1.自己紹介
この世界では、モンスターを倒せば様々なものが手にはいる。武器や防具と言ったロールプレイングゲームのようなものから、家や乗り物、さらには食料。
挙句の果てには人の住める惑星まで。
そうして人類の生活圏を広げていくことで、神様の役に立とうってのが、この世界の根幹だ。
でも、もしも戦えなくなったら?
モンスターを倒せば様々な物が手にはいるのだから、神様が降臨される前からこの世界を支配していた王国は若干弱体化。今では治安維持くらいしかすることがない。
教育や医療も頑張ってくれているのだけれど、それもこれも、お金が払えなくなったらどうするのか。
お金を得るためには、やはり、モンスターを倒さなければならない。モンスターを倒して得たものを、神により人々に与えられたスマートフォンから繋がるショッピングサイトで売るか、はたまた第三者に売るか。
だから結局のところ、身体が動くうちに老後の資金やその他諸々を稼いでおかなくてはならないわけで……。結局のところ、プラスアルファで手に職をつけるのが強いのだ。
だから、私はモデルをやっている。
いや、老いたらモデルを続けていくのも無理なのかもしれないけれど、それでも、なんだかんだで最大風速は強いのかなって思って。
人々が生誕と同時に与えられる神様からのギフト、それによって、私は『魅了』というスキルを得ることができた。これは、私の行動等によってモンスターを魅了状態にして、行動不能にさせてしまうというものだ。
見た目だけで魅了されてくれるモンスターもいればみ、特定の武器を振るうことで魅了される物もいる。試行錯誤が楽しくて、おまけに効果を発揮すればタコ殴り。
その魅了を発揮しやすくなるように、なのか、容貌には自信があったのだから、モデルをやらない手はないよねってことでね。
十七歳。六歳から十五歳までよ義務教育も終わり、十六歳のモンスター討伐研修期間も終えた。その間に始めたモデル稼業で、ある程度のお金は貯めているし、後はのんびりモンスターを狩ってダメ押し。
さぁ、愉快な仲間たちと共に、モンスターを狩って豊かな生活求める旅に出ようか!
「――っていう感じでさ、自伝を出せば売れるんじゃないかな?」
狭い軽ワゴン車の中で、私は助手席に座る丸い眼鏡をかけた親友に問い掛ける。もちろん、運転しているのは私ではなくて、私は後部座席でのんびりと景色を眺めていた。
「そう上手くいかへんやろー。確かに人気はあるやろうけれど、肝心な戦闘シーンなんかは魅了一辺倒やろ? 変化がなくて飽きると思う」
彼女はアンミィ。レトロゲームの実況プレイを動画配信サイトで投稿してい、なかなか人気があるらしい。
幼い頃からの付き合いで、二人でよく一緒にゲームをしていたけど……、まさかそれを仕事にしようとは思わなかったなぁ。
「そっかぁ。じゃあ、サナさんはどう思う?」
次は、運転をしているサナティスに問い掛ける。
彼女は私の兄の恋人だ。旅に出る私の心配をした兄に頼まれ、こうして車の運転を担当してくれている。
既に実家で同棲して長かったから、私も一緒に生活していたようなもの。既に姉妹のように仲がいいため、弱に兄であるカラトに嫉妬されることもしばしば。
「そうねぇ。著者近影をバッチリ撮れば、結構売れるかもしれないわね」
「いや、それは完全にモデルとしての私じゃん」
モデルを足がかりにして、さまざまな分野に進出する計画は、無残にも崩れ果てるのか。
「そもそも、あまりにも緊張しぃで役者の仕事もご破断になったのだから、おとなしくモデルだけしておいたらええんとちゃう? 作家としてインタビューを受けたら、どないするん?」
「表に出る人を雇う」
「金を稼ぐために金を使うんか」
本末転倒だけれど、それで最大限の効果を得られれば多少の出費も痛くはないと思う。
「せっかくの容姿も、表に出なかったら宝の持ち腐れね」
結局、本末転倒に辿り着くのか。
「あ、サナさん。次の角を右や」
「ありがとう。このオンボロ、ナビがついてないのよねぇ。スマートフォンを置いておけるスペースもないし」
「ぬいぐるみを片付ければ、スペースは確保できるんとちゃう?」
「私の戦利品を退かすなんてとんでもない」
モンスターからの戦利品なら格好がつくけれど、ダッシュボードに置かれた数々のそれは、ゲームセンターでの戦利品だ。
「そんな一杯おいて、よく騎士団に怒られないよね」
「日本ならいざ知らず、この世界ではおおらかなのよ」
その時、道路の整備が行き届いていなかったのか、車が大きく揺れた。
「あー、あー、崩れてもうた。なんか固定するシートとか、買ったほうがええんとちゃう? 接着剤とか」
「接着剤はなし。可哀想。でも、今度サイトで探してみようかしら」
「その前に、私達の目的を忘れないでよ」
そのために、こんな整備も行き届かない道を走っているのだ。
情報収集担当のアンミィが見つけた、モンスターの出現情報。それが、この自然豊かな山林の先にある。
「安心して旅に出るために、拠点となる家を手に入れる、よね」
「手に入れてしまえば家賃もないし、買うより安いからね」
「旅に出続けるよりも、休憩できる場所があったほうがメリハリがつくやろうしね」
目指すは家がドロップするモンスター、ハウススモーキーが出没するという川。
あのモンスターは煙が発生する場所に現れるのだけど、季節柄、川もその条件を満たすのだ。それに、常時発生する場所ではないから人も集まりにくく、自分たちのペースで狩りを楽しむことができる。
「でも、これだけは忘れないようにしてね。怪我なく安全第一に。回復アイテムで怪我は治るけれど、痛いのは変わらないから」
「そういうのは、学校でさんざん勉強しましたよって。ウチら、引き際だけは褒められたんよ」
「私は、魅了の特訓に大半の時間を使ったけどねぇ」
もし義務教育が仕事だったら、相当な残業をしたと思う。けどまぁ、その御蔭で実力もついたのだけど。
「――って、サナさん其処を右やって! うっかりせんといて!」
「えぇっ!? あんな獣道、道じゃないでしょ? 彼処をいけっての?」
「あれ、絶対に舗装されてなかったよ? 彼処を進んだらお尻が死ぬよ?」
悩んだ末、私達は車を降りた。
家よりも、先ずは車だったかなぁ。




