“受け入れ”だった。


師匠が静かに言う。


「これでいい。」


グランは答えない。


ただ目を閉じる。


その瞬間、


過去が“ひとつに固定される”。


レインは震える。


「今の……何が……」


グランは目を開けないまま言う。


「決まった。」


短い言葉。


だが全てだった。


中心が静かに沈む。


まるで満足したように。


そして、


次の問いを準備するように、


空間がわずかに“開く”。


レインは気づく。


これは終わりではない。


“確定の連鎖”の一つに過ぎない。


グランが小さく言う。


「これがラストライトだ。」


その言葉は説明ではなかった。


受け入れだった。


レインの中で何かが崩れかける。


だが同時に、


どこかで確かに“見えてしまう”。


この場所は、


過去を変えているのではない。


“どの過去を現実として残すか選んでいる”。


そしてその中心が、


静かに次の選択を待っていた。


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