表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界は、彼女の解釈で転がる  作者: 白澄


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/26

第11話 価値を知る者

―王都オルビス高等技術院・会議室 ―


 円卓を囲むのは、王都でも指折りの顔ぶれだった。

 高等技術院の教員たち。

 神殿の記録官。

 そして、数名の高位貴族。


「さて」


 落ち着いた低い声で、ひとりの男が口を開いた。


「今年の子どもたちは、どうだい」


 神殿の記録官が、待っていましたとばかりに頷く。


「ええ。今年は当たり年ですよ。勇者の適性を示した子もいましたし、稀少なスキルも複数確認されています」


「ほう」


 男は、わずかに口元を緩めた。


「それは楽しみだ。来年のオルビス高等技術院は、賑やかになりそうだね」


「まったくです」


 記録官は誇らしげに続ける。


「今年は特に、“理屈が通る”スキルが多い。正しく育てれば、国の中枢を担う人材になるでしょう」


 円卓の空気が、ほんの少し和らいだ。


 ――そのとき。


「あ、ただ……」

 記録官が、思い出したように言葉を濁す。


「一人だけ、少々変わったスキルがありまして」


「変わった?」


「はい。中心があり、等距離で巡っているモノを扱うことができる。です。」


 その言葉に、

 男の視線だけが、わずかに鋭くなった。


「……それはスキルなのか?」


「ええ。世間的には、いわゆるゴミスキルですね。意味がわからないんじゃ使えないですからね。」


 記録官は軽く肩をすくめる。


 周囲の大人たちが、どっと笑った。


「中心があって、等距離が巡っている物...なんだそれはっ!!あははっ!!」


「あはは、生涯使えないスキルをもらう事があるのか!」

 笑い声が、円卓に広がる。


 ――だが。


 男の思考は、その喧騒の中で、静かに跳ねた。


(中心)


(等距離)


 それは、形ではない。 


 素材でもない。


(“定義”だ)


 世界を、どう切り分けるか。


 何を、同じものとして扱うか。


(もし、それを本人が理解し始めているなら)


(このスキルは――)


 男は、内心で息をのむ。


(危険なほど、伸びる)


「……その子の名前は?」


 記録官は、わずかに驚きながら答えた。

「セントラという子です。貧困地区の、小さな街に住んでいます」


 男は、静かに笑った。

「ありがとう。もう、十分だ」


 円卓の誰も、その言葉の意味を理解していなかった。


 ――行く価値がある。 いや、行かねばならない。


(どうか、このまま気づかずにいてくれ)

 男は、胸中でそう呟いた。














 ――そして。

 男の脳裏に、つい先ほどの光景がよみがえる。


 暴走する馬車。

 悲鳴を上げる群衆。 

 転び、動けなくなった子ども。


 あの瞬間。


 “ありえない動き”で、


 馬車の車輪は転がった。


(中心)


(等距離)


 理屈は、通っていた。


 だからこそ――


「……やはり」


 男は、小さく確信する。


「君だね」


 あの場にいた、

 怯えながらも目を逸らさなかった小さな少女。


 ――価値を知る者が現れたとき、


 才能は、初めて“運命”になる。


 そうして。


 世界は、静かにつながり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ