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世界は、彼女の解釈で転がる  作者: 白澄


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第26話 ひとつに、するということ

 試験場の空気は、さっきよりも静かだった。


 人形を失い、


 場を離れた者たちの分だけ、


 広さが際立つ。


 ――残っているのは、

 “まだ可能性がある”と判断された者だけ。


 トラは、再び人形の前に立っていた。


 木で作られた、


 簡素な人形。


 だが、今はそれが、


 とても脆く見える。


(……次は)

 試験官の合図はない。


 予兆もない。


 だからこそ、

 準備がすべてだ。


 トラは、足元を見た。


 散らばった石。


 大小さまざま。


 欠けて、歪で、揃っていない。


(集める)


 意識を向けると、

 石が、ひとつ、またひとつと浮き上がる。


 前より、速い。


 前より、迷いがない。


 だが――

 浮いた石は、


 やはり不安定だった。


 少し気を抜けば、


 互いにぶつかり、


 弾き合ってしまう。


(……だめ)


(このままじゃ)


 トラは、歯を噛みしめる。


 守るには、

 “並べる”だけじゃ足りない。


 壁にするには、


 隙間が多すぎる。


(……一緒に)


 ふと、

 ある感覚がよみがえった。


 毛糸玉。


 小石。


 集めた石を、まとめたときの感触。


(ばらばらでも)


(集まれば……)


 ――形になる。


 トラは、

 石一つ一つを見るのをやめた。


 代わりに、

 “集まった状態”を見る。


(中心)


(距離)


(……関係)


 石同士の間隔。


 重さの偏り。


 空いた隙間。


 それらを、

 “整える”ように意識する。


 石は、


 回り始めた。


 ばらばらだった軌道が、

 少しずつ揃っていく。


 円。


 いや――


 球。


 完全じゃない。


 歪で、凸凹で、

 美しくもない。


 けれど。


 人形の前に、

 石の集合体が、

 確かに“ひとつ”として存在していた。


 その瞬間。


 ――炎が来る。


 横から。


 速い。


 熱い。


 トラの喉が、きゅっと鳴る。


(……耐えて)


 石の球が、

 炎を受け止める。


 ――ゴウッ!!


 熱が走る。


 石の表面が赤くなる。


 だが。


 炎は、

 人形に届かない。


 数秒。

 ほんの、数秒。


 それで、十分だった。


 炎が消える。


 石のいくつかが、

 床に落ちる。


 球は、

 崩れた。


 だが――


 人形は、

 無事だった。


 一瞬の沈黙。


 次いで、

 試験官の声。


「……続行」


 それだけ。


 合格とも、

 称賛とも言われない。


 けれど。


 トラの胸の奥で、

 確かな手応えがあった。


(できた……)


(まだ、完璧じゃないけど)


 周囲では、

 同じように守りきれず、

 場を離れる者が出始めている。


 攻撃力はあっても、

 “守り続ける”ことは難しい。


 トラは、

 落ちた石を、もう一度見た。


 数が、減っている。


(……次は)


(もっと、まとめる)


(もっと、ひとつに)


 第二試験は、

 まだ終わらない。


 だが、確実に。


 トラの中で、


 “考え方”が、


 形になり始めていた。

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