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世界は、彼女の解釈で転がる  作者: 白澄


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第25話 壊していい、という条件

 ――最初の攻撃は、炎だった。


 試験場の端で、術式が起動する音がする。


 空気が熱を帯び、赤い光が揺らめいた。


「来るぞ……!」

 誰かの声。


 次の瞬間、


 人形へ向かって、炎の奔流が放たれた。


 受験生たちが一斉に動く。


 炎を斬る者。


 魔力で押し返す者。


 氷で相殺しようとする者。


 それぞれの“守り”が、ぶつかり合う。


 ――だが。


 完全に防げた者は、少ない。


「っ、近い!」


「押し切られる……!」


 熱風が吹き荒れ、


 人形の表面が、焦げる。


「退場!」

 試験官の声が、淡々と響く。


 一体、また一体。


 人形が倒され、

 受験生が場を去っていく。


 トラは、動けずにいた。


(炎は……)


(止められない)


 風も同じ。


 水も同じ。


 どれも形がなく、


 掴めない。


 ――守れない。


 でも。


 試験官の言葉が、

 頭の奥で引っかかっていた。


『破壊は許可する』


(……壊していい)


 守るのに、

 壊していい?


 視線が、自然と足元に落ちる。


 床の端。


 試験場の外周。


 撤去された石壁の残骸。


 砕けた石片が、いくつも転がっている。


(……あ)


 胸の奥で、

 小さく音がした。


(火を止めるんじゃない)


(守る“対象”を守る)


 人形の周囲に、

 何かを置けばいい。


 火そのものじゃなく、


 火が届く“道”を壊す。


 トラは、息を吸う。


 足元の石へ、意識を向ける。


 小さい。


 いびつ。


 形は揃っていない。


 ――でも。


 まとまりは、作れる。


(……集まって)


 石が、わずかに震えた。


 浮いた。


 ひとつ、ふたつ。


 だが――


「っ……!」


 バランスが崩れる。


 石は散り、

 床に落ちた。


 同時に、第二波の炎が来る。


 ――ドンッ!!


 熱風が、トラの前を通り抜けた。


 人形は、

 かろうじて無事だったが、


 表面が黒く焼けている。


「……ギリギリだな」


 試験官の低い声。


 合格でも、退場でもない。


 ただ、

 “まだ足りない”。


 トラは、拳を握った。


(今の……)


(考え方は、間違ってない)


 石を集める。


 壁を作る。


 盾にする。


 でも、それだけじゃ――


(ばらける)


(守りきれない)


 周囲を見る。


 剣で受ける者。


 術式で相殺する者。


 みんな、

 「一点」で防いでいる。


 でも――


(全部、同時には来ない)


 炎。


 水。


 風。


 方向も、速度も、違う。


(……ひとつじゃ、足りない)


 石片の向こうで、

 また一人、退場が告げられる。


 試験場は、

 少しずつ静かになっていった。


 トラは、人形を見つめたまま、


 小さく息を吐く。


 まだ、形になっていない。


 でも――


 “壊していい”という条件の意味が、


 ようやく、見え始めていた。


 第二試験は、


 まだ、終わらない。

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