11.ダンジョンに挑戦! その一
手に入れたドレスを試着していた時だった。
「もしもーし」
「やぁ、リル。急に電話を入れてごめんね」
ユートからの電話だった。携帯ゲーム機で遊んでいたアンミィは、空気を読んでその音量を下げ、サナティスは椅子を用意してくれた。
ふんわりとしたスカートが皺にならないように、気を付けながら座る。何かと縁がありそうはホルターネックの首元を触りながら、私はユートに話の続きを促した。
「で、何の用です? 仕事? 私、いま手に入れたドレスを試着してたんですよ。ちょっとゴシック感があって、ジャケットが可愛らしいんです」
「そう。黒髪に似合いそうだね。さっそく本題だけど、うちの社員がダンジョンの第一発見者になった」
おぉ。それはめでたい話。
ダンジョンというのは、たまに発生するダーマ粒子の突然変異によって誕生したスポットを表す言葉として、この世界では定着している。
森が変化して迷路のようになったり、洞窟が変化して迷路のようになったり。
迷路のようになるというのが、大抵のダンジョンに共通していることなのだけど、他にも共通している大事なことがある。それは、強力な武器や防具をドロップするモンスターが現れることだ。
「ダンジョンは最深部にあるダーマ球を破壊すれば収まるのだけど、第一発見者がそれを行う義務がある。だからこそ、強力な武器を独占できるわけだね」
「権利を売ったりも出来るそうだけど、それはしないんだ」
「うん。社長は君の成長に利用するってさ」
嬉しいねぇ。武器は魅力があるからそこまで重要ではないのだけれど、防具に関しては話が別。
防具はスマートフォンからブックマークをすることで、設定されたパラメーターの分だけバリアを張ることができるのだ。そのバリアの数値の分だけ、モンスターから攻撃を受けても無傷でいられる、というわけだね。
私の声で状況を察したのか、アンミィとサナティスもその顔に笑みを浮かべている。サナティスなんて、さっそくテントを片付け始めているくらいだ。
「いま、どこにいる」
「花畑――えっと、季節外れのひまわりが咲いたところのキャンプ場」
「あぁ、あの海辺の街から、三時間くらい車で走ったところか。ダンジョンが見つかったのは王都から車で四時間くらい離れた街の近くだから……、そこから結構かかるね」
アンミィを手招きして、ユートから教わった場所を地図上に表してもらう。
私たちが暮らす大陸の中央に王都があるから、王都へ行くだけなら、どの地点からもかかる時間は大差ない。けれど、すべての道は王都へ向け作られている事を考えると……。
「あかん。この場所から目的地までは真っすぐ行かれへん。どうしても、王都の近くまで戻って迂回するしか」
なかなか、移動に骨が折れそうだ。
「この近くにも街があるから、飛行機に乗れれば楽なんだけど」
「うーん、ガソリン代と比較をすれば、車で行ったほうが良い。でも、……ここから王都の近くまではどのくらい?」
「七時間」
アンミィの言葉に、サナティスの動きがピタリと止まる。流石に、合計十一時間の長距離ドライブは堪えるらしい。
そりゃ、私が運転できてもその距離は辛いよ。
「はぁ。飛行機に乗ります」
「心配しなくても、ダンジョンの攻略なんだから費用はこちら持ち。チケットは取って君のスマートフォンに贈っておくよ」
「飛行機代ゴチ、感謝です」
テントを片付けるペースが加速した。
「あ、因みにビジネスクラスとか……」
「いや、エコノミー」
「ですよねー」
声で察したのか、テントを片付けるペースが落ちた。
「長丁場になるかもしれないから、食料はしっかり確保しておくこと。トイレとシャワーは事務所から貸し出すから気にしないでいいよ」
「そこまでしてくれるなら、食料も用意してくれたらいいのに」
「カップ麺で生活したい?」
「ごめんなさい」
料理ができるって、素敵。
「じゃあ、現地で落ち合おう」
「了解」
電話を切って、改めて二人の方を向く。
「ダンジョンに、挑戦することになりました!」
「忙しくって、家を置く間もあらへんのな」
あ、忘れてた。




