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8.ドレスを求めて

 波打ち際での水着撮影は、無事に終了した。


 手元に残ったのはドロップした貝と、着用した三種類の水着。これを身に着けて戦うのも一つの仕事なのだけれど、今はまだ、その時ではない。


 宿にしていた一軒家の前に、一台の車が止まった。


「リル! 三日ぶりやなぁ。元気やった?」

「風邪を引きそうな思いもしたけど、良いお土産も手に入れたよ。アサリのスパゲッティをご馳走してあげる」

「リルって料理が作れるん?」


 私の視線は、運転席に座るサナティスに向かった。


「はいはい。作りますよ。それより、ユートは?」

「事務所に戻った。次の仕事は追って連絡するって」

「そう。じゃあ乗って。さっそく向かいたい場所があるの」


 アンミィと共に、後部座席に乗り込む。カーナビ先生の操作は、既に慣れたもののようだ。


「ドレスフラワーって言う、ドレスをドロップするモンスターがいるらしいんよ。花畑でよく見られるらしい」

「らしいばっかりだね」

「常にいるわけではないらしいねん。たまに現れるから、近くにキャンプ場を営む場所もあるとか」


 つまり、目的地は其処と言う訳だ。


「キャンプの準備はしてきたから、あなたがゲットしたという貝も役立つと思うわ」

「シーフードカレーとか、良さそうやん? 豚肉も買ってきたけど、二日に分けてもいい」

「好きなものを好きなだけ食べる。なんか、キャンプっぽいね」


 なんて言ってみたけれど、キャンプの経験と言ったら義務教育中に少し体験したくらいだ。


 あの時はクラスのみんなで支え合いながら乗り越えたけれど、今回は三人だけ。テントを張るのも、料理も、三人だけで行わなくてはならない。


「サナさん、キャンプの経験は」

「一応、これでも狩りの旅には出てたのよ」


 勝ち確定だ!


「だから、それなりにホテルには詳しくなった」


 負けが濃厚かも。


 不安を抱えながら車は進み、目的地のキャンプ場へ辿り着く。真っ先に行ったのは、管理人にドレスフラワーの出現状況を問うこと。


 残念ながら、今日はまだ出現していないらしい。


「女性に贈るために、と言って男性がよく来るのです。花畑はハイキングコースのようになっていて、出会った人に優先権がありますのでご注意を」


 つまり、ここで出現を聞いて向かっても意味はない、と。


「キャンプ場には売店などもございますので、お気軽にご利用ください」


 そんな言葉とともに受付が終わり、私達はキャンプ場の施設を一通り眺めて回った。


 入浴施設はシャワーだけで浴槽はない。トイレは何か所かにあったから、順番待ちに困ることはなさそう。それなりに利用している人は多そうであるが、花畑もなかなか広大なようなので、ドレスフラワーを巡っての争奪戦も、起きる心配は無用かもしれない。


 けれど一発でドロップしてしまえば、それだけ他の人とのかち合う心配から逃れられるため、うまく魅了を使うのが鍵となる。


 サナティスが主導となってテント、タープと立て続けに張っていき、あっさりと私達のキャンプは完成した。手順を学ぼうと必死に見ていたはずだけど、果たして身に付いているかどうか。


「とりあえず、一人が昼食の準備。残り二人が花畑って感じね。誰が……」


 現実から目を背ける私たちを、大人は見逃さなかった。


「何事も練習、というから。挑戦してみましょう。公平にルーレットで決めます」


 そう言ってスマートフォンを取り出し、あるアプリを起動する。表れた画面には、既に三人の名前が記されたルーレットが存在していた。


「最初から、こういうつもりだったんだ」

「こう言うのは、慣れておいたほうがいいの。さぁ、回すわよ」

「あ、待ぃ、心の準備をさせてーな」


 そんな陳情も虚しく、ルーレットとは回り出す。ぐるぐると回り、どんな文字が書かれているかも、もう分からない。それが次第に分かるようになってくると、私達の鼓動は、どんどんと高鳴っていく。


 あ、このままいくと……。


「じゃあ、リル。ご飯の準備を頼むわね」

「うちら、頑張って探してくるからな!」


 花畑の方へ歩いていく二人を見送ると、私は静かに、振り返った。……売店で、なにか便利そうなものは売っていないだろうか。


 すると、売店から出てきた管理人と目が合った。


「……野菜を切って炒めるだけ。レトルト調味料、あるよ」


 おぉ、救世主。

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