6.水着で遊ぼう
シンプルなホルターネックの水着を身に纏って、私は軽く腰に巻いたパレオを持ち上げた。
「いいねぇ、いい表情だよ! 冬の海に佇む美女。侘びしいねぇ」
……うん、寒い。
いや、カメラマンの言葉が寒いのではなくて、シンプルに冬の海で水着になっているんだから、当然寒いに決まってるでしょ。ねぇ、鳥肌たってない? 大丈夫? 私、そういうところちゃんとコントロール出来てる?
「次は波打ち際を走ってみようか!」
ぎゃぁぁぁ!? 海水が冷たい! 足が凍る! 走っていないと、それこそ鳥肌が立ちそうかも!
「おっと! 賑やかな足音に惹かれて、モンスターが飛び出してきたぞ! 波打ち際に刺さった剣を使って倒すんだ!」
とまぁ、こういう撮影が、この世界ではよくあること。
私はカチカチと音を鳴らしそうな歯を必死に堪えるように息を吸って、カメラマンが言った通りに刺さった剣を引き抜いた。
その瞬間もバッチリと撮影されていたけれど、これはどんな構図なのだろうか。海辺に生えた、選ばれし者だけが抜ける剣? それを水着の女性が引き抜きモンスターを倒すサクセスストーリー?
コンセプトが謎だけれど、この手の撮影は漫画のような、そんな娯楽作に仕上がることが多いから特に気にしない。
どちらにせよ、主役は私が着ている水着なのだしね。
剣を構えた所で、初めて対峙したモンスターをじっくりと眺めることができた。第一印象は、気持ち悪い。なんせ、タコの足が生えた二枚貝なのだから。
こう、貝の隙間からタコの足が生えている感じ? 私としては、タコの頭の部分を食べるのが好きなのだけれど、その部分がないのは大きな減点だと思う。
いや、足だって当然好きだよ。唐揚げはもちろんのこと、おでんに入っていたらテンションが上がるし。
でも刺身として食べた時、あの湯がいた頭の足とは違うあの食感が、なんとも私の好みなのだ。
では、貝はどうなのか。
そりゃ、もちろん好きだ。アサリにしろ、シジミにしろ。パスタや汁物にあるのテンションが上がる。それに加えて、牡蠣のようにフライにしたりと様々な楽しみ方があってよろしい。
そう言えば、日本には深川めしというアサリを使った料理があるときく。この世界ではそういう料理、都会に行かないと提供している店がないからなぁ。
「リルちゃーん。よだれが出てるよー。モンスター登場による飛沫を拭う感じで、格好良くやってみよっか」
このような醜態を、撮影ポイントにするカメラマンが逞し過ぎる。
「はい、頂きましたー。あのモンスターからは貝が手にはいるから、頑張って倒しましょー」
「えっ!? じゃ、じゃあ、どうせなら魅了をかけておきたいんだけど!」
「武器は変えられないんだー。指定されているから。剣で魅了できることを祈ってね」
そうやって、欲望剥き出しで戦っても、クールに見えてしまうのが私の自慢です。




